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index -2004 WINTER Vol.32-
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特集:向井 万起男
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取材を終えて

 小布施。
 和んだ人々の、落ち着いた町並みの空気に触れた時、激しく何かが反応した。
 それはずっと昔、どこかで味わったことのある感情だった。
 思い出した。
 十数年前、各地で多くの祭りを観る機会があった。
 大きくて派手な祭り、小さな可愛らしい祭り。
 ダイナミックな男の祭り、「祭りだから何でもありだ!」
 と言わんばかりに若者たちがただただ羽目を外した祭り。
 その中にひときわ美しい祭りがあった。
 富山・八尾町「おわら風の盆」
 人口が3万人にも満たない小さな町に
 毎年9月1日からの3日間、催される「風の盆」に30万人もの人がやってくる。
 大半の観光客が帰ってしまう深夜、薄暗い裏通りの四つ角に立っていると、
 どこからともなく胡弓(こきゅう)の音色が聞こえてくる。
 やがて町流しと呼ばれる踊りと演奏の集団が暗がりから現われる。
 哀切の曲想、凛として風を切る手。
 やがて遠ざかり、薄暗がりの中に取り残される。
 「おわら風の盆」。その時にいだいた言い知れぬ感情と
 小布施で湧き上がった感情は同種のものだった。
 嫉妬。
 「このまちでなぜ生まれなかったのか」

 脱線ついでに「風の盆の思い出」をひとつ。
 ある時訪れた「風の盆」は雨だった。
 誰もが一番楽しみにしていた町流しもなく、
 それぞれの町内会が持っている公民館の中で祭は行なわれた。
 観光客はそれぞれ公民館などの施設を巡って、土間から踊りを見る趣向となっていた。
 いくつかを巡ったが、土間が観光客でいっぱいになり、雨のあたる外にまであふれている。
 踊りを終え休憩している公民館があった。
 観光客はまだそれほどおらず土間の一番前に席を確保した。
 やがて始まるだろうという思いからである。
 だがいっこうに始まる気配がない。
 座敷では踊り手や奏者が思い思いにお茶を飲んだり雑談したり、煙草を吸ったりしている。
 次第に土間には観光客が増えていき身動きできないほどになった。
 とうとう痺れを切らした観光客が、言ってはならない一言を口にした。
 座敷の祭人たちに向かって「いつはじまるんですか〜?」と聞いた。
 こちらに背を向けて寝転がり、腕枕をしていた男性が大儀そうに
 「おまえに答える義務はないんだけどね〜」といった感じでゆっくりこちらを向き、
 「わからんですよ」と言った。
 その時そこにいた観光客全員が気付いたのではなかったか、
 彼らは自分たちだけのために、うたい、踊り、奏している。
 たまたま観光客が勝手に押し寄せ、その祭を観せてもらっているに過ぎないのだということを。

 その後踊り始めたのは10分か15分後だっただろうか。



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