NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシリティーズジャーナル
2021年8月6日

ニューワークスタイル
新しい日常、新しいワークプレイス

NTTファシリティーズ 取締役 カスタマーソリューション本部 ファシリティマネジメント事業推進部長 小牟田 保

NTTファシリティーズ 取締役
カスタマーソリューション本部
ファシリティマネジメント事業推進部長 小牟田 保

NTTファシリティーズは,24時間365日,安定した情報通信サービスの提供や,進化を続ける情報通信技術の研究・開発に従事している方の安心・安全の確保と,生産性を高めるワークプレイスづくりに取り組んできました。
これまでNTTグループで培ってきたノウハウと先進テクノロジーを積極的に活用し,より多くの方々にニューノーマル時代の働き方(ニューワークスタイル)にふさわしいワークプレイスを提供していきます。

NTTファシリティーズのDNA「安心・安全」「生産性」×「先進テクノロジー」

 NTTファシリティーズのワークプレイスへの取り組みは,郵便・電信・電話などの行政事務と現業業務を管轄していた逓信省の時代(1885~1949年)に遡ります。1925年に完成した東京中央電信局(写真1)をはじめ,急増する電信・電話業務の生産性を高めるため,昼間は縦長の大きなガラス窓を採用することで執務室の奥まで十分な採光を確保し,夜間は日本でも普及し始めていた白熱灯をいち早く導入,途切れることのない業務運営を可能にしていました(写真2)。また,大火時の延焼予防策としてガラス面に水幕を張る機構(図1)を独自に開発・設置するなど,当時の先進テクノロジーを取り入れ,安心・安全を確保していました。

写真1 東京中央電信局増築後(1925年竣工)

写真1 東京中央電信局増築後(1925年竣工)

写真2 執務室(通信室)室内で電信・電話業務を行う職員。執務室の奥まで採光を確保する大きな窓と共に,夜間でも業務可能な白熱灯を設置

写真2 執務室(通信室)
室内で電信・電話業務を行う職員。執務室の奥まで採光を確保する大きな窓と共に,夜間でも業務可能な白熱灯を設置

図1 東京中央電信局に設置された流水防火装置 この時代の局舎に導入された,火災時に窓上部から水幕をつくって延焼を防止する装置

図1 東京中央電信局に設置された流水防火装置
この時代の局舎に導入された,火災時に窓上部から水幕をつくって延焼を防止する装置

 近年になって,出生率の低下,労働者不足,労働生産性の低さを背景にした働き方改革が着目されるようになり,労働時間の短縮と併せて,知的生産(≒イノベーション)をいかに高めるかが課題となっています。知的生産性の定義は様々であり,定量的に測定することも難しいといわれる中,当社は「ワークプレイスの中での偶発的なコミュニケーションが知的生産性の向上に寄与する」と仮定し,簡易に測定可能な手法の開発に着手。これまでもコミュニケーション状況の把握は,会話の頻度・時間・場所の目視とヒアリングにて実施する方法はありましたが,数百人規模の組織では継続的に実施することは現実的ではないため,ICタグにより位置情報を測定し,収集したデータからコミュニケーションの機会を算定するシステムを開発し,現在では「コミュニケーションモニタリングサービス」として提供しています。
 このシステムを用いて,当社中国支店でもワークプレイス整備の効果を多面的に評価しました。整備前にワークプレイスの利用状況,各組織間のコミュニケーションの状況等を調査・分析し,データに基づいたワークプレイスプランニングを行っています。また,整備後にも同様の調査・分析を行い,社員同士のコミュニケーションの増加(2.7倍),組織間のコミュニケーションの増加(2.4倍)といったワークプレイス整備の効果を定量的に把握しています。なお,これらの取り組みが評価され,2017年度の日経ニューオフィス賞(中国)受賞につながりました。

