NTTファシリティーズ
Case StudyPROJECT事例
2022年2月14日

既存建築物の改修事業における
カーボンニュートラルへの取り組み

コンサートホールなど複数のホールなどからなる所沢市民文化センターMUSE(ミューズ)。1993年の開業以来、初めての大規模改修が行われ2019年に竣工しました。PFI*という枠組みのなかSPC*を組んで所沢サスティナブルサービスという会社を立ち上げ、当社は設計・工事監理、開館準備に加え、竣工後の維持管理を担っています。本改修工事では特定天井*の耐震改修と同時に、老朽化した電気・空調・給排水・舞台設備などの更改整備を行いました。発注者である所沢市はあらかじめ約2000点に及ぶ機器の更新を示した要求水準書を作成。当社はそれに則った上で、さらなるLCC*、LCCO2*削減を目指し、細やかな機器選定はもちろん、FIT BEMS*などの独自技術を投入。LCCO2において目標値を大きく超える実績を達成しました。

*PFI(Private Finance Initiative):民間の資金やノウハウを活用し、公共施設などの設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法のこと

*SPC(Special Purpose Company):特別目的会社。特定のプロジェクトのためにつくられる会社こと

*特定天井:「建築基準法施行令第39条第3項」で定められた「脱落によって重大な危害を生ずるおそれがある天井」のこと

*LCC(Life Cycle Cost):建物のライフサイクル(企画・設計、施工、維持管理、廃棄まで)で発生する生涯費用のこと

*LCCO2(Life Cycle CO2):企画・設計から廃棄まで建物の全生涯で発生するCO2総排出量のこと

*FIT BEMS(FIT Building and Energy Management System):当社商品の室内環境とエネルギー性能の最適化を図るためのクラウド型ビル管理システムのこと

LCCとLCCO2の両立に向けた提案

「改修個所の洗い出しは一般的に設計協議により決定していきますが、今回の案件では所沢市側に迷いがなく、更新対象の機器点数にして約2000点に上る要求水準書があり、既存機器の更改方針が明確に決まっていました。我々は安藤・間との協働で3か月ほど時間をかけて更新対象機器を一つひとつ精査し、LCCおよび LCCO2をさらに削減する提案を行いました」(佐橋)

ランニングコスト比較(イメージ)※数値は提案時のもの

「ある程度のCO2削減は要求水準書どおりの機器更新でも可能です。ただし、今後の社会動向を考えLCCO2削減の観点で精査し、独自提案としてまとめました。また、MUSEの顔の一つであるホワイエや共用部のLED照明化など、光源が成熟したことによる意匠性を保持したままの省エネや大規模改修ならではのコストメリットが生かせる内容を取り込んでいます。計画時点では27%程度のCO2削減見込みでしたが、実績値はそれを大きく上回る43%減を達成しました。また、所沢市は市も直接出資している地域新電力(㈱ところざわ未来電力)からクリーンエネルギーの調達を採用したことで、さらに約18%のCO2削減を実現しています」(飯島)

カーボンニュートラル実現にむけたCO₂削減率

維持管理の強みを活かした付加価値の提供

「所沢市と詳細計画について話し合う中で、BAS/BEMS*は高い評価を受けたポイントです。BASに関しては空調と受変電の2つのシステムを統合して使いやすく合理化。監視業務の一元化だけでなく保守点検回数や運転監視員の適切な配置を実現しています。 また、FIT BEMSを導入して館内のエネルギーデータの収集、見える化に加え、クラウドデータベースを利用した分析により運用に反映できる有益なデータとしてアウトプットしています。これらによって建物運営の効率化を図るなど、LCC、LCCO2削減だけでなく人的リソースの最適化を図ることで維持管理費8%縮減を可能としています」(飯島)

*BAS/BEMS(Building Automation System/Building and Energy Management System):建物設備を統合監視・制御する機能及びOA系、通信系の各システムを統合し、ビル全体のコスト低減やスペース削減するビル総合管理システムのこと

