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2009年6月16日

産学連携ミニ・コンソーシアムを構築し
SiCを用いた次世代データセンター給電システムの応用研究に着手

1.概要

 株式会社NTTファシリティーズ(代表取締役社長 森 勇/以下、NTTファシリティーズ)は、独立行政法人産業技術総合研究所(理事長 野間口 有/以下、産総研)、国立大学法人九州大学(総長 有川 節夫/以下、九州大学)、国立大学法人千葉大学(学長 齋藤 康/以下、千葉大学)、国立大学法人長崎大学(学長 片峰 茂/以下、長崎大学)の4者と共に、世界的にも先進的な「企業」、「研究機関」、「大学」が対等な立場で参画するミニ・コンソーシアム(以下、本コンソーシアム)を構築し、次世代データセンターで必要とされる、シリコンカーバイド(SiC)半導体*1を使ったパワーエレクトロニクス技術の応用研究に取組みます。

2.研究開発の背景

 2020年以降、精細な動画像データの送配信などに伴う情報トラヒック量の爆発的な増加、およびそれに伴うICT装置の電力消費量の急激な増加が予想されています。推計の一例として、2025年度時点の情報通信量は現状の約200倍、その時点におけるIT機器の消費電力量は現状の約5倍と予想されています*2。また、ICT装置の高密度実装化が急激に進んでおり、ICT装置1ラックあたりの消費電力が1990年代前半に比べ約10倍(IT装置1ラックあたり20kW)となる事例が報告されています*3。このようにICTシステムは、給電システム技術に比べて圧倒的に速いペースで進歩しており、近い将来、技術的破綻を来たす(例えば給電システムがデータセンターの大部分を占めるなど非効率的な設備形態が発生する)可能性が出てきました。そこで、NTTファシリティーズ、産総研、九州大学、千葉大学の4者は、2008年から共同で次世代のデータセンターに対応した新たな給電システムと、そこで必要とされる高パワー密度電源回路技術や半導体遮断器の小型化、多機能化技術に関するフィージビリティ研究を進めてきました。その後、それらの見通しが得られたため、長崎大学を加えた5者は、各専門領域の研究者が更に密な連携を図るための産学連携ミニ・コンソーシアム(本コンソーシアム)を構築し、次の研究ステップである応用研究に着手することとしました。

3.研究開発の内容と各者の役割

 本コンソーシアムは、次世代データセンターに対応した新たな給電システムで必要とされる、(1)高パワー密度電源回路技術、(2)半導体遮断器の小型化、多機能化技術(インテリジェント化技術)の確立に取組みます。詳細は以下の文章及び別表をご参照ください。

(1)高パワー密度電源回路技術
NTTファシリティーズ、産総研、九州大学および長崎大学は、データセンター向け高電圧直流給電用整流装置の電源回路について、SiC半導体デバイスの採用と表1に示す技術により、従来の約10倍の高パワー密度化を目指します*4。この研究成果により、高電圧直流給電用整流装置の電力変換部は従来に比べて約1/10の小型化が見込まれます*5
表1 各者が提供する技術(高パワー密度電源回路技術関連)
法人名 提供する技術
株式会社NTTファシリティーズ 給電システム設計評価技術
独立行政法人産業技術総合研究所 電力変換器の統合化設計技術*6
国立大学法人九州大学 ノイズ分析評価技術
国立大学法人長崎大学 電磁界解析、ノイズ解析技術
(2)半導体遮断器の小型化、多機能化技術(インテリジェント化技術)
NTTファシリティーズ、産総研、千葉大学、九州大学、および長崎大学は、高電圧直流給電用直流半導体遮断器について表2に示す技術を用いて、小型化、多機能化の実現を目指します。産総研が開発したSiC静電誘導型トランジスタ(SiC-SIT)を用いることにより、直流遮断器内の半導体スイッチ部が従来の約1/10*7に小型化されるとともに、電流遮断時の過渡電圧変動の抑制など多様な機能の実現が見込まれます。
表2 各者が提供する技術(半導体遮断器の小型化、多機能化技術関連)
法人名 提供する技術
株式会社NTTファシリティーズ 給電システム安定化技術
独立行政法人産業技術総合研究所 SiC-SIT開発技術
国立大学法人千葉大学 素子破壊耐量評価技術、制御回路設計技術
国立大学法人九州大学 ノイズ分析評価技術
国立大学法人長崎大学 ノイズ解析技術

また、産総研とNTTファシリティーズは、全体の研究コーディネーションも行います。

4.今後の予定

 本研究は実証に向けた要素技術確立の取組みであり、本コンソーシアムでは、2013年に本研究成果を用いた実証研究を開始すべく研究を進めていきます。

用語説明

*1 炭素(C)とケイ素(Si)の化合物であるSiC(Silicon carbide、炭化ケイ素)からなる半導体です。
SiC素子は、理論的には通電状態での抵抗値(オン抵抗値)をSi素子よりも2桁下げることができるとされています。また、熱伝導性、耐熱性等、優れた物理的・化学的性質を有することから、シリコン(Si)半導体を凌駕する小型・低損失の半導体デバイスの実現が可能とされています。
*2 経済産業省「グリーンITイニシアティブ」(平成19年12月6日)において、
情報量の爆発的な増加とIT機器の消費電力量の増大について推測されています。
関連URL:http://www.meti.go.jp/press/20071207005/03_G_IT_ini.pdf
*3 ICT装置1ラックあたり15kW~20kWの実装密度を実現したデータセンターについて報告されています。
関連URL:http://www.bcm.co.jp/site/2008/02/greenit/0802-greenit05.pdf
*4 当社従来品との比較値です。
*5 入出力端子や表示部などを除いた電力変換部についての比較です。
*6 産総研エネルギー半導体エレクトロニクス研究ラボで取組んでいる、
シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのシリコン(Si)に代わる新材料による高速・超低損失デバイスの実用化に加えて、デバイスの優れた特徴を生かす、受動部品、回路技術、高温、高速動作を可能にする実装技術、計測・評価技術。また、これらの技術を電力変換器に統合化する設計技術。
関連URL:http://unit.aist.go.jp/eserl/ci/unit/introduction/SDNW_team.html
*7 Si-MOSFETを用いた当社従来品との比較値です。
本件に関するお問い合わせ先
(株)NTTファシリティーズ 総務人事部 広報室 TEL:03-5444-5112

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