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 取材当日、私たちを出迎えてくれた飯盛正徳氏は霊域聖地に住まわれているからか、どこか浮世離れした仙人のような風貌の方だった。そして何よりもさざえ堂に関する膨大な知識を持つ方であった。さすが、200年間さざえ堂を保存されてこられた飯盛家の方である。
 ここで飯盛家とさざえ堂の関係を改めて記しておこう。このさざえ堂はかつて正宗寺という寺の付属施設であった。そしてその正宗寺自体が江戸時代までは「弁天様」と呼ばれる神社と合祀されていたのだ。神仏混合ですな。その後、明治時代の神仏分離令を期に「弁天様」は厳島神社と改称。正宗寺は廃寺となってしまい、飯盛家が引き取り、現在は飯盛家の個人所有となっているのだ。
 その飯盛氏に御一緒していただき、さざえ堂を巡った。
 山主であると同時にさざえ堂フリークでもある飯盛氏とのさざえ堂巡りは何度もここを訪れている私にとっても新しい発見の連続だった。特に通常見落しがちな細部に職方の苦労が凝縮されていることに改めて気付かされた。決して精緻なつくりでなく、どちらかといえばその場で考えたような納まり方だが、だからこそ魅力的なのだ。
 このさざえ堂は現在、国の重要文化財である。この建築の特異さを考えればもっと早く指定されても良さそうなものだが、指定されたのはつい最近、平成7年のことである。
 年間、さざえ堂を訪れる人は約10万人。最近は徐々に減ってきているようだ。しかし過去に何度か補修したとは言え200年前の建物である。老朽化は否めない。多くの人に観てもらいたい思いと人が来れば来るほど建物は傷む、その相反する現象にこれから飯盛氏はどう対処していくのであろうか。
 建物の入り口に「定員40人」と書いてあったのが印象的であった。
 私のアイドル、さざえ堂をこれからもよろしくお願いします。