「PFIの枠組みで、改修後の10年間は当社が参入するSPC事業会社が維持管理をしていくことも所沢市から評価されたポイントだと考えています。構築部門と運用部門が一つのチームとしてプロジェクトに参画し部門を超えて相互連携する。設計意図を十分に理解したメンバーが適切な省エネ運用を行っていくところにNTTファシリティーズらしさが表れていると思っています」(佐橋)

クラウド型BEMS(イメージ)

独自VE提案による事業貢献

「カーボンニュートラルという観点からいえば改修は新築よりハードルが高く、既存の制約条件の中では取り組めることが限られます。その中で細かい項目を着実に積み上げることを徹底しました。更新機器は大小にかかわらず常に効率を意識しファンやポンプのインバーター化を実施、さらに汎用機器の採用による更新性向上などを考慮しました。イニシャルコストはアップしますが、ランニングコストを含めたトータルでLCC削減となることを説明し、ご納得いただきました」(飯島)

「バリューエンジニアリングの観点からも有効に削減できる改修項目を洗い出し、中止した場合の減額数値を提示することで、プラスアルファ提案によるイニシャルコストの増加を含めた円滑なコストコントロールを実現させることができました。一例として放水型スプリンクラーの中止があります。消防と折衝することで不要となる可能性があると提案し、消防と討議を重ねて安全を担保した上でこれを実現しました」(佐橋)

今後の公共事業におけるカーボンニュートラルの実現に向けて

「公共に関わらずどのようなプロジェクトでも施主との考え方のギャップは常にあるので、苦労するポイントでもありますが、特にLCCO2については、社会的動向のみで議論を進めると施主に対してのメリットが見えにくくなります。LCCO2削減に取り組むことで施主が社会の中でどの役割を担い、地域に対してどのような貢献ができるのか、その結果施主にどのような恩恵をもたらすのか、一連のチェーンとして説明することが必要です。LCCO2削減の取り組みは難しい課題であるため、施主と共に学んで社会の意識を高めていくことも使命のひとつではないかと考えています」(飯島)

「カーボンニュートラル実現に向けてやるべき事はCO2排出量をいかに削減するか(省エネ・非化石エネルギー化等)と、排出したCO2をどう差し引きゼロにするか(除去、回収、オフセット等)ということになります。今回所沢市民文化センターMUSE(ミューズ)の改修工事で行ったのは、徹底した省エネ化によるCO2排出量とランニングコストの削減です。構築段階で細かな削減項目を積み上げ、実際の運用においてもモニタリング・チューニング等により改善を積み重ねる。特に改修工事に関しては、このような堅実な取り組みがカーボンニュートラルの実現において重要であると考えます。
今回の案件に類似した需要は今後加速的に増えていくことになると考えられますので、県単位、やがては国全体に広がるLCC、LCCO2への取り組みを広げていきたいです」(佐橋)

プロフィール
  • 佐橋 秀康
    NTTファシリティーズ
    首都圏事業本部
    都市・建築設計部 設備設計部門
    第一設計担当 課長(当時)

    佐橋 秀康(さはし ひでやす)
    2001年入社。入社時は本社にて新築設計に携わり、その後NTT ファシリティーズ中央や関西事業本部にてNTT グループの改修や学校・病院の新築設計を中心に従事。現在は、再開発プロジェクトやZEB コンサルも手掛けている。
  • 飯島 善行
    NTTファシリティーズ
    首都圏事業本部
    都市・建築設計部 設備設計部門
    第一設計担当 課長(当時)

    飯島 善行(いいじま よしゆき)
    1998年入社。入社時は首都圏支店にて通信建物の整備設計に携わり、その後NTT ファシリティーズ中央にてNTT グループの改修や共同住宅・放送局の新築設計を中心に従事。現在は、再開発プロジェクトやCMも手掛けている。

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