NTTファシリティーズ
Case StudyPROJECT事例
2019年7月9日

ミライト・テクノロジーズ
大阪第1データセンター

水防ライン上部に免震装置を配置

 「大阪第1データセンター」は,大阪市内における最大級の都市型データセンターです。交通アクセスの良い市中心部に位置する敷地を有効利用した計画で,最大限のサーバースペースを確保したほか,免震構造の採用,電力・通信の2ルート化など,利便性・安全性・信頼性の高い施設となっています。
 敷地が河川の近くに立地することから,計画では南海トラフ大地震の津波や河川氾濫などの災害リスクに対応する3mの水防ラインを設定しました。1階にエントランスやオペレーション機能,搬入スペースを配置し,水防ラインよりも上部の2階に特高受電室や中央監視設備などの重要機器を配置しました。また免震構造の採用では,1階柱の上部に免震装置を組み込む柱頭免震構造とすることで,水害から装置を保護しています。さらに1階をすべて2階から吊り下げる特徴的な構造とすることで,免震装置の下部に位置する1階に対しても免震効果が得られるように工夫しています。

運用のしやすさに配慮

 3 ~ 7階に計画したサーバー室は,コア部分や設備シャフトをコンパクトにまとめることで,最大2,500ラックが設置可能な大面積を確保しています。
 エネルギー消費量が年々増大し続けるデータセンターにとって,省エネルギー化は大きな課題の1つです。モジュールチラーによる水冷式空調を導入し,アイルキャッピングを用いる床吹き出し方式で高発熱に対応することで冷却効率を高めています。併せて冷却塔のフリークーリングによる間接外気冷房システムを採用し,冷涼な外気を利用することでさらなる省エネルギー化を図っています。
 データセンターは建物が完成した後,長期間にわたって段階的にサーバー等の機器が設置されていきます。機器類が搬入しやすいように,1階駐車場に面した搬入口から最短距離で荷物用エレベータにアクセスできる動線計画としました。この動線上では日常的に機器の搬出入が続きます。床は仕上材を貼らずコンクリートのままとし,壁には傷を防ぐプレートを設けることで養生材が不要な設計としています。
 通用口は正面の来館者用エントランスの反対側に設けました。これらの中央にオペレーションルームを配置し,部屋の両側にそれぞれの受付を設けることで,来館者動線と工事動線を明確に分離して安全性を高めると共に,オペレーションの効率化に配慮しました。

1階柱の上部に設置された免震装置。地震時は最大65cm動く。1階はエントランスホールやオペレーションルーム,プレゼンテーションルームのほか,ピロティに駐車場を計画。建物内の電力・通信ルートはそれぞれ2系統あり,1階部分はこれをコンクリートで囲うことで水害から守る

データセンターの流体エネルギーをデザインする

 エントランスホールで目を引くのが,ダイナミックに流れるようなアルミのルーバーによる天井仕上げです。データセンターはいわばエネルギーの塊です。大量の電力が消費され,膨大な通信が出入りし,サーバーを冷やす空気や水の流れがあります。それら流体をモチーフにして高揚感を演出し,動線を誘導するサインにもなるようルーバーを変則的に配置しました。データセンターを利用される人々にもエネルギーを与えることのできる建築でありたいと願っています。

エントランスホール。アルミのルーバーを流れるように配置した天井仕上げは,来館者に動線を示す。正面奥の乗用エレベータは必要に応じて搬入用にも利用することができるよう,エレベータホールの壁には養生用の縞鋼板を仕上材として床から天井まで貼り詰めた
外装は耐久性と止水性,コストバランスを考慮して押出成形セメント板とした。写真中央で黒く立ちあがるエリアは設備シャフトのほか,階段室や水回りなどのコア部分で構成。これらをコンパクトにまとめ,サーバースペースを最大限確保した。最上階は停電時に48時間以上の連続運転が可能な非常用発電機室。燃料の油タンクは1階駐車場下に埋設した

所在地大阪府大阪市
施主株式会社ミライト・テクノロジーズ
設計・監理NTTファシリティーズ
敷地面積2,962.11㎡
建築面積2,066.85㎡
延床面積16,597.30㎡
構造・規模S造,一部RC造,柱頭免震構造/地上8階,搭屋2階
工期2017.1~2018.5


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