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2010年3月3日

世界初、大容量リチウムイオン電池システムを完成
~安全・長寿命の200Ah級電池を実現~

株式会社NTTファシリティーズ
新神戸電機株式会社

 株式会社NTTファシリティーズ(代表取締役社長 沖田 章喜、東京都港区)と新神戸電機株式会社(執行役社長 伊藤 繁、東京都中央区)は、共同でICT装置*1バックアップ向け大容量リチウムイオン電池システムを開発しました。
 大容量リチウムイオン電池システムは、両社が2009年3月に開発した難燃・長寿命の据置形フロート仕様*2リチウムイオン電池と、この度開発したバッテリーコントローラー(BCU)*3とを組み合わせることによって蓄電池システムを構成し、ICT装置用途に実用導入が可能な設備となりました。

1.開発の背景

 産業用蓄電池需要の大半は定置用途でのフロート仕様であり、現状は鉛蓄電池が主流です。なかでも、情報通信分野はICT装置の消費電力が増大傾向にあり、それらの装置の停電対策で使用される蓄電池もしだいに大型化しています。しかし、都市部において、そのような蓄電池を設置する場所の確保は大きな課題であり、リチウムイオン電池の特長である省スペース化が期待されるものとなっています。
 両社は昨年3月に200Ah級リチウムイオン電池を開発しました。このリチウムイオン電池は常時満充電状態で使用される為に万が一の充電装置故障による過充電時や内部短絡時に、電池が熱暴走状態になることを抑制する安全対策を行っており、ICT装置用途に適した大容量リチウムイオン電池となっています。
 リチウムイオン電池は鉛蓄電池等水溶性電解液蓄電池とは異なり、電池電圧の均等化の為に専用のBCUが必要であり、この制御装置は常時電池セルの電圧や温度等を監視して過充電、過放電を防止する役割も有しています。BCUは電気自動車用途では既に実用化されていますが、電気自動車は充放電の繰り返しで使用される為に電池の電圧変化を把握して必要な均等化処理を行う事は容易です。しかし、フロート仕様のBCUでは常時満充電で使用される為に、電池セル電圧の均等化技術において補正量、補正幅、補正時間の最適化が課題でした。今回、専用のBCUを共同で開発したことにより、ICT機器用途に適した大容量リチウムイオン電池システムを実現しました。

2.開発の経緯

 NTTファシリティーズは、データセンター、放送局、金融業など、多くのお客様の電源システムや鉛蓄電池等の監視・保守業務に携わっており、常に最先端の技術を注視し、リチウムイオン電池の定置用途での導入の必要性を検討してきました。また、共同開発を進める上で、NTTファシリティーズのグループ会社であり、リチウムイオン電池の知見を有する株式会社NTTファシリティーズ総合研究所が難燃化及び安全性評価を行いました。
 新神戸電機は、1992年のNEDO技術開発機構の事業への参加から大型リチウムイオン電池の開発に着手しました。そして、自動車用途で2000年よりリチウムイオン電池を事業化し、2004年からは日立グループのリチウムイオン電池製造合弁会社である日立ビークルエナジー株式会社への参画を通じて開発に注力してきました。
 今回、NTTファシリティーズが有する電源システム化技術および保守運用技術と、新神戸電機の蓄電池技術を融合し、大容量リチウムイオン電池、及び蓄電池システム開発を共同で実施して参りました。