ニューノーマル時代の働き方にふさわしいワークプレイス

 新型コロナウイルス感染症への緊急対策として半ば強制的に始まった在宅勤務を発端に,チャットやWeb会議ツールを活用し,Face to Faceとのハイブリッドなコミュニケーションをベースに,時間や場所にとらわれずリモートで働ける柔軟な働き方(ニューノーマル時代の働き方)が急速に広まりました(図2)。これまで在宅勤務は日常の働き方として普及していませんでしたが,通勤時間の削減,家族とのコミュニケーションの充実など,QOL(生活の質)の向上を実感したこともあり,リモートワークを前提としたニューノーマル時代の働き方は,今後も確実に定着していくと考えています。一方で,改善すべき点も見えてきました。リモートワーク環境では,コミュニケーションの不足による生産性の低下,雰囲気を共有できないことに由来する会社・チームへの帰属感低下等が現実的な問題として顕在化してきており,解決に向けた対応が求められています。
 また,ワクチン接種が進むにつれて今後は出社率が高まってくることが想定されます。ワクチンは発症や重症化を防ぐものであり,感染を完全に防ぐものではないことを再認識すると共に,新型コロナウイルス感染症は収束したとしても,新たな感染症が発生することを前提に対策を講じておくことは,今後のセンターオフィスにおいては重要な課題です。
 さらに,昨今の“カーボンニュートラル”の実現に向けた取り組みも企業価値を高める上では大きなテーマとなっています。自治体,製造業者,不動産事業者などを中心に,“カーボンニュートラル”を宣言する所有者が増えています。今後はビルの所有者だけでなく,入居者も再生可能エネルギーの積極的利用,省エネルギー,食品ロス削減などの取り組みが重要となってきます。このような社会環境の変化を捉え,当社においては,ニューノーマル時代の働き方にふさわしいワークプレイスづくりのポイントを,
・これからのセンターオフィスのアクティビティ
・ワクチン接種が進む中での感染対策
・カジュアルなコミュニケーションツール
・賃貸ビルの入居者としての“カーボンニュートラル”へのかかわり方
と捉え(図3),お客様のワークスタイル・ワークプレイスにかかわるソリューションを総合的に提供していきたいと考えています。次に,これからのワークプレイスづくりにおけるポイントについて,具体的に説明していきます。

図2 ニューノーマル時代の働き方

図2 ニューノーマル時代の働き方
従業員の安全性,事業の継続性を確保する一方で,オンラインとFace to Faceのハイブリッドなコミュニケーションをベースに,時間や場所にとらわれない柔軟な働き方。
「オフィスに行くのが当たり前」から「どこでもリモートで働ける」への価値観の転換をもたらした

図3 これからのワークプレイスづくりのポイント

図3 これからのワークプレイスづくりのポイント
場所はセンターオフィスにサテライトオフィス・自宅が加わり,多様化・分散。働く人・企業への提供価値は,従来の「生産性向上」には「リモートコミュニケーション」が,「安心・安全」には「感染対策」が加わり,「カーボンニュートラル」も新要素となる

これからのセンターオフィスのアクティビティ

 在宅勤務,サテライトオフィスが定着していく中で,“センターオフィスが果たす役割は何か”を探るため,当社のセンターオフィスにおいて調査・分析を行いました。このテーマについては多くの方々が関心を示しており,企業アンケートに基づいた考察が雑誌等で公表されています。「意志決定」「企業文化の醸成」「人間関係の構築」などが今後のセンターオフィスに必要な役割としてよく見受けられますが,企業特性や業務特性などによっても異なるものと考えられるため,当社では,そういった特性に応じた役割の明確化に取り組みました。
 具体的には,業務の洗い出し,各業務を進めるためのプロセス(アクティビティ)への分解,アクティビティごとに集まることによる効果を評価する手法を開発し,検証を行いました。その結果,当社センターオフィス(2,000人)の場合,実施しているアクティビティ総数は約3,300項目であり,そのうちセンターオフィスで行うアクティビティは約950項目(全体の30%程度)ということがわかりました。これらのセンターオフィスで行うアクティビティを,活動の目的や集まることの価値評価結果をもとにグルーピングし,代表的なセンターオフィスアクティビティとして再定義しました。例えば,自宅にはない高度環境を要する作業,新入社員等へのコーチング,異なる分野間での論点・情報整理といったものです。今後,この調査結果をもとに,これからのセンターオフィスにふさわしいプランニング,ファシリティ,ICT等のしつらえの整理を図り,ワークプレイスづくりに反映していく計画です。
 一方,サテライトオフィスは,「自宅に集中するスペースを確保できない」「自宅のICT環境が不十分」といった在宅勤務の問題を解決する場として,自宅から近い立地や集中できる環境づくりを重視しています。当社も含めNTTグループでは,自社施設を活用したサテライトオフィスの構築・運営に積極的に取り組んでいます。従業員の居住地マップから最適な立地を選定し,レイアウトやしつらえを標準化しています。さらに開設済みのサテライトオフィスの利用者の声を反映し,使い勝手の良い場所選定,構築・運営のノウハウも,より多くの方々に提供していきたいと考えています。

