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朝比奈川の美しい清流、
照り返した夕陽に祖父の頭が今日も眩しく輝いている。
「美しい笑いはなあ、家の中の太陽なんじゃよ・・・・」
「そんなら爺ちゃんのハゲ頭と、おんなじだね」
「アハハハハ・・・・・」
静岡県の山間の鄙(ひな)びた村、哲人のような祖父の後を
幼年期の僕は、どこへでもついて歩いた。
洒脱な精神と屈託のない祖父母の笑顔、
心に残る僕の原風景である。
ひと月前から彫りはじめた「ようこそ、ようこそ」
という作品が、今日ようやく完成する。
いま陣痛が始まって、樹の年輪に
人生の滋味を刻んでいるところ、
木肌に体温を与えると、産声をあげる。
老爺が巨きな口を開けて笑えるのは、
やさしくほほ笑んでいる老婆の支えがあるからだし、
爺さまの豪快な笑いに守られて、婆さまも又、
こんなに安らかでいられる。
いい顔を彫るためには、
作者がいい顔をしていないと出来ない。
遠い日の祖父母のように、
美しく齢を重ねてゆきたいものだ。
泉下に眠る爺ちゃんよ、小学生は彫刻家に育って、
貴男の笑顔を刻んでいる。
仕事場は密室で誰も訪れない。
仕上げ前の緊張した工房の空気に、
研ぎすまされた鑿(のみ)が走る。
一刀入魂、心をこめて「コツん・・」。
「あッ!爺ちゃんが産れた・・・」
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