NTTファシリティーズのホームページ


●龍村仁さんをインタビュー取材させていただいたのが昨年の9月4日。ちょうど「地球交響曲(ガイアシンフォニー)第四番」が完成したばかりで、龍村さん自身、各地の試写会場を挨拶で飛び回っている時期だった。その合い間にこなしていた多くの取材のすき間にすべり込ませてもらった。
 前の対談が延び、更に次の取材が待ち受けるという短い時間の中で当初予定していた「順を追って話を聞く」という最も正当な方法をあきらめ、普通は触れることのないNHK退社当時の話や「第三番」から「第四番」に至るいきさつなどに話をしぼって聞かせていただいた。インタビューそのものは非常に偏ったものとなったが心配はしていなかった。28年前、龍村さんの演出した初の劇場公開作品「キャロル」を観て以来、龍村さんの著書や「地球交響曲」を観ており、以前に別のインタビューでお会いしたり、幾度か試写会&トークの会場でお話を聴かせていただいたこともあって、その中に内容にすべきものは数多くある、と考えていた。それが浅はかな思いであることに気付いたのは、インタビュー後、前々から予定していた旅に出てからである。旅の途上読むつもりで持ち出したのは「第三番」でとり上げられた写真家 故星野道夫氏の「イニュニック」(新潮社)、「ノーザンライツ」(新潮社)。
 読み始めて最初の数ページで重い衝撃がやってくる。人を驚かす言葉や仕掛けがある訳ではない。深くアラスカを愛した人、直線で自然と一体になる人、静かだがゆるぎない論理。必要な大きさで必要な量の言葉を人に手渡せる人。写真家という感性にたよることの多い職業にあってこの様な文章を書く人がいたことに驚く。

●そしてあらためて龍村さんの周りを巡るいくつもの惑星が同時に太陽でもあり、龍村さんもまた、それら太陽の周りを回っていることに気付かされる。予定した旅のコースをほんのちょっとそれただけで、ドン・ロス(龍村仁「地球(ガイア)をつつむ風のように」(サンマーク出版)に登場)のベトナム戦争のかけらがあり、ダライラマ14世(「第二番」に出演)の住むインド、ダラムサラの透明な空気があり、佐藤初女さん(「第二番」に出演)がそこの名にちなんで名付けたというイタリア、イスキア島があった。それら「地球交響曲」の外縁にかすかに触れながら、「地球(ガイア)をつつむ風のように」を読み返し、その度龍村さんの世界が広がっていき収拾がつかなくなっていることに気付いていた。
 それでも、あることが収拾をつけてくれた。締め切りである。