ワクチン接種が進む中での感染対策

 オフィスにおける感染対策の基本の一つに,「共用しない」ということがあります。しかし,オフィスの知的生産性を高めるABWを導入するということは,座席の共用を前提とするものであり,感染対策の基本と矛盾することになります。この矛盾を解決するための一つの方策として,先述したコミュニケーションモニタリングシステムを感染対策に応用。システムが収集した位置情報をもとに,一定範囲のエリアごとに密集度をリアルタイム表示し,高密集が一定時間継続するとアラーム・ライトを点滅させることで,密な状況を解消させるための行動を促します。また,万が一罹患者が発生した場合は,罹患者が利用したエリアをマップに表示することで,消毒・利用エリアを限定することも可能としています。罹患者と濃厚接触の可能性が高い対象者をピックアップすることも可能であり,対象者に自宅待機・PCR検査等を促すことにも利用できると考えています (当社東北支店リニューアルの取り組み参照)
 感染対策として,十分な換気量や循環空気量を維持することも必要ですが,オフィス全体では十分な換気量や循環空気量を確保できていたとしても,大型書庫のように間仕切りで仕切られた場合や,打ち合わせコーナーのようにハイパーテーションで仕切られた場合において,空調の吹出口や吸込口の位置によって空気が滞留しやすいエリアが発生します。このような状況を,気流解析シミュレーションを活用することで見える化を行い,オフィスの特性を理解した上で,安心・安全なオフィスレイアウトを考えることも必要です。現在このような取り組みを,当社の東北支店オフィスで総合的に導入し,検証を実施中です。

カジュアルなコミュニケーションツール

 NTTグループでは,リモートワークで課題となっている,雰囲気を共有できるコミュニケーションへの対応や,情報セキュリティ確保などをサポートするサービスを提供しています。高い情報セキュリティを保ちつつ,安心して使えるビジネスチャットツール「elgana(エルガナ)」や,仮想空間上で立ち話感覚の相談・雑談ができる「NeWork(ニュワーク)」は,すでに多くの方にご利用頂いています。今後,在宅,サテライトオフィスにおいても,多様なICTツールを活用することで,センターオフィス同様に安心・安全の確保,生産性向上に取り組んでいきたいと考えています。

賃貸ビルの入居者としての“カーボンニュートラル”へのかかわり方

 “カーボンニュートラル”の実現に向けた取り組みの一つとして,事業運営を「100%再生可能エネルギーで賄うこと」を目標とするRE100を宣言する企業が世界的に増えており,日本でも51社(2021年6月時点)に達しています。このような状況を踏まえ,100%再生可能エネルギーを提供する賃貸ビルも見受けられるようになりました。当社でも,NTTグループでエネルギー分野を担当しているエネット社と連携し,ビルのテナントニーズに合わせて再生可能エネルギーを提供しています。また,最近ではAIを活用したエネルギーマネジメントとして,人流,天候情報等のデータをもとに予測を行い,ワークプレイスの快適性と省エネルギーを両立できるプロアクティブな空調設備制御を行うことにも取り組んでいます。

一人ひとりに最適化されたワークプレイスの実現に向けて

 今後,今まで以上にリモートワークが定着し,時流を掴んだ特徴のあるオフィスが出現してくると思います。当社は,これからも先進テクノロジーを活用すると共に,定量的な評価を継続しながら,企業や個人の事業運営・働き方に最適化し続けるワークプレイスを提供していきたいと考えています。そのためには,ワークプレイスで働く人のアクティビティをメインデータとして位置付け,場所,時間,温度,明るさなどのビルや環境のデータと共に,清掃・警備オペレーションと連携させるなど,働く人のみならず,働く人を支える人も,一人ひとりが安心・安全と生産性向上を感じることができる様々な新しいサービスによる価値の提供にこれからも取り組んでいきます(図4)。

図4 データ活用による安心・安全,生産性向上の提供イメージ

図4 データ活用による安心・安全,生産性向上の提供イメージ
働く人のアクティビティデータ(位置,時間,健康状態,暑い寒い等の感覚等)を中心に,設備運転データや天候情報等様々なデータを蓄積・連携させることで,働き方の見える化をはじめとして設備制御や清掃・警備など維持管理オペレーション最適化にもつなげ,「働く人」にも「働く人を支える人」にも安心・安全と生産性向上を提供する


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