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ビジネスコラム

認証制度の進化から探るこれからのオフィス像

2020年8月5日

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 多くの企業において、働き方や知的生産性の向上が課題となる中で、オフィスのあり方が注目されるようになっています。オフィスは、そこで働く人に大きな影響を及ぼすと考えられており、現在は「ウェルネス(心身の健康)」の確保がキーワードの1つとなっています。そうしたオフィスのあり方を考える上で、ヒントとなりそうなのが認証制度です。オフィスに対する要件が変化するのに合わせ、認証制度もアップデートされています。今回は、これからのオフィス像について、認証制度の進化とともに探ります。

オフィスと働く人との関係に着目して登場した「WELL認証」

 建物やオフィスのあり方は、社会の動向に応じて変化しており、それに歩を合わせるようにさまざまな認証制度が登場してきました。

 例えば、地球温暖化に対する関心の高まりは、多くの温室効果ガスを排出する建物やオフィスのあり方に疑問を投げかけました。そうした社会からの要請に対応すべく登場した認証制度が、1998年にアメリカで開始された「LEED」です。「LEED」は、建物の省エネと環境に関する性能を評価するもので、2018年5月の時点において世界で70,891件の認証件数があります。

 さらに、オフィスが及ぼす働く人への影響が注目されるようになると、新たな切り口を持った認証制度として「WELL Building Standard(WELL認証)」が登場しました。WELL認証は、環境性能やエネルギー性能に加え、そこで働く人々のウェルネスについても評価する制度です。

 「WELL認証」は、空気、水、食物、光、運動、温熱環境、音、材料というオフィス環境に関わるカテゴリーに加え、心やコミュニティーという働く人の状態や行動も評価対象となっているのが特徴といえます。

 こうした第三者による客観的な認証を得ることで、企業は社員を大切にしている姿勢を対外的にアピールし、人材獲得や企業イメージの向上へとつなげることができます。2014年10月にアメリカでスタートしたこの認証制度には、2020年4月の時点で4,233件の登録件数があります。

日本発のウェルネスを定量的に評価する認証制度が登場

 日本では働き方改革という旗のもと、国を挙げて知的労働生産性の向上に向けた取り組みが進められています。その中で、経済産業省が「健康経営」を提唱するなど、オフィス環境を改善しようという機運も高まっています。

 しかし、日本国内における「WELL認証」の取得件数は、わずか5件にとどまっているのが現状です。これには、アメリカで生まれた制度のため、日本の基準との違いが多々あり、認証取得の難易度が高くなっているという理由があります。

 そうした状況を受け、2019年に日本発の認証制度として登場したのが、「CASBEE-ウェルネスオフィス」です。これは、国土交通省が主導してつくられた建物の環境性能に関する評価認証制度「CASBEE」から派生したもので、オフィスにおけるウェルネスを定量的に評価する制度となっています。

 「CASBEE」では、エネルギー性能だけでなく、資源の循環、地域への影響、室内の快適性や景観への配慮をもとに、建物の環境性能について総合的な評価を行います。一方、「CASBEE-ウェルネスオフィス」は、建物内で執務するワーカーの健康性、快適性に直接的に影響を与える要素だけでなく、知的生産性の向上に資する要因や、安全・安心に関する性能についても評価するのが特徴です。

環境性能とウェルネスの両立がこれからのオフィス像に

 従来、環境性能とウェルネスは両立が難しいものと考えられてきました。例えば、以前は省エネの取り組みというと、空調機の設定温度を夏は高め、冬は低めにして我慢したり、照明を間引きして室内が暗い中で執務するなど、働く人が我慢を強いられる場面もありました。しかし近年、センシングなどのIoT技術を活用して、オフィス内の人流や入退室状況に応じて照明や空調機を効率的に制御し、省エネと快適な環境を両立させることも一般的になりつつあります。

 こうした動向は、やはり認証制度にも反映されており、「CASBEE-ウェルネスオフィス」の場合、「CASBEE」と組み合わせることで環境性能とウェルネスを併せ持った建物として「CASBEE-スマートウェルネスオフィス」という認証評価を受けられるようになっているのです。

 もう1つのポイントとしては、新型感染症が挙げられます。現在、感染症予防のために、オフィスにおける新しい働き方が模索されています。「CASBEE-ウェルネスオフィス」評価認証では、換気性能や医療サービスに関する評価項目があり、新型感染症の流行下でのオフィスのあり方にヒントを与えてくれます。こうした評価に基づいた取り組みは、企業経営を考える上でも重要になるでしょう。

 オフィスに求められる要件は、社会状況とともに変化しており、そうした変化に企業が対応することは、知的生産性の向上やブランドイメージを守るためにも、大きな意味があると考えられます。そのためには、今回紹介した「WELL認証」や「CASBEE-ウェルネスオフィス」、「CASBEE-スマートウェルネスオフィス」といった認証評価の動向を追い、積極的に取り組むことが必要ではないでしょうか。

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