あなたの街のECOパートナー

NTTファシリティーズ

バックナンバーはこちら
えふ・マガインタビュー
  辻信一氏(文化人類学者・環境運動家・明治学院大学国際学部教授)スロービジネス実践法



1 2
写真 「企業のパワフルな力こそが現在の地球の問題を解決できるんです」

スロービジネスという視点から、若者の起業も積極的にサポートされているそうですね。

 大学の僕のゼミでは、「わが起業論」というレポートをみんなに書かせます。ビジネスを起こすということがどういうことなのか、考えたことのない人が企業に勤めるのと、一度そうしたフィルターを通してから勤めるのとでは全然違うからです。企業に勤める若い人には、今の企業のあり方に絶望せずにいて欲しいですね。今のような状況がずっと続くはずがありません。どの企業も近い将来、必ず新しいシステム、ルールをつくる必要に迫られます。若い人たちには、その際に中心的な役割を担って欲しいと思います。

 また、何か面白いビジネスのアイデアが浮かんだなら起業も勧めています。実際に、僕もサポートしてこれまでに5つぐらいの起業をしました。たとえば、「カフェスロー」はスローフードや自然にこだわったカフェで、ライブなども行われます。いわゆるオルタナ系の人たちが集まる場所として話題を集め、刺激を受けて同じようなカフェが全国にたくさん誕生しました。その他、フェアトレードの会社などもあり、まだ規模は小さいながら充実したビジネスを展開しています。苦労はあっても、世の中に良いことをしているので、みんな楽しそうに仕事をしていますよ。

 僕は環境運動をする時には、ビジネスを同時に考えるんです。ビジネスをやる時にも同時に運動を考える。両者の連動が理想です。環境運動というと特殊なイメージがありますが、そうではありません。環境を良くしたいというのは誰もが持つ願いですから、ある意味ではすべての人が環境運動家ともいえます。ただし、運動だけでは長続きしないのは事実。そこで、運動を持続可能なものにするためにも、ビジネスを起こすことが大切です。世の中の役に立つビジネスを展開し、それが運動も盛んにする。その好循環が必要なんです。

 もちろん企業ですから、儲けることは重要です。ただし、今の経済は限度がありません。欲求し続けて、消費し続けて、何のために儲けるのかわからなくなっています。儲けるにしても、社員がある程度の生活の質を確保するためだとか、新しい雇用を生み出して社会の役に立つためだとか、そういった目的を明確にしないと、競争原理からは脱却できないと思います。

 
世界的に見てこれからのビジネスはどんな方向へ向かっていくのでしょうか?

 世界のビジネスは今大きく変わりつつあります。日本では表層しか報道されないのでわかりにくいのですが、アメリカでも見えないところで大きな地殻変動が起きつつあります。いわゆるCultural Creatives(文化創造者)と呼ばれる人たちが、世の中の役に立つ「実業」を盛んに行うようになっています。そうした人々が表に登場するのももうすぐでしょう。そうやって世界のビジネスが大きく変わる時に、心配なのは日本です。新自由主義的なアメリカだけを見て、その背中に必死でくっついているようにも見えます。古い物語しか見ないで、相変わらず早い者勝ちの競争原理だけに基づいたビジネスを展開していくなら、その企業に未来はありません。逆に言えば、転換が可能な企業にとってチャンスは無限に広がっています。

 世界では様々な試みが始まっています。従来はGNP(国民総生産)やGDP(国内総生産)が豊かさを計る経済指標でした。しかしGNPでは、環境破壊や戦争が起きた結果として消費や雇用が増えた場合にも数値が上昇します。つまり幸せだけでなく不幸も含まれてしまう。そんないい加減な指標で、これまでぼくたちは社会の豊かさや個々人の幸せが計れると思い込んできた。それに対して、GNPのP(Product)をH(Happiness)と入れ替えた「GNH(Gross National Happiness=国民総幸福量)」が注目されるようになってきました。

 これはブータンの国王が即位に際して「わが国にとってGNPより大事なのはGNH」と宣言したのが始まりです。その他にも、本当の豊かさを計る新たな指標をつくろうという動きがたくさん起きています。本当の幸せとは何なのかが、今こそ問われているんだと思います。

 そうやって人々にとって本当の幸せとは何なのかを真剣に考えて、真の幸せや豊かさを促進させる。それがビジネスの本来の使命です。有名な起業家のポール・ホーケンは、「地球をここまで追い詰めた最大の責任は企業にある。だからこそ企業が大転換したら地球には希望がある」と語っています。企業は実にパワフルな組織であり、環境問題をはじめ現在の多くの問題解決のカギを握っています。だから、僕は企業やビジネスパーソンには大いに期待しているんです。

  Present
 「ハチドリのひとしずく いま、私にできること」(光文社) と「『ゆっくり』でいいんだよ」(筑摩書房) サイン入りで各6名様計12名様にプレゼント!
※このプレゼントは終了致しました。ご応募ありがとうございました。


プロフィール
写真 文化人類学者、環境運動家。明治学院大学国際学部教授。 1952年東京生まれ。文化人類学者としての調査・研究と平行して環境運動に取り組む。1999年、環境=文化運動のNGO「ナマケモノ倶楽部」を設立し、その世話人を務める。また、2003年にスタートした「100万人のキャンドルナイト」の呼びかけ人代表も務めるなど、「スロー」というコンセプトを軸に多彩な運動を進めている。ナマケモノ倶楽部を母体として生まれた「スロー」、「カフェスロー」、「スローウォーターカフェ」、「ゆっくり堂」などのビジネスにも取り組む。主な著書に、『「ゆっくり」でいいんだよ』(筑摩書房)、『ハチドリのひとしずく‐いま、私にできること』(光文社)、『スロー快楽主義宣言!』(集英社)、『スロービジネス』(ゆっくり堂)、『スローライフ100のキーワード』(弘文堂)、『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)などがある。

前ページへ 1 2

トップページへ

ページトップへ