NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル

黎明期の太陽光発電から始まった脱炭素への道

 NTTファシリティーズのスマートエネルギービジネスの取り組みの起源は,1962年,まだ太陽電池の開発が黎明期だった頃,島民約250名の小呂島にたった1台しかない公衆電話用無線機の自立電源として太陽電池を導入したのが始まりでした。保守要員が常駐しない離島であっても 「通信を止めない」という使命と,「島と本土をつなぐ唯一の電話である公衆電話を守ってほしい」という島民の願いに応えるためでした。太陽電池設置作業が完了し,電電公社職員が島を後にしようとしたとき港で待ち受けていたのは,深夜にもかかわらず島民こぞっての盛大な見送りでした。それは,島民の願いと電電公社職員の思いが形となって表れた瞬間でした。
 それ以降,1996年3月のNTT中央研修センタの屋上設置型太陽光発電システム,2005年3月に開幕した愛・地球博にて行われたNEDO「新エネルギー等地域集中実証研究事業」,2006年のNEDO「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究」,そして2011年2月より運用を開始した太陽光発電実証サイト「Fソーラーリサーチパーク」の構築など,実用化に向けた様々な技術の実証研究に取り組んできました。

2016年12月に竣工した宮崎亀の甲太陽光発電所(宮崎県宮崎市)。設置容量は小呂島の約100万倍となる32,697,000W(約33MW)に達する

CO2排出量削減に有効なグリーン電力の提供

 スマートエネルギーの活用技術を当社が着実に積み重ねているのと並行して,社会でも地球環境負荷低減のうねりは大きいものとなり,2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs*1では気候変動,エネルギーに関する目標が設定され,さらに同年12月のCOP21では,温室効果ガスの具体的な削減目標が各国に課されるパリ協定が締結されるなど,脱炭素社会に向けた世界規模の枠組みが整備されました。
PRI*2への署名を行った投資家を中心にESG投資*3の拡大が加速している背景もあり,企業による脱炭素社会への取り組みは,企業が担うべき責任という側面が大きくなってきており,グローバル企業を中心にSBT*4およびRE100*5の取り組みが加速しています。
 当社は,これまでFIT(固定価格買取制度)を活用した太陽光発電事業により再生可能エネルギーを推進してきましたが,今後はFITを活用しない太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーによるグリーンな電力の供給,地域新電力,グリーン電力の最大活用に向けた省エネルギーやエネルギーマネジメントを積極的に展開していきます。お客様ニーズに沿った提案で,持続可能な脱炭素社会の実現をサポートします(図)。
 また,NTTグループとしてESG経営を推進しており,地球環境負荷低減/SDGs達成への貢献,エネルギーコストの抜本削減を目指し,EP100*6,EV100*7に参画しました。EP100は,電力設備の直流化や通信設備の省エネルギー化により,2025年目標として通信事業のエネルギー効率2倍,消費電力10%削減を目指しています。EV100も,2025年目標として,NTTグループで所有する一般車両の50%のEV化と車両保有コストの年間15%削減を目指しています。これら2つの目標についても,これまで当社がNTTグループにおいて主導的な役割を担ってきた環境・エネルギー事業領域における技術力を生かし,貢献していきたいと考えています。
 小呂島の太陽光発電から始まったNTTファシリティーズのスマートエネルギービジネスは,人々の生活を豊かなものにする技術を提供しています。それは日頃あまり人目につくことのない地道な業務の積み重ねですが,それこそが社会が発展するための基盤になると信じて活動を続けています。

図:Fグリーン電力の概要。お客様のニーズに合わせ,当社のオンサイト太陽光発電と配電網を通じた電力(オフサイト太陽光発電等)を組み合わせて低CO2電力を一元的に提供

  • *1 SDGs:「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さないことを誓っている
  • *2 PRI(Principles for Responsible Investment):責任投資原則。機関投資家がESGの課題を投資の意思決定に組み込み,長期的な投資リターンを向上させることを目的とした原則
  • *3 ESG投資:企業を評価する際に,環境(Environment),社会(Social),企業統治(Governance)への取り組みが適切に行われているかどうかを重視するという投資方法
  • *4 SBT(Science Based Targets):温室効果ガスの削減目標を審査・認定する国際イニシアチブ。世界の平均気温の上昇を「2℃未満」に抑えるために,企業に対して科学的な知見と整合した削減目標を設定するよう求めている
  • *5 RE100:事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が参加する国際イニシアチブ
  • *6 EP100:事業のエネルギー効率を倍増させること(省エネルギー効率を50%改善等)を目標に掲げる企業が参加する国際イニシアチブ
  • *7 EV100:事業運営に関係する車両を電気自動車に転換する国際イニシアチブ

1962年に福岡県の玄界灘にある小呂島の小学校校庭に設置された32Wの太陽電池。学校の先生が受付を行い,伝票を持って呼び出しに行くのは児童たちの役目だった

太陽電池の設置工事を終え,船に乗って島を離れる電電公社職員。深夜にもかかわらず島民こぞっての盛大な見送りが行われた

1998年,通信設備円筒型太陽電池とニッケル⽔素電池のハイブリッド電源開発のために構築された筑波フィールド試験機

1996年3月からNTT中央研修センタ(東京都調布市)にて設置・運用を開始した555kWの太陽光発電システム。屋上設置型としては当時世界最大規模だった。設置されたパネルの一部は,現在Fソーラーリサーチパークに移設され,運用から20年あまりが過ぎたパネルの実証研究を行っている。経年による変化を観察できることも研究を重ねてきた当社ならではの強みといえる

2005年3月,愛・地球博にて行われたNEDO「新エネルギー等地域集中実証研究事業」。NTTファシリティーズは2003年の公募提案段階から参加し,エネルギー制御システムの開発と運用を担当した。愛・地球博閉会後は,施設を中部臨空都市(愛知県常滑市)に移設し2008年3月まで実証研究が行われた。ここで得られたCO2削減効果を最大にする運用や,停電時の自立運転などのノウハウは,その後様々な場面で活用された

2010~2015年まで行われたNEDO「米国ニューメキシコ州における日米スマートグリッド実証」。米国ニューメキシコ州ロスアラモスと日本に設置した太陽電池パネルの性能を比較分析し,気象条件の違いが発電特性に及ぼす影響を検証した

2011年2月より運用を開始した太陽光発電実証サイト「Fソーラーリサーチパーク」。山梨県北杜市の全面協力のもと構築され,モジュール評価,架台検証, 設計技術検証,スマートビジネス検証の4つの評価・検証を実環境で行っている。その取り組みは世界的な技術の進歩に合わせて現在も続けられている

2013~2015年まで行われたNEDO「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」。施工が困難な傾斜地への太陽光発電導入を簡易化するため,人力施工が可能な新型架台の開発等,傾斜地での施工性向上のための技術開発を実施した

2017年4月に竣工したF長柄太陽光発電所(千葉県長柄町)。東西方向にMの字形となるように太陽電池アレイを配置するFソーラーパッケージMタイプを導入した。これにより敷地面積あたりの太陽電池設置容量と発電量が大幅に増加し事業性の向上が期待される


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