NTTファシリティーズ
Case StudyPROJECT事例
2024年3月27日

トップアスリートへのヒヤリングに基づく設計とNTTグループのトータルソリューションによる貢献
― スポーツランドみやざき ―

2023年4月、宮崎県宮崎市の一ッ葉リゾート地区内にあるシーガイアオーシャンドーム跡地に、県内における屋外型スポーツ(ラグビー、サッカー、陸上競技、トライアスロン等)の競技力向上、またスポーツ振興を目的とした、国内外のトップアスリートも活用可能な合宿施設を備えた屋外型トレーニングセンターが整備されました。

本記事では弊社類似施設で培った経験と実績、トップアスリートへのヒアリング、NTTグループ連携によってアスリートファーストの施設を実現し、お客様事業へ貢献した取り組みをご紹介します。

スポーツランドみやざきと屋外型トレーニングセンター

宮崎県屋外型トレーニングセンター(以下、本施設)は宮崎県の掲げる「スポーツランドみやざき*1」推進のため、スポーツ合宿拠点となるグラウンド・室内練習場・クラブハウス等を構築しました。

「スポーツランドみやざき」の核としてプロアスリートや日本代表等のトップアスリートのチーム集積によるブランド力向上を図り、スポーツキャンプ・合宿の全県化、通年化、多種目化を通じて宮崎県全体の観光振興を図るとともに、県内アスリートの利用促進とトップアスリートとの交流による競技力向上に寄与する施設です。

上空から望む屋外型トレーニングセンター

ラグビー日本代表合宿誘致をめざしたチーム一丸でのプロジェクト推進

2021年冬に実施されたプロポーザルでは、オープン時点で、日本代表等の合宿利用が可能なように2022年度内での設計から竣工が必達でした。短期間での設計施工を実現するためデザインビルドで発注となり、代表企業である地元の建築施工の吉原建設、フィールド施工実績の豊富なスポーツテクノ和広、そしてNTTファシリティーズの3社で共同企業体を構成し取り組みました。類似案件の実績やアスリート目線での施設構成、短期間でグラウンド整備と施設構築を実現する設計施工スケジュール等が評価され選定されました。その後、CM(コンストラクションマネジメント)会社としてプラスPM(ピーエム)が加わり、発注者の宮崎県スポーツランド推進室の皆様と共にチーム一丸でのプロジェクトがスタートしました。

2023年4月の運用開始に向けて芝生の養生、活着期間を確保するために2022年秋前までの約半年間で芝生を構築しました。その後の施設・外構整備までをスピード感を持って実施するプロジェクト推進のため、リモート会議により宮崎、福岡、大阪、東京という地理的距離を越えてチームが連携し、現場進捗に応じた課題抽出、提案、意思決定を円滑に行うことで2023年3月の竣工が実現しました。

連続するグラウンドとクラブハウス。間には日除空間として木造開放廊下(木廊)を構築

アスリートファーストの施設

設計は「競技・練習時間の最大化」と「利用者に応じた可変性」をコンセプトとしています。様々な利用者目線での要望に応えるためラグビー、サッカー、陸上競技の関係者に事前にヒアリングを実施し、トップアスリートの要望を計画に盛り込むことで、トップアスリートからアマチュアまで幅広い世代・プレースタイルに応えられるアスリートファーストの施設として計画しています。

施設配置はグラウンド、クラブハウス、室内練習場等の中心施設を相互に近接配置することで、分刻みで活動するトップアスリートのスケジュールへ対応し、移動時間を極力抑えたトレーニング効率の最大化を図る計画としています。クラブハウス内は2チーム利用や男女利用も想定し、ミーティングルーム、ロッカールーム、水廻りを中央で2分割しアプローチを含め双方独立して利用可能です。主要室はスパイクのままで利用できる床材とし、ミーティングルーム、トイレ等は直接外部から出入も可能な計画としています。また、プレーの合間や休憩時に活用できる開放廊下(木廊)をグラウンドとクラブハウスの間に設け、プレーとリカバリーが即座に切替え可能なトレーニング環境の実現をめざしました。

施設構成と相互動線

国際水準のグラウンド構築

グラウンドは天然芝のサッカー・ラグビー場及びハイブリッド芝の多目的グラウンドを、競技時の太陽光の影響を考慮し南北軸を長辺として2面並列配置しています。多目的グラウンド周囲には400m陸上トラックと100m直線走路を備え、隣接するエリアには500mのクロスカントリーコースを配しています。

サッカー・ラグビー場では、ラグビーワールドカップ等で使用される国際試合規格の天然芝グラウンドを採用するとともに、スクラム練習エリアではコルク等を含む人工繊維を混合したハイブリッド化によりクッション性を高めています。また、400m陸上トラックを備える多目的グラウンドでは人工繊維を埋め込んだハイブリッド芝を採用しました。芝生は育成・養生・散水・排水・除草など専門的で高度な維持管理技術により国内外の代表やトップアスリートの受入れが可能な国際水準の競技環境として整えており、世界大会と同じ品質・環境でプレーできることが本施設の最大の魅力でもあります。

プロアスリートへのヒアリングによる品質向上

NTTファシリティーズ社内の女子ラグビー選手や、NTTグループに関連するラグビー、サッカー、陸上の各チームの関係者から事前にヒアリングを行い、トップアスリートの要望にも応えた施設として設計しています。前述の施設の近接配置や床仕上の配慮とともに、施設の各部位は体格の良い選手も想定した寸法設定とし、クラブハウスのミーティングルームではフォーメーション等の書き込み・マグネット貼付、プロジェクター投影が同時に可能なホワイトボード壁面を設置しています。

