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森田正光氏に聞く(1)「異常気象がもたらすリスク」

2019年1月9日

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 20万mmもの想像を絶する雨が降り注いだ「平成30年7月豪雨」、41.1度という日本の歴代最高の気温を記録した2018年の猛暑。異常気象が日常となりつつある今、個人あるいは企業はどのように備えればいいのでしょうか。お天気キャスターのパイオニア・森田正光氏に、異常気象時代を生き抜くための処方箋を3回にわたって聞きます。第1回では、異常気象の現状について語ってもらいます。

【プロフィール】
森田 正光(もりた まさみつ)
気象予報士。株式会社ウェザーマップ会長。財団法人日本生態系協会理事。1950年愛知県生まれ。当時気象庁の外郭団体だった日本気象協会を経て、41歳(1992年)の時に独立。同年9月、株式会社ウェザーマップを設立し、フリーランスのお天気キャスターとして活動を始める。分かりやすいお天気解説と、親しみやすいキャラクターで、テレビやラジオの天気予報には欠かせない人気者となる。2002年には、気象予報士の養成講座を運営する株式会社クリアを設立。後進の育成にも力を注ぐ。

「たかだか1度」の上昇で起こる深刻な事態

――昨年(2018年)は、豪雨や猛暑、大型台風の上陸など異常気象が目立ちました。まずは、異常気象の定義から教えてもらえますか

 気象庁では、30年に1回ぐらいの頻度でしか発生しない天気を「異常気象」と定めています。その件数は、ここ10年で1.5倍〜2倍くらいの割合で確実に増えています。つまり、これまで異常と呼ばれていた天気が異常でなくなりつつあるのです。

 その1つの原因が地球温暖化です。

 地球の平均気温に関するデータは、1880年のものから残っているのですが、現在は、当時と比べて1度くらい上昇しています。今後もこの傾向は続くでしょう。

 2018年10月、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化の影響について特別報告書を公表しました。それによると、早ければ2030年にも、産業革命前と比べて平均気温が1.5度上昇し、サンゴ礁の大部分が死滅するなど、地球環境の悪化が進むと警告しています。

――「たかだか1度くらい」と考えてしまいそうですが

 長期にわたる地球規模の変化が、実感しにくいのはよく分かります。ちょっとの暑さだけなら我慢すればいい。そんな意見もあるでしょう。しかし、たかだか1度上昇しただけでも、地球環境に与える影響は想像以上に深刻です。

 日本人にとって見逃せないのが、温暖化に伴う雨量の増大です。気温が1度上昇すれば、大気中の水蒸気は7%も増えると言われています。多量の水蒸気によって雲ができやすくなり、それが大雨の原因となるのです。これはデータにも、如実に表れています。

1976年から2015年までの40年間で、1時間の降水量が80mm以上という大雨が降った回数を10年ごとに比較してみましょう。1時間に80mmの雨というのは、気象庁の定義で、人が息苦しくなるような圧迫感がある、恐怖を感じる「猛烈な雨」です。そんな猛烈な雨の回数が、年平均で10.7回(76〜85年)、12.4回(86〜95年)、16.9回(96〜2005年)、18.0回(06〜15年)と、着実に増えています。


出典:気象庁ホームページ

観測史上初!20万mmもの雨が降り注いだ「7月豪雨」

――2018年7月、西日本一帯に大きな被害をもたらした「平成30年7月豪雨(以下、7月豪雨)」も、その大きな流れの中で発生したわけですね

 7月豪雨は、来るべくして来た大雨と言えるかもしれません。多くの地域で河川の氾濫や浸水被害、土砂災害が起こり、大変な自然災害になったのは、ご存知の通りです。その大きな特徴は、“点”ではなく、“面”で大量の雨が降ったということにあります。

 これまでの豪雨、例えば、広島市の住宅街で大規模な土砂災害を起こした「平成26年8月豪雨」にしろ、鬼怒川の氾濫で多くの人々が屋根に登って、助けを求めた姿が強烈な印象を残した「平成27年9月関東・東北豪雨」にしろ、大量の雨は限られた地域周辺だけにしか降りませんでした。

 ところが、7月豪雨では、岐阜県から九州までの非常に広大な“面”で、豪雨が観測されました。集中豪雨が至る所で同時に発生するという、今まで経験したことのない雨になったわけです。

――全体でどれくらいの雨が降ったのでしょうか

 7月豪雨の総量は約20万8035mmです。降水量の総量が20万mmを超えたのは、観測史上初の出来事です。まさに想像を絶する雨量でした。

 降水量の総和でいうと、これまでにも過去5万mmや7万mmの豪雨というのは、多々あります。しかし、10万mm以上の豪雨は数えるほどしかありません。それが「平成26年8月豪雨」(約17万4000mm)、「平成27年9月関東・東北豪雨」(約13万3000mm)と立て続けに起こり、昨年の7月豪雨で20万ミリにまで達しました。ここに来て、拍車がかかっているようで、とても心配です。

――世界的にみても豪雨の被害は増えているのでしょうか

 日本では雨の被害ばかりがクローズアップされていますが、地球規模で見れば、干ばつに悩まされている地域もたくさんあります。世界では、大雨と干ばつという気象の二極化が顕著に表れているのです。

 中期的に見ると、実は干ばつの方が恐ろしいのかもしれません。干ばつは、水や食糧の不足を招いて、人々の命や健康を脅かす、気象災害の最たるものです。日本は、直接干ばつに襲われなくても、多くの食糧を輸入に頼っているため、厳しい事態に陥ることも考えられます。

 世界を崩壊へ導くかもしれない異常気象を、どう食い止めていくか。個人だけでなく、企業にとっても、世界の人々と一緒に考え、行動していかなければならない、大きなテーマだと思います。


【第2回】では、私たちの社会活動が気象に及ぼす影響についてお話をうかがいます。

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