3.開発の内容

 高い安全性と長寿命化を図った大容量リチウムイオン電池とフロート仕様に最適な電池制御技術の開発により大容量リチウムイオン電池システムを開発しました。

(1)安全・長寿命の大容量リチウムイオン電池
(2009年3月に開発した内容)
 据置用途のリチウムイオン電池は、屋内で使用されるため難燃化が必須となります。また、バックアップ向け電池の寿命は交換に要するコストを最小限にするため、機器寿命と同等の10年以上の寿命が望まれています。そこで今回、両社の共同開発成果をもとに電解液および電極の難燃化技術と電極の長寿命化技術を適用した、安全・長寿命の大容量リチウムイオン電池を製品化しました。
 開発電池の電解液はUL94-V0*4相当の難燃性を有しており、万が一の過充電や内部短絡事故の場合でも電解液の発火、燃焼を抑制して火災の発生を未然に防ぎ、また、難燃薄膜層電極の採用により発煙事故につながる電極の熱暴走反応を大幅に抑制することができます。
 寿命については、難燃電解液の溶媒組成および電解質の改良を行ない、従来3年程度であった期待寿命を10年に延伸しました。
 さらに、電極の薄層化や端子集電部の最適化設計を行ない、従来の難燃化電解液を使用した電池に比べて、大電流放電時における電圧降下を大幅に小さくすることができました。
(2)BCU(今回の開発内容)
 ICT装置用途の蓄電池システムは、組電池として常時満充電状態で使用され、電気自動車など従来のサイクル用のリチウムイオン電池とは異なった電池制御技術が必要となります。この度の開発では充電中の各セル電圧推移の解析と電圧変化、及び電圧バラツキを抑制制御する方法を検討し、マイコンでそれらを総合的に制御する技術を確立しました。
 上記の結果を元に、フロート仕様に適用可能なBCUを開発し、本制御回路を搭載した大容量リチウムイオン電池システムを開発しました。本電池システムは210Ahリチウムイオン電池を12セルから48セルまで収納でき、その蓄電能力は最大約36kWhになります。
 通信機器用途(定格電圧48V系)で210Ahから840Ahをキュービクル1台で構築でき、その設置面積は約0.36m2です。ICT装置用途で導入予定のHVDC*5(定格電圧380V系)では210Ahの蓄電システムをキュービクル2台で構築でき、その設置面積は約0.72m2です。
 これは従来の同容量鉛蓄電池システムと比べて、設置床面積を約半分にすることができ、ビル内の電池システムの設置スペースを大幅に削減することが可能となります。
 また、運用管理に便利なように電池状態監視のために各蓄電池(セル)の電圧、温度等の情報をリアルタイムに上位システムであるBMS*6に送信することができます。
  • 大容量リチウムイオン電池システムの外観
    210Ahリチウムイオン電池システムの外観を以下に示します。
大容量リチウムイオン電池システムの外観
※図をクリックすると、拡大表示でご覧になれます。

4.今後の計画

 本開発品はNTTグループをはじめデータセンター、放送局、金融業など、多数のユーザーが現在運用中の、高い信頼性が要求されるICT装置用電源システムとして導入されることを主目的としています。将来は給電システムの高信頼、高効率、省コスト化に向けたHVDCへの適用も視野に入れています。
 NTTグループでは省スペース化への期待が高い都市部の狭隘ビルより、ユーザーと協議しながら設置を進める計画です。また、今後はUPSや非常照明等停電時のバックアップ用途にも積極的展開を予定しています。
 なお、新神戸電機では今回の開発成果を活かし、今後の大容量リチウムイオン電池の市場拡大に備えて開発技術者と設備を増強し、産業用途での幅広い需要に対応、展開していく考えです。

用語説明

*1 ICT装置
情報通信技術Information and Communication Technologyを使用した装置の略称で、電話設備、サーバー、データ蓄積装置等の情報通信装置を指します。
*2 フロート仕様
常時満充電状態で使用し、停電時にバックアップする使い方。
*3 BCU
電池制御装置Battery Controller Unitの略称。
リチウムイオン電池を安全に使用するためには常に電池の状態を監視し、併せて電池セルの電圧バラツキを補正する制御(均等化)を行う必要があります。 BCUはセルコントローラーの情報を元に電池全体の状態を常時把握し、必要な場合にはセルコントローラーに電池電圧のバラツキを補正する指示を出す機能があります。
また、BCUは負荷装置や充電装置側へ電池の情報を伝達する機能も有します。
*4 UL94-V0
米Underwriters Laboratories Inc.が定めた、樹脂の難燃性を規定する材料、製品の安全規格で「V0は炎を離した後10秒以内で自己消火性を有する」事を示します。
蓄電池は難燃規格が無いために樹脂の規格を援用して評価しました。
*5HVDC
高電圧直流給電システムHigh Voltage DC power systemsの略称。ICT装置の給電電圧は電話設備等では一般的にDC48Vで給電されています。また、サーバー等ではAC100V又はAC200Vで給電されています。HVDCはDC380Vの高電圧直流給電とすることで、電力変換機器による変換ロスを低減させ、また配線による抵抗損失をも低減させるICT装置の省エネ化技術です。NTTファシリティーズ が提唱する”GreenITy Building”を実現する技術の一つです。
*6BMS
蓄電池管理システムBattery Management Systemの略称であり、予防保全の目的で蓄電池の状態監視を常時行うことにより、蓄電池の異常があれば早期に把握して対策する事により重要な情報通信設備の運用を維持する為の設備です。
【本件に関する報道機関からのお問合せ先】
NTTファシリティーズ 経営企画部広報室 MAIL:pr@ntt-f.co.jp
新神戸電機株式会社 CSR・コーポレート本部 TEL:03-6811-2360

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