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私の家から程近いペットショップには、常時、十数匹の子犬がいる。ガラス越しに見える彼らはとても可愛く、こんな所に閉じこめられて気の毒に、といつも胸が疼く。反面、人目に触れることの少ない環境の中で飼い主の出現を待っている無数の犬たちのことを思うと、複雑な気持ちになる。
私がインターネットで犬の里親探しのHPを見るようになったきっかけは、以前から犬の保護活動に尽力されてきた絵本作家の方の一言だった。「次に犬を飼う時は、行き場のない犬の里親になってあげてね」。
正直、もう犬を飼うつもりはなかった。16年を共にした愛犬を亡くした、あの喪失感に二度と苛まれたくはなかった。が、それでも私は毎日のように里親探しのHPを開くようになったのだから、我ながら矛盾している。
Web上には想像を遙かに上回る里親探しのHPがあって、子犬から老犬まで、あらゆる種類の犬が行き場を求めていた。飼い主の病気や破産によって手放された犬。捨てられ、放浪していたところを保護主に拾われた犬。保健所からボランティア団体に救出された犬。その生い立ちも様々だが、概して言えるのは彼らが皆、他にも多くの犬を世話している保護主の家に身を置きながら、新しい飼い主との出会いを待ちわびていることだ。
無論、保護主たちも日夜、犬のために無償で奔走している。私がその一人であるIさんとお会いする機会を持ったのは、もう二度と飼わないはずの犬を彼女から譲り受ける決意をしたためだ。
ある夜、いつものように里親探しのHPを見ていたら、生後4ヶ月の雑種犬に釘付けになった。人間にもしたことのない一目ぼれだった。一睡もできずに朝を迎えた私はその日のうちにIさんへ連絡し、翌日にはその犬とのお見合いに出向いていた。
里親希望者の中には虐待目的の人間もいるため、保護主は通常、事前にアンケートによる身元調査を行う。その後、直接会って話がまとまった場合も、すぐには犬を渡さず、後日、住居の確認も兼ねて里親宅に自らの手で届ける。
私の譲り受けた犬・スウもそうして我が家へやってきた。約2時間半もかけて訪れたIさんは、ほぼ週末のたびにどこかへ犬を届けているというが、報酬は一切受けとらない。もう10年もこのような活動を続けながら、それでもスウとの別れ際には涙を溜めていた。「これまで愛情に恵まれずにきた子だから、どうか大事にしてあげてください」。
そうしてIさんより託されたスウは、もともと犬の多頭飼いをしていた家に産まれた。しかしその家の経済が破綻して餌も与えられずに放置されていたところ、近所の方たちが見かねてフードを届けるようになり、やがてその一人がスウの将来を案じてIさんに相談、そこから里親探しが始まったわけだ。
確かに幸福な生い立ちとは言えない。が、近所の方たちやIさんによって救われ、命を守られてきたスウは天真爛漫で、人間を信じている。
人にはそれぞれ考え方があるから、犬好きの中には血統や犬種を重んじる人もいるだろう。けれど心ある方々の手に守られてきた過去は、目には見えないスウの勲章だ。そんな勲章をぴかぴか光らせた犬たちが、一日も早く、里親との安らいだ日々を手に入れることを願わずにいられない。
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