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CSR報告書 2018

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法政大学大学院 人間社会研究科
教授

土肥 将敦

一橋大学経済学部、一橋大学大学院商学研究科博士後期課程を経て、2009年に高崎経済大学地域政策学部准教授。2014年より法政大学に移り、2016年より現職。商学博士。著書に「CSR経営-企業の社会的責任とステイクホルダー」共著、中央経済社)、「ソーシャル・イノベーションの創出と普及」(共著、NTT出版)などがある。

着実な成果と進展

NTTファシリティーズグループでは、「パリ協定」の発効、SDGsの採択という国際的な環境・社会面に関する状況が刻々と変化する中で、2030年度に向けた新たな長期環境目標を設定するなど、自社のめざす方向性を明示している。とくに今年度の報告書では、ハイライト版の焦点が従来より絞られ、一般読者層や従業員へとCSRテーマの周知徹底を図る意思を一層強く感じるようになったことを、着実な成果として評価したい。報告内容に目を向けるとP9-14では全てのCSRテーマにおいて各部門の担当者がSDGsへの貢献を意思表明しており、また、巻頭財務・非財務ハイライトからは昨今求められているセキュリティ人材の育成にも着実な成果が見られるなど、社内のCSR経営に対する機運の高まりを見て取ることができる。社会的インパクトの追求とともに今後も着実なCSR経営の進化を期待したい。
この機運を確実に加速するため、次年度以降に向けての課題は、今や明白である。大きく3点を提案したい。

CSRマイルストーンを定め、ステークホルダーと協働し、
NTTグループのシナジーを活かす仕組みの推進を

第1に、過年度に指摘した内容と重なるが、新たな長期環境目標が定められた今、環境面以外も含むCSR中期目標(マイルストーン)の必要性が高まっている。同社のCSRテーマは環境面以外も含む4つの要素で構成されており、各々につき進捗の目安となるKPI(Key Performance Indicator)を設定し社内外に共有していく仕組みをつくることで、従業員のモチベーションが上がり、社内のCSR文化が一層醸成されると考える。例えば、SDGsの17目標やそれに紐づく169のターゲットには、同社事業へのヒントが数多く含まれている。これらに基づき、年休平均取得日数や女性比率(SDG 5)、セキュリティ人材数(SDG 11)や地域創生事業での参画プロジェクト数(SDG 9)などの社会面KPIを設定し、「数字でCSR全体を語る」ことこそ、同社の次なる課題でありチャンスではないだろうか。
第2に、本報告書を活用したステークホルダー・エンゲージメントの拡充に期待したい。今年度の報告書の成果を活かす取り組みとして、特に従業員や取引先を巻き込んだエンゲージメントが有効である。エンゲージメントにおいては、本来的には、事業活動からネガティブな影響を受けている従業員、サプライチェーン労働者、地域社会などのステークホルダーとの建設的な対話が重視されているが、まずは本報告書を活用して従業員、取引先等のステークホルダーとの対話から着手してほしい。
第3に、CSR経営に係る国内外のNPO/NGOとのさらなる連携強化も求められる。NTTグループは、今年度、エネルギー効率や再生可能エネルギーに関する国際イニシアティブであるEP100(企業におけるエネルギー利用効率を引き上げることをめざす企業連合)やEV100(事業用車両のEV化をめざす企業連合)への参加を表明している。これを契機に同社もさらなる成長機会が国内外に期待されるが、事業拡大に際しては労働・人権等の社会面でも社外組織との連携強化に留意し、調和ある成長を推進してほしい。
最後に、同社では、P16にあるようにNTTグループの一員として、CSR憲章の共有やCSRマネジメントの連携強化、優良施策のグループ共有等を実践している。そこでどのような議論が行われ、またファシリティに関わる新しい価値提案がどうなされたのかが重要である。NTTグループ全体のシナジーを活用した同社のさらなる取り組みに、引き続き期待したい。

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