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index -2004 WINTER Vol.33- 松原 惇子
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 わたしのもっぱらの旅行先といえばハワイだ。以前は、歴史と文化の香りがするイタリアやギリシャなどによく出かけたものだが、50歳を過ぎてからというもの、8時間以上は飛行機に乗る気になれず、最近はハワイオンリー。
 以前、旅行好きの年配の友人(当時70代)が、「ファーストクラスでない限り、もうヨーロッパには行きたくない」と言っていたその意味が、だんだん分かるようになった。
 若い頃は“ハワイはおのぼりさんの行くところ”とバカにしていたわたしだが、頻繁に行くうちにハワイの魅力にすっかり取り付かれている。ハワイは文字通りの「楽園」である。
 マイナスイオンたっぷりの空気、青い空に青い海、さんさんとそそぐ太陽。もう、これだけで十分に楽園の要素を満たしてはいるが、ハワイにはさらに、もうひとつの要素が加わる。
 それは、人々の笑顔だ。売れているのか売れていないのか分からないようなお店のおじさん、ホテルの掃除のおばさん、道端でしゃべっている人たち、誰もがニコニコしている。別に楽しいことがあったわけでもないのに、ハワイの人は普段の顔が笑顔なのである。 ハワイ島のドライブインでランチを買おうとした時のことだ。食い意地の張っているわたしは、どうせ食べるならハワイらしいものをと、カウンターの前でかなりの時間迷っていた。それにもかかわらず、店員さんもお客さんも厭な顔ひとつしない。わたしはその時、まるでお母さんに見守られている子供のような気がした。ロコモコを手に「待たせてごめんなさい」と言うと、後に並んでいた小錦のようなおばさんは「ハワイアンスピリッツ」と大きな笑顔で返してくれた。
 それに比べ、わたしたち日本人はどうだろうか。お金を拾ったとか、宝くじで当たった時は笑うが、ハワイの人のように普段の生活を笑顔で過ごしているだろうか。
 わたしは時々、鏡に映る自分の顔を見てぞっとすることがある。人前で話す時は「いつも楽しそうですね」と人から言われるが、それは特別の日の顔だ。普段のわたしの顔は、自分でもびっくりするほど無表情だ。
 かわいい子には旅をさせろ、という格言があるが、日常を離れて外国に身をおくと、自分を客観的に見るようになるので気づきがある。特別、豪華なホテルに泊まらなくても、相手が笑顔で応対してくれれば旅は楽しいものになる。でも、本当は旅の時だけでなく、普段の生活を笑顔で送れると、平凡な日常ももっと楽しくなるはずなのだ。しかし、長い間の習慣は恐ろしいものでなかなか直るものではない。
 先日、わたしが主宰している団体の講演会が青山であった。寒い夜にもかかわらず80名の女性たちが集まってくれた。女性だけで埋め尽くされた会場は、まるでお花畑のよう。お花畑といってもいろいろで実におもしろい。
 わたしは講演会に呼ばれると、「今日はどんなお花畑かしら」といつも楽しみに出かける。たんぽぽやスイートピーが咲き乱れている時もあれば、野ばらやつる草がいっぱいの時もある。たんぽぽやスイートピーと感じるのは、笑顔の人が多い時。一方、つる草がいっぱいと感じるのは、無表情の人が多い時だ。笑顔の人が多いと、こちらまで嬉しくなってつい話にも熱が入るが、つる草の時は、正直言って話しづらい。
 笑顔は人を嬉しくさせる。わたしもハワイの人を見習い、笑顔で過ごすようにこれからも心がけるつもりだ。


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