 |
職人がたくさんいる町にしたい、とセーラさんは言う。そのためには、職人の仕事を作らなくては。
桝一市村酒造場に50年ぶりに木桶仕込みの酒を復活させたのもセーラさんだ。桶作りの職人を探し出すこと、米の手配、桶仕込みの経験のある杜氏を説得すること、粘り強く地道な働きかけが四年前に実を結び、2,000本限定の「白金」として発売にこぎつけた。
「木桶につく微生物が微妙に作用して複雑な味が出る」
「酒は不純物が入ることで、深さを増すことがある」
自身の生きてきた中にその言葉と符合するカードがあったのだろうか。ともあれ闇に落ちようとしていた“木桶仕込み”という日本の伝統は、懸命に伸ばした彼女の指先に、かろうじて引っかかった。
その後全国の酒造会社に呼びかけ「桶仕込み保存会」を発足。現在では十数社の酒蔵が桶仕込みに挑戦している。レトロ感覚ではない。「本物の職人のルーツは一度途絶えたが最後、甦えることはない」
消えようとする職人技の仕事を無理のない形で作り出し、人をそこに送り込む。彼女がこの小布施でしてきたことは正に人間のパッチワークではなかったか。今、燻瓦を達磨窯で焼くことを復活させようと試み始めている。
|