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縄文からIoT時代へ、トイレ1万年の進化

2017年7月12日

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 世界の最先端ともいわれる日本のトイレが、IoT(様々な物がインターネットに接続されて情報を交換しあう仕組み)と結びつくことで、さらなる進化を遂げようとしています。

 トイレの起源は縄文時代にまでさかのぼり、1万年以上にも及ぶその歴史の中で、人類の生活にさまざまな恩恵をもたらしてきました。そして、いまトイレとIoTが出会い、節水性能の向上、不動産の資産価値など、個人だけでなく企業にも大きな恵みを与えようとしています。

 日本におけるトイレ1万年の歴史を紐解くとともに、その最新事情に迫ってみましょう。

縄文時代に登場した自然派トイレとは

 私たちの生活に欠かせないトイレは、縄文時代に生まれました。

 日本では、縄文時代前期の福井県の鳥浜貝塚から、古代のトイレ跡とみられる遺物が発見されています。川岸に杭を打って板を渡し、桟橋のようなトイレだったと考えられています。

 古代のトイレは、自然の浄化作用に任せるスタイルだったようです。それが、古墳時代頃になると、敵から身を守るために集落の周りに作られた堀をトイレとして使うようになったとみられています。

 平安時代になると、こうした「野外式」とはまた違うタイプのトイレが登場します。当時の貴族たちが愛用した「樋箱(ひばこ)」です。いわゆる「おまる式」で、木でできた箱の底に砂が敷かれており、砂ごと捨てていました。

 一方、同じ平安時代、弘法大師空海が開山した高野山の寺院や民家では、谷川の水を竹筒などで台所や風呂場に配水し、その余り水を使い、トイレの下に流していました。いわば原始的な水洗トイレともいえる、この「高野式」は、少数ながら戦後の日本にも残存していました。

農業の生産性を高めたトイレの循環システム

 その後、トイレは農業の発展において重要な役割を担うようになります。

 鎌倉時代になると、汲み取り式のトイレが登場します。その背景には、鎌倉幕府が米と麦の二毛作を奨励したことがあります。二毛作をするためには、土地が痩せないようにするための工夫がかかせません。そのため、汲み取り式トイレを整備して、そこで蓄えたものを土地に栄養分を与える貴重な肥料として利用するようになったわけです。

 鎌倉時代から戦国時代にかけては、それまでは家の外や軒下にあったトイレを、家の中に設ける家庭が増えてきました。「厠(かわや)」と呼ばれるこの屋内式のトイレが誕生した背景には、特に武家の場合、住居の外にトイレがあったのでは、敵にいつ襲われるかわからないという、保安上の理由が影響したと考えられています。

 江戸時代になると、汲み取り式のトイレはさらに普及。江戸の町では、近郷の農家による野菜と肥料の物々交換がはじまります。やがて、江戸の肥料は有料で取引されるようになり、河川を利用して関東各地へ運びだされました。こうして、これまで捨てる一方だったものが、立派な“商品”として流通し、農業の生産性を高める循環システムが確立したのです。

明治時代以後に迎えたトイレの夜明け

 やがて明治時代になると、欧米文化の浸透により、建築にも洋風の様式が取り入れられるようになりました。そうした建物の中には、腰を掛けるタイプの「洋式トイレ」が設置されたものが現れました。明治の教育者で、同志社大学を設立した新島襄の邸宅にも洋式トイレがあったといわれています。

 しかし、当時日本のトイレは、ほとんど和式トイレでした。国産の洋式トイレは、1914(大正3)年に開発されましたが、帝国議会議事堂や高級ホテル、富裕層の洋館などに設置された程度で、一般家庭や企業、学校などには普及しませんでした。

 また、明治期までのトイレのほとんどは汲み取り式でした。明治中期には「水洗式」の便器が輸入されましたが、普及しませんでした。水洗トイレが普及するには下水道や下水槽の整備が必要ですが、その整備が本格的にスタートするのは関東大震災後のことで、それまではごく一部にしかなかったためです。

 その後、昭和になって下水道や浄化槽の整備が急速に進み、昭和30年代になって水洗トイレが普及し始めます。また、洋式の水洗トイレも、昭和34年に日本住宅公団が採用してから、徐々に一般家庭へ普及していきました。

1万年を超えて独自進化する日本のトイレ

 こうして日本のトイレは、1万年を超える歴史の中で進化を重ねてきましたが、その進化の歩みは、近年ますます速くなっています。

 トイレの進化を代表するものとして、今では一般世帯での普及率が80%を超えている「温水洗浄便座」があげられます。これは、もともとアメリカで医療用として開発されました。それを日本の企業が輸入・販売し、さらに日本独自の開発を行った結果、現在のような製品になりました。海外では、今でもあまり見られない先進的なトイレです。

 また、「自動脱臭機能」や、「抗菌機能」「人を感知すると自動でフタが開く機能」「トイレの自動洗浄機能」など、衛生的な機能も次々と開発されています。

 ここまでのトイレの進化は個人の快適さを求めたものが中心でした。しかし、最近では、IoTを活用したトイレも登場。個人だけでなく企業にも貢献する存在として期待を集めています。

 例えば、すでに実用化されているものとして、トイレの個室の空き状況がスマートフォンなどでリアルタイムに把握できるシステムがあります。会社のオフィスや公共トイレに便利なシステムで、一部の駅で採用されました。

 さらに、IoTを使ってトイレの節水を行うサービスも登場しています。削減効果分をデータとして取得することで、建物と敷地利用の環境評価ツール「LEED」や、不動産会社・運用機関のサステナビリティ配慮を測るベンチマーク「GRESB」の評価を受ける際に、そのデータを役立てることもできます。

 このように、縄文時代には自然に処理を任せていたトイレはいま、IoTにその管理を委ねることで、省エネやコスト削減など、日本の企業が抱える課題を解決するツールとして進化しようとしています。

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