NTTファシリティーズ
Case StudyPROJECT事例
2021年8月6日

陸前高田市庁舎

 2011年3月の東日本大震災により,岩手県陸前高田市は街全体が壊滅的な被害を受けました。NTTファシリティーズは,陸前高田市エリアの通信サービスの拠点であるNTT陸前高田ビルが大きな被害が受けたことから,被災直後から現地に入り込み,NTTグループ各社と連携し通信サービスの早期復旧に取り組んできました。
 このような状況の中,陸前高田市とは震災前から公共施設の整備提案を行っていたこともあり,復興に向けた取り組みを積極的にすすめてきました。市民生活の向上,地域産業の再生につながる中核的公共施設の整備計画を策定,市民が安心・安全に暮らすための信頼性の高い防災拠点として陸前高田市消防防災センター等,公共施設の設計に携わり,また,失われた高田松原海岸の植樹やツール・ド・三陸などの復興イベントにも参加するなど,様々な形で街づくりに取り組んできたところです。
 今回紹介する陸前高田市庁舎は,震災後10年の節目,復興の総仕上げとして建設されたもので,これからの「街づくりの拠点」になるものです。

7階南側の展望ロビー「一本松記念館」。復興が進む市街地のほか「奇跡の一本松」が立つ高田松原と海が一望できる。展示棚やベンチは気仙大工の伝統技術である亀甲格子の欄間(上の写真)をデザインのモチーフに採り入れた。亀甲格子棚は展示物への日射抑制の役目も担う

新庁舎は震災以前よりも内陸寄りで地盤面は周囲より5mかさ上げ。中心市街地で進む区画整理事業と並行する形で新庁舎が建設された

新庁舎は震災以前よりも内陸寄りで地盤面は周囲より5mかさ上げ。
中心市街地で進む区画整理事業と並行する形で新庁舎が建設された

「災害に強い庁舎」がコンセプトのBCP計画。災害時にも10日間程度行政機能が継続できる

「災害に強い庁舎」がコンセプトのBCP計画。災害時にも10日間程度行政機能が継続できる

街づくりの拠点となる「災害に強い庁舎」

陸前高田市庁舎は10年という時を経て生まれ変わりました。旧高田小学校跡地を利用した敷地は,震災以前の庁舎よりも内陸寄りで,地盤面は周囲より5mかさ上げされています。
 地上7階建ての新庁舎は,「災害に強い庁舎」をコンセプトに免震構造を採用し,上層階に非常用発電機や電算室,大会議室,備蓄倉庫を配置することで,災害時にも10日間程度,行政機能が継続できる計画としています。
 また陸前高田市は「ノーマライゼーションという言葉のいらない街づくり」を掲げており,新庁舎はその理念を具現化した施設として,車椅子でも利用できるローカウンター,視覚障がい者の誘導設備や「読める点字」を導入するなど,障がい者や高齢者など誰もが利用しやすい施設を目指しました。

気仙大工の伝統技術を継承する

 陸前高田市は,日本四大名工とされる優れた建築技術を誇る職人集団「気仙大工」発祥の地です。外観は気仙大工の伝統的意匠を踏襲した化粧羽目板や船がい垂木を用い,木柱ルーバーは伝統的な地元の祭り「うごく七夕」の山車の御簾(みす)のイメージを採り入れています。市民に開放する7階展望ロビーの展示棚は,気仙大工の伝統技術である亀甲格子の欄間をデザインのモチーフに採り入れ陸前高田市らしさを演出しています。
 地元の木を使用した内外装は,グラデーションによる多様性を表し,伝統技術を形として継承させていくためにガラス含浸塗装により耐久性を高めています。

市庁舎越しに復興した街並みを見る。
ファサードの木柱ルーバーは陸前高田の伝統的な夏祭り「うごく七夕」の山車の御簾(みす)をイメージしてデザインした。
自然エネルギーの活用や省エネルギーにも配慮した計画としてガラスのファサードやトップライトから積極的に自然光を採り入れ,各階に設けたバルコニーや木柱ルーバーが室内への直射日光を制御して熱負荷を抑えるようにした

所在地岩手県陸前高田市高田町字下和野1番地
施主陸前高田市
設計・監理NTTファシリティーズ
敷地面積12,976.2㎡
建築面積1,862.03㎡
延床面積6,904.23㎡(容積対象面積6,278.67㎡)
構造・規模RC造(免震構造),地上7階(法定8階)
工期2019.2~2021.3


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