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えふ・マガインタビュー
  三浦雄一郎氏(プロスキーヤー、クラーク記念国際高等学校校長)三浦雄一郎氏が語る「夢を実現する『意志力』」



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写真 「あきらめなければ必ずできる。人間はいくつになっても、今の自分よりもレベルアップできます。」

三浦さんは、常にチャレンジを続けられていますが、その源泉となっているものはなんでしょう?

 それはやはり限界に挑むのが好きだし、面白いからです。夢中になれることがあれば、苦しいことがあっても乗り越えられるし、何度でもチャレンジできるんです。マラソンランナーが厳しいトレーニングに耐えて、42.195キロメートルを走り続けるのは、マラソンが好きだし、ゴールした時の達成感が大きいからでしょう。僕も同じです。冒険が好きだし、やり遂げた時の達成感が大きいから、苦しくてもチャレンジできます。
 それに人間にはもともと冒険の遺伝子があるのではないでしょうか。ほとんどの動物は自分のテリトリーの中だけで生きますね。しかし、人間は自分のテリトリーを越えて外の世界へと飛び出していく。危険が待ち受けていることを承知で冒険をしてきたからこそ、人類は進化を遂げてきたのだと思います。
 冒険心は本当は誰にでもあるはずです。特に若い頃は、みんなそういう気持ちを持っています。しかし、年齢とともに次第に冒険する気持ちが薄れて、安全な場所に身を置こうとします。挫折を経験すると、なおさら消極的になってしまいます。でも、挫折をしたら方向を変えればいいんです。僕は、スキーでオリンピック出場という夢が挫折しても、「それならスキーでまだ誰もやっていないことをやろう」と考えて、スピードレースで世界記録に挑戦したり、世界の最高峰の滑降に挑みました。トンネルの中で壁にぶつかった時には、方向を変えてみると必ず出口が見つかるはずです。

 
高齢化社会といわれる中で、年を重ねても前向きな気持ちでいるためには、どんなことが大切だとお考えですか?

 僕の周囲でも定年を過ぎると、いろいろなことをあきらめて、マイナス志向になってしまう人がいます。「俺はもうダメだよ」「もう年だから」「体がもたないから」といった様々な理由を探して、チャレンジをあきらめてしまいます。しかし、「絶対に成功するんだ」という強い意志を持てば、きっと夢がかなうはずです。
 今回の登頂であらためて感じたのは、「あきらめなければ必ずできる」ということです。人間はいくつになっても、今の自分よりもレベルアップできます。それは若い人も高齢者も同じです。今日より明日。明日よりあさって。そういう気持ちで努力すれば、必ず上へ行くことができます。ビジネスでも同じだと思います。たとえ今はレベルが低くても、人より遅れていても、気にすることはありません。今日からスタートして、一歩ずつレベルアップしていけばいいんです。

チャレンジし続けることは容易ではないと思うのですが、どうすればよろしいのでしょうか?

 大切なのは目標の立て方です。まずは自分に合った適切な目標を立てましょう。最初から大きな目標を立てる必要はありません。できることからやっていきましょう。一度も山に登ったことがない人が、いきなりエベレスト登頂を目指しても無意味です。僕だって、最初は500メートル級の山にも登れなかったところから、少しずつ目標を高くしていってエベレスト登頂まで到達したんですから。
 自分にできるレベルの中で限界ギリギリの目標を立てれば、気持ちも変わってくるし、そのためにどんな努力をすればいいかも見えてきます。富士山に登るのとエベレストに登るのとでは、それぞれにふさわしいトレーニングがあります。マラソンでも5時間かけて走るのと、2時間10分で走るのではトレーニング方法がまったく違います。ですから、まずは自分に合った適切な目標を立てることです。
 今回の挑戦を決意してから、僕も様々なトレーニングを行いました。基本は体に負荷をかけて歩くこと。実は、さっきも片足に3.5キロずつ、背中に20キロの負荷をかけて、新宿の街を2時間ほど歩いてきたところです。これはちょうどヒマラヤの5000メートル地点を歩くのと同じような感覚になります。本格的なトレーニングに入れば、さらに重量を増やします。片足7キロずつ、背中に30 キロを負って歩きます。さらに、時間を見つけて富士山などの山へ行って、山登りトレーニングも繰り返します。
 トレーニング中には、思うようにいかないこともあります。「こんなはずではなかった」ということの繰り返しです。それでも途中であきらめようとは絶対に思いませんでした。そういう時には一休みして仕切り直しします。すると、またチャレンジへの意欲が湧いてくるんです。
 僕は次の目標として、5年後に80歳で中国側からエベレストに登頂することを考えています。何度登っても、帰って1か月もすれば体は元に戻りますから、またゼロからトレーニングしなければいけません。それでも、ぜひ夢をかなえたいと思っています。目標や夢は宝物です。それを得るためには、リスクを冒してでもチャレンジしなければいけません。死ぬ気でやれば、たいていのことはできます。みなさんにも、ぜひ自分なりの目標を立てて、あきらめずにチャレンジしてもらいたいですね。

 
プロフィール
写真 1932年10月12日青森市に生まれる。1956年、北海道大学獣医学部卒業。1964年、スキーで速さを競うイタリア・キロメーターランセに日本人として初参加し、時速172.084キロの当時の世界新記録を樹立。1966年、富士山直滑降。1970年、エベレスト・サウスコル8,000m世界最高地点スキー滑降、その記録映画がアカデミー賞を受賞する。1985年、世界七大陸最高峰のスキー滑降を完全達成。2003年、エベレストに次男の豪太氏とともに登頂し、当時の世界最高年齢登頂記録(70歳7ヶ月)を樹立する。2008年5月26日、75歳にして2度目のエベレスト登頂を果たす。(株)ミウラ・ドルフィンズ代表取締役、(株)三浦雄一郎事務所代表取締役、(社)全国森林レクリエーション協会会長、NPO法人グローバル・スポーツアライアンス理事長、(財)こども教育支援財団副理事長。
主な著書は、『冒険家 75歳エベレスト挑戦記』(実業之日本社)、『三浦雄一郎の元気力』(小学館)、『高く遠い夢 70歳エベレスト登頂記』(双葉社)、『冒険から世界は広がる』(NTT出版)。『生きがい。』(共著/山と渓谷社)『人生のレールは一本ではない 悔いのない生き方をしよう』(共著/太陽企画出版)、 『三浦家の元気な食卓 驚くべきパワーの秘密』(共著/昭文社)、『三浦家のいきいき長生き健康法』(共著/広済堂出版)。
ミウラドルフィンズ ホームページ:
http://www.snowdolphins.com/

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