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エネルギーを自給自足する次世代のビル「ZEB」の魅力

2017年9月13日

 エネルギーを自給自足し、CO2の削減に貢献する建築物「ZEB」に、いま大きな注目が集まっています。

 ZEBとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」のことで、石炭・石油・天然ガス・水力・原子力など一次エネルギーの消費量を、限りなくゼロに近づけた建築物です。単に光熱費を削減するだけでなく、不動産価値や事業継続性、生産性の向上にもつながると期待されています。

 今回はZEBの最新動向と、そのメリットを解説します。

1つの建物の中でエネルギーを自給自足する

 ZEBが一次エネルギーの消費量をゼロに近づけるといっても、エネルギーを全く使わないというわけではありません。ZEBはビルの省エネ化に加えて、再生可能エネルギーを活用することで、節約したエネルギーと消費した分のエネルギーを相殺し、一次エネルギーの消費量をゼロにするというものです。「ネット・ゼロ(Net-Zero)」とは、日本語では「正味ゼロ」という意味となります。

 ZEBが一次エネルギーの消費量を“正味ゼロ”にするポイントは3つあります。

 1つめのポイントは「ビルに対する負荷を抑制し、日光や風といった自然の力を利用する」ことです。高断熱、日射遮蔽、自然換気といった空調システム、昼光を活用した照明システムなどを利用することによって、建築物自体で自然エネルギーの活用や負荷を抑制します。

 2つめは、「エネルギーを上手に使う」ことです。照明・換気・空調・給湯などの設備システムを高効率化して、室内環境の質を維持しながら、大幅な省エネルギー化を目指します。

 3つめは「エネルギーを創る」ことです。敷地内に太陽光などの再生可能エネルギーによる発電設備を導入して、電気を創り出し、自家利用します。

 ZEBでは、こうしたポイントを組み合わせることで、1つの建物の中でエネルギーを自給自足し、一次エネルギー消費量をゼロに近づける仕組みとなっているのです。

2030年までにZEBが新築建築物のスタンダードに!?

 ZEBが求められるようになった背景には、環境問題に対する社会的な意識の高まりがあります。

 住宅やオフィスビルなどの建築物で消費されるエネルギーの量は、世界で消費される全エネルギーのうち約1/5を占めるといわれています。そのため、日本でも、建築物の省エネ対策を強化することが、地球温暖化の防止に必要だと考えられるようになったのです。

 政府は、「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)で、「建築物については、2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指す」という政策目標を設定しています。 その実現に向けて、経済産業省は、ZEBの定義・評価方法や普及方策を整理した「ZEBロードマップとりまとめ」を2015年12月に公表しました。

 さらに、2017年4月には「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が全面施行されました。これによって2,000平方メートル以上の非住宅建築物の建築主は、省エネ基準の適合義務が求められるというものです。今もさまざまな形で、ZEBの普及に向けた整備は進んでいるのです。

光熱費削減!不動産価値向上!まだあるZEBのメリット

 CO2の削減を目的に世界に広がるZEB ですが、建物のオーナーや利用者にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。

 直接的なメリットとしては、光熱費の削減が挙げられます。ある試算結果では、延床面積10,000平方メートル程度の事務所ビルで50%の省エネルギーを実現した場合には、年間で40~50%の光熱費の削減が可能となっています。

 加えて、環境に配慮した建築物を求めるテナントや投資家が増えていることから、不動産価値の向上も期待できます。東京23区内に立地する事務所ビルにおいて、環境に配慮したビルは、「新規成約賃料」にプラスの影響を与えるという調査結果も発表されています。

 災害時にも頼りになります。東日本大震災のような大地震が発生した際には、停電をはじめとするエネルギーインフラ関連のトラブルにより、事業継続が困難になるケースが多発します。ですが、ZEBは少ないエネルギーで運用できるため、建築物の機能が維持しやすくなります。つまり、事業継続性が向上します。

 さらに、生産性の向上にも貢献します。ZEBは自然エネルギーを利用して、心地よい室内環境をすることで、自然エネルギーを活用した事務所に移転した場合に、「移転後の室内環境のほうが作業のしやすさを高めてくれる」と感じる人が増加したという調査結果もあります。

初めからZEBが無理でも、徐々に近づけていく方法がある

 このように多くのメリットを持つZEBですが、はじめから一次エネルギー消費量をゼロにする必要はありません。実はZEBには3つの定義があり、取り組む側の事情に合わせて、徐々に取り組みを進めることが可能です。

 最も取り組みやすいのが、ZEBを見据えた先進建築物である「ZEB Ready」です。これは「正味50%以上の省エネルギー」を実現した建物のことです。その次の段階として、「正味で75%以上の省エネルギー」を目指す「Nearly ZEB」があります。これらの段階を踏まえたうえで、最終的に「正味で100%以上の省エネルギー」を実現したZEBを目指します。

 ただし、ZEB Ready、Nearly ZEB、ZEBを実現するためには、ビルの計画段階から実際の建築に至るまで、さまざまな基準をクリアする必要があります。また、ZEBに取り組むためには、省エネ設備や太陽光発電などの導入にコストもかかるため、その問題もクリアしなければいけません。

 近年では、相談窓口を有し、設計、設計施工、コンサルティングなどの業務支援を行うZEBプランナーや、国の助成制度といった、ZEBへの取り組みをサポートする環境が整備されつつあります。そうした支援を活用しながら、2030年に向けてビルのエネルギー消費を見直し、その自給自足にいち早く踏み出してみてはいかがでしょうか。

 次回のビジネスコラムでは、ZEBに取り組むためのステップを紹介します。

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