城南信用金庫では近年、施設管理の効率化や遊休不動産の有効活用が課題となっていた。そこで、管財部を中心に金庫一丸となって土地や建物、設備を戦略的に管理・運用する「ファシリティマネジメント※1」の取り組みをスタートさせた。成果や今後の展望などについて、プロジェクトを牽引した城南信用金庫管財部上席調査役の大海吉晴氏と管財部元副部長で城南不動産サービス業務部長の谷暢之氏に話を聞いた。
城南信用金庫管財部上席調査役の大海吉晴氏と城南不動産サービス業務部長の谷暢之氏
3つの大きな課題
「管財部では本支店合わせ約90カ所の施設を管理していますが、その中で大きく3つの課題を抱えていました」と大海氏は言う。
1つ目は施設の老朽化である。施設の平均築年数は40年を超え、今後、管財部のリソースを上回る建て替えの発生が懸念されていた。
2つ目は膨大な修繕工事対応だ。対応件数は年間で約1000件に上る。また、支店からの問い合わせや修繕要望などが1日20件ほど入り、職員が電話対応に追われる状況だった。
そして、3つ目が業務の属人化だ。ベテラン職員が「築20年の支店は屋上防水工事が必要だ」など自らの頭の中で修繕計画を立てていた。ベテラン職員が異動で管財部を離れたら業務に支障をきたす。「属人化のリスクを部全体で共有しました」と谷氏は振り返る。
これら3つの課題を解決したい―。同金庫が着目したのがファシリティマネジメントだった。
管財部の負担が大幅軽減
第一歩として、公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)の研修を受講するとともに、認定ファシリティマネジャー(CFMJ)の資格も取得した。同時に、横浜銀行との取り組みで日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)を受賞しており、多くのJFMA賞の受賞実績を持つNTTファシリティーズに協力を依頼。同金庫でのファシリティマネジメント導入に向けた取り組みがスタートした。
「必要なサービスを高いクオリティとコストメリットを両立した形で提供いただくため同社と何度も協議を重ねました」と谷氏は言う。当初は、施設管理への責任感から「アウトソーシングではなく、自分たちの手で管理すべきでは」といった指摘もあった。そこで、管財部内で打ち合わせを重ね、稟議のためのプレゼンテーションの完成度を高めていった。
例えば、コストメリットについては数字を示して説明した。同社に既存の工事見積の査定を依頼したところ、約13・4%のコスト削減が実現できる可能性があると判明したのだ。そうして、「総額でどの程度のコストを削減できるのか、具体的に示すことができました」と大海氏。
これまで、同金庫では見積額が1000万円に満たない工事については査定にかかる費用負担も考慮して専門機関による見積査定は行っていなかった。しかし、アウトソーシングすることで1000万円以下の工事についても見積査定が可能となった。「試算した結果、同社へのアウトソーシング費用は工事費の適正化による削減分で賄えると判明しました。さらに、支店の修繕対応にかかる業務負担も軽減されるのです」と谷氏。こうして同金庫はファシリティマネジメントの推進を決定し、一丸となって新たな施設管理の仕組みをスタートさせた。
未来に向けた仕事に注力
現在、同金庫では管財部と支店が一体となった施設管理のDX化が進んでいる。支店の修繕依頼から完了までを専用WEBシステム(CMナビ)※2で管理する体制を整えたのだ。例えば、ある支店で施設の不具合があった場合、担当者がシステムに状況を入力し管財部へ報告する。すると、情報が各種工事事業者、NTTファシリティーズにも共有される。その中で100万円以下の小規模工事については同社が事業者の手配から発注、契約、完了確認までを同金庫の代理として実施する。100万円以上の中・大規模工事については同金庫の決裁を経る流れになった。また、「システムを見れば、どの支店でどのような不具合が起きているか、工事の進捗など、全施設の状況をリアルタイムで把握できます」と谷氏は言う。
築20年以上の施設については建物診断も実施した。大海氏は、「建物診断により施設の状態が数値で見える化できたのは成果です」と話す。診断結果に基づき、推奨される修繕工事を組み込んだ5年間の中期整備計画や20年間の長期整備計画も作成した。「この建物診断と整備計画により業務の属人化が解消され、誰もが施設の状況を把握し、中長期的な視点で予算を立案できる環境が整ったのです」と大海氏。
管財部の業務内容も変わった。電話対応に追われていた状況から、支店の新築プロジェクトや地域のための施設の有効活用など、「組織の未来に向けた仕事」に注力できるようになった。同時に、ベテラン職員のノウハウを若い世代へ引き継ぐための人材育成の時間もとれるようになった。
今後は建物診断の結果や図面などのデータを専用WEBシステムに統合し、全施設のあらゆる情報が把握できる状態を目指す。最後に大海氏は「当金庫の取り組みが、同じ課題を抱える全国の信用金庫の一助になれば嬉しいですね」と語ってくれた。
*1 ファシリティマネジメント:企業や団体が保有する建物、土地、設備などの固定資産を、経営的な視点から総合的かつ戦略的に企画、管理、活用する経営活動。施設の維持管理だけでなく、事業の将来性や働く環境を含め、全体最適を目指す点が特徴。
*1 専用WEBシステム(CMナビ):営繕工事(修繕・改修)における依頼・受付から完了を一元的にマネジメントするNTTファシリティーズが提供するシステム。
ニッキン 2026年4月17日号 より転載 取材・編集 日本金融通信社
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