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島村 洋子
(しまむら ようこ) 作家。 
1964年大阪生まれ。 帝塚山学院短期大学卒業。証券会社勤務を経て、
1985年「独楽」で第6回コバルト・ノベル大賞受賞で作家デビュー。
著書に『紫式部・源氏物語』(双葉社)、『てなもんやシェイクスピア』(東京書籍)、『王子様、いただきっ!』(角川文庫)、『せずには帰れない』『家ではしたくない』(双葉文庫)ほか。

 一言で「もてる・もてない」とは言うけれど、いったいこれはどういうものなのだろう。
 美男だから美女にちやほやされたり、美女だから失恋しないというような単純なものではないらしい、ということは誰でも気づいているが、それはいったいどういうメカニズムになっているのだろうか?
 男性誌には「これで彼女もイチコロ」などという記事や広告がいっぱいだし、女性誌には「彼に愛されるAからZまで」なんていう特集が毎号、手を替え品を替え載っている。
 心理学の本にはいろいろな実験例も出ているし、不確かなところでは占いもある。あるいは「恋」や「一目惚れ」というのは脳内に快楽物質が出ているのだという報告もある。
 結局、虫や動物などが異性を誘い出すときに出すといわれる「フェロモン」のせいではないか、と結論づけて安心しようとするが、さてそれはいったいどうやって出せばいいのだろう。
 そのことさえわかればどれだけ人生が明るくなることか、とは誰しもが思うことだ。
 昔から「男好きする女」というのはいて、「女が放ってはおかない男」というのも存在するのだが、その魅力は説明できるものではないことが多いので、みんな悩む。
 私も悩んだあげくに考えついたのだが、それは「スクリーン」だと思う。
 異性がいろんなものを投影できる大きなスクリーンを持っている人がもてるのではないか、と最近、私は考えているのだ。

 例えば、おとなしい女性が好きな男性X氏がここにいるとする。
 A子さんはいかにもおとなしく奥ゆかしそうな感じのする女性なので、X氏は彼女に夢中である。
 反対に勝ち気な女性が好きな男性Y氏がここにいるとする。
 A子さんは一見、おとなしそうで奥ゆかしそうだが、会社でトラブルが起こったときにひとりでそれに対処し立ち向かい、上司にも思ったことを言っていたのをY氏は目撃した。もちろん彼はA子さんの虜である。
 さてさてA子さんの魅力はそれだけではとどまらず、いつもは清楚な感じだったのに、夜、飲みに行くときはとってもセクシーなメイクで現れたりする。
 そうなのだ。このA子さんはいろいろな男性が「こうあって欲しい像」をさまざまに見せることができるのだ。見せることができるだけで実際のところ、どうなのかはわからない。
 しかしこの投影される像が多ければ多いほど、彼女は「もてる女性」として存在できる。
 意外な像が浮かぶといっそう有効である。
 いつも明るく見えるのに、なんとなく寂しげだというのもいいだろう。普段はなりふりかまわない人なのに、実は由緒正しいお嬢様だった、というのも面白い。
 男性の場合も、一面的に真面目な人ではなく、さまざまな引き出しを持っている人がきっと「もてる男性」とされる人なのだろうと私は思う。
 とはいえ、みんながみんな簡単に多様な面を見せられる人になれるわけではない。
 さて、そうなるにはいったいどうすればいいのだろう?
 これはもう「努力」しかない。
 仕事にも頑張っているが、趣味も広くあろうとすれば、金もかかるし、時間も手間もかかるのは当たり前のことだ。
 付け焼き刃では異性の心はキャッチできないので、何事にも真剣に取り組むことが大切なのは言うまでもない。しかしその前にもっと大切なことがある。
 それは自分で自分を「僕は真面目な人間だ」「私は気が弱い」というように決めつけないことだと私は思う。
 決めつけてしまうと人間はそれ以上の魅力を発揮できないものなのだから。