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最初にお会いした向井さんは激しく怒っていた。
慶応義塾病院。ロビーまで降りてきて、部屋に通してくれたものの、向井さんの怒りは納まらなった。それまでにFAXのやりとりをしていたが、最後のFAXが届かなかったのだ。結果、突然の訪問となってしまった。それは一方的に私の側に責任のある連絡の不備だった。
「このインタビューはうまくいかないだろう」「いいかげんに訪問してくる奴がよく逃げ帰っていくんだ」というような内容のことを言っていたと思う。
鋭い目つきの向井さんに詰問され、咎められながら、私は感動していた。
まだ、どこの誰とも判らぬ者に対して、このように厳しく怒ることのできる人間が今の世にどれほどいるだろうか。
こういう人と会いたかった。やんわりと非難しながら取材を拒絶するというやり方が普通になってしまった。
激しい叱責が続いた後、最初にコンタクトしたスタッフとの電話でのやりとりの結果、ある程度誤解は解け、後日取材をするということになった。
その後、雑談をしばらくしたが、その中で私が2年前にした長旅の話になった。
「私もしたいんですよ。女房と一緒に、ずっと泊まる所も決めずに」
あんなに激昂したことも忘れ、その眼はキラキラとした少年のそれだった。
病理医としての日常、執筆、講義、講演等、多忙な中、後日行われた取材は2時間程度しか取れなかった。
向井さんの書いている「君について行こう」上・下、「女房が宇宙を飛んだ」、「ハードボイルドで行こう」、千秋さんとの共訳「4001の願い」(バーバラ・アン・キプファー著)。読み返したもの。初めて読んだもの。
さらに向井さんが薦めている本をいくつか取り寄せた。
「アメリカ医療の光と影」、「インスリンの発見」
おかげでアメリカの医療制度について、多少知ることになった。
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