NTTファシリティーズ
Case StudyPROJECT事例
2019年11月14日

百年記念会館

大屋根の下に集う建築

 「百年記念会館」は,通貨処理機事業の先駆者であるグローリー株式会社の研修施設です。既存施設の老朽化に伴い,NTTファシリティーズの設計・監理により本社地区近くの敷地に建て替えられました。
 100年記念事業の一環としてグローリーの企業理念を具現化したこの会館で目を引くのは,2層の建物をすっぽりと覆う大屋根です。同社の企業理念「求める心とみんなの力」を育むことを意図した建築で,一つ屋根の下,人々が集まる光景をイメージしました。2段の屋根勾配を持つ「錣(しころ)屋根」は,ハイサイドライトから光や風を取り入れつつ,深い軒で四方から人を迎え入れます。

北面アプローチ側の外観。焼杉とガルバリウム鋼板で仕上げた多様なボリュームが集積する。軒を4mほど張り出すことで外装を守り,メンテナンスに配慮した

2階の「陽だまりリビング」。入れ子状の家形をした写真中央の研修室は,建物外壁に対して斜めに配置した。室内に2つの軸線を設けることで空間に広がりと奥行き感を与え,人が溜まることのできるオープンスペースを創出した

鬢??山のすそ野に位置する百年記念会館は,自然環境を生かしつつも景観に馴染む建築とした

室内の2つの軸線で多様なスペースを創出

 大屋根に包まれた大きなワンルーム構成の室内は,非日常的な場が展開します。建物に魅力を持たせるうえでカギとなったのが,入れ子状をした家形の研修室の配置です。外壁に対して斜めに角度を振ることで室内に2つの軸を設け,空間に広がりと奥行き感を与えています。
 例えば,エントランスに立つと斜めの軸線に沿って視線が奥まで抜けていきます。また,ずれた軸線が室内空間にメリハリ与え,人が溜まることができるオープンスペースを創出しています。さらにそれらのオープンスペースを吹抜けや大階段でつないでいくことで室内の回遊性を高め,建物利用者の出会いを誘発させることを意図しました。
 研修や各種催し以外にも仕事の後に気軽に立ち寄るなど,多様な機会に利用されることで,多くの気づきや予期せぬ出会いが生まれることを願っています。

オープンスペースと縦動線の配置により回遊性を高めている。ハイサイドライトは外光を取り入れると共に中間期は自然換気の役割を担う。大階段壁側手摺り上部はグローリー過去100年の写真を集めたギャラリー

左のガラス張りの研修室に対して右の研修室と階段を斜めに配置することでオープンスペースを確保,階段下にはライブラリを設け居心地のよい場を創出している

数字と記号をサインに生かす

 研修室,吹抜けや大階段の手摺りはガラスを用いたオープンなつくりとした。ガラス面には数字がモチーフのグラフィックシートを貼ることで,視線を適度に和らげている。ガラス面に表れる数字や隠れシンボルマークは,通貨処理機事業の先駆者としての原点を振り返り,気づきを促す設えの一つ。また研修室の室名表記は文字ではなく数字と記号でデザインすることで,使い方を規定しない幅広い利用を促している

大屋根は四方から人を迎え入れることをイメージした深い軒を持つ。本社生産地区の近くに立地し,新しい学びのシンボルとして計画された施設は2階建てだが,鬢山(びんぐしやま)のすそ野に広がる敷地は南北方向に約6mの高低差があり,山側からは平屋に見える

所在地兵庫県姫路市下手野1-83-30
施主グローリー株式会社
設計・監理NTTファシリティーズ
敷地面積11,854.48㎡
建築面積1,459.06㎡
延床面積1,864.44㎡
構造・規模S造,地上2階
工期2018.1~2018.11


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