選手が複数のスパイクを履き替えることも想定し、履き替えスペース、スパイク掛けの数、泥落とし用エアコンプレッサーと足洗場の整備等、実際の利用者(プロプレーヤー)目線の意見を活かしながら設計を行いました。

スパイクのまま利用可能な床仕上(クラブハウス内観)

クラブハウスのトレーニングエリアからグラウンドに直接出入りも可能

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みと美しい周辺景観への配慮

宮崎県は日本有数の木材の産地で東京オリンピックの会場にも多くの宮崎県産材が活用されました。本施設では、東京オリンピックの閉幕後に宮崎県へ返却された木材(レガシー材*2)と宮崎県産材を活用したサスティナブルな試みを行いました。レガシー材は一度JAS認定材*3として流通した木材であるため、プレカットメーカーと共に、既存の部材断面や長さ寸法、仕口加工の状況等を確認するとともに、独自に評価項目を設けて再利用可能な木材かを鑑みながら、部材毎に木廊、木柵、室内練習場開口部、トイレ外装ルーバー、ベンチ、スパイク掛け等に適材適所で使用しています。また、クラブハウス等はエネルギー消費量を55%削減した、ZEB Ready*4相当(BEIは達成しBELS認証は未取得)の建築物であり、カーボンニュートラル実現の観点からも宮崎県政の取り組みに配慮した計画としています。また、本施設は海岸線に沿い保全・整備された重点景観形成地区内の美しく豊かな森林・空・海と呼応するように、水平線を基調とし、建物の高さを抑え、色彩は白をベースとしたナチュラルな意匠としました。青々とした芝生が訪れる人々を出迎え、宮崎の温暖な気候風土と美しい森林に囲まれた環境も施設の大きな魅力となっています。

室内練習場のサッシ取付下地はレガシー材・宮崎県産材を活用し、室内側に仕上として木材が露出している

施設へのアプローチ動線に沿うようにレガシー材・宮崎県産材を活用した木柵を設置

NTTグループ一丸でのスポーツ×まちづくりソリューション

本施設ではNTTグループで連携し、先進的なスポーツ映像ソリューション(AIカメラソリューション)をプロポーザルの段階から提案し、サッカー・ラグビー場にAIカメラを導入しています。同ソリューションは自動追尾・自動撮影された競技映像が自動でコンテンツ化され、ネット配信も可能であり、競技状況や施設環境を全世界に向けて発信も可能となっています。

スポーツによる街づくりの核となる施設をめざして

運用開始後、本施設は高い利用率で稼働しており、2023年7月から8月にかけてラグビー日本代表のW杯事前合宿が行われ、Jリーグやジャパンラグビーリーグワン、実業団陸上部の合宿等も実施されています。また、地元の学生や社会人など一般の県民からも幅広く利用されています。

NTTグループ連携による高品質なグラウンドとアスリートファーストの理念に基づき整備された施設が、スポーツによる地域振興の核となり、常に国際水準に位置するスポーツの聖地として、ブランド力向上、観光振興、競技力発展に貢献し、宮崎県の重要施策である「スポーツランドみやざき」の更なる推進の一躍を担うことを期待しています。

一ツ葉リゾート地区内の中心に整備された宮崎県屋外型トレーニングセンター

*1 スポーツランドみやざき:宮崎県の重要施策としてのスローガン。プロスポーツ受入環境の充実とスポーツを通じて、地域経済の活性を推進している

*2 レガシー材:東京オリンピックで施設整備のため全国から供給され、オリンピック閉幕後に供給元自治体に返却された木材の総称。再利用を行うことで環境負荷低減と持続可能性の実現に貢献する

*3 JAS認定材: 製品の寸法精度・材面の品質、含水率、強度の等級区分等の性能等について日本農林規格に適合した木材

*4 ZEB Ready :国が定めた基準となるエネルギー消費量から、50%以上のエネルギー消費量を削減した建築物。太陽光発電などの再生可能エネルギーは考慮しない

プロフィール
  • 伊藤 裕也
    NTTファシリティーズ
    西日本事業本部九州支店 ファシリティソリューション部 エンジニアリング部門
    主査

    伊藤 裕也(いとう ゆうや)
    2008年NTTファシリティーズ入社。入社時より一般企業の生産施設、宿泊研修施設、医療福祉施設等の新増築を担当し、その後、教育施設、オフィスビルなどの設計を中心に従事。現在はオフィスビル、再開発 プロジェクト等まちづくり案件の設計を手掛けている。
  • 伊藤 翔治
    NTTファシリティーズ
    西日本事業本部九州支店 ファシリティソリューション部 エンジニアリング部門
    建築設計担当

    伊藤 翔治(いとう しょうじ)
    2019年NTTファシリティーズ入社。入社時より通信建物改修や一般企業のオフィスビル新築の設計、監理等を中心に従事。現在はオフィスビル新築の設計、NTTグループの改修設計などを手掛けている。
  • 長浜 愛美
    NTTファシリティーズ
    西日本事業本部九州支店 ファシリティソリューション部 エンジニアリング部門
    建築設計担当

    長浜 愛美(ながはま あみ)
    2021年NTTファシリティーズ入社。入社時より通信建物改修の設計を中心に従事。現在はNTTグループの改修設計などを手掛けている。

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