NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル
2019年1月31日

NTTファシリティーズの「温故知新」
~新たな未来を切り開くProduct & Serviceの礎~

持続可能な社会への貢献

 「昨日の夢は,今日の希望,明日の現実」とは,米国のロケットエンジニアであるロバート・H・ゴダードの言葉です。しかし,革新的な技術の成果だけが夢の実現ではありません。「こうなればいいな」というささやかな人々の思いを具現化することも夢の実現です。そしてそれを積み重ねることで社会は大きく発展していきます。
 NTTファシリティーズは,NTTからの分社という形で1992年12月に発足して以来,様々な時代の変革に対し「今以上」を求めて創造的に,ひたむきに意欲あふれる活動を続けてきました。初代社長田中順三は「NTTからの受託業務を事業基盤としながら,地域・ビル・オフィス環境の分野とこれらに対応した電力・熱エネルギーの分野および通信・情報の分野における設計・建設・保全・運営管理をカバーする総合技術力で高度情報化の進展する社会に貢献することにより積極的に業容を拡大しNTTグループ総体の成長・発展に努めることも重要な役割であります」と発足にあたって語っていました。
 現在は「“Smart & Safety”で持続可能な社会の実現に貢献し続ける」を企業ビジョンに掲げ,「脱炭素」「スマートビルディング」「ファシリティマネジメント」「データセンター」の4つの事業領域に注力しつつ,人々の思いを具現化しています。
 このような当社の起源は,1885年に発足した逓信省にまで遡ります。

1996年に竣工した大規模複合施設 東京オペラシティ。新国立劇場と一体となり,芸術文化施設,商業アメニティ施設,業務施設の3つの機能を有機的に関連させた都市空間の創出を目指している。多様な機能一体となることでにぎわいと文化の香り豊かな「劇場都市」が誕生した
2000年に竣工したNTTドコモ代々木ビル。移動通信のインフラとして高レベルの信頼性と機能性を兼ね備えながら都市部におけるランドマークともなり,通信センタービルの新しい形態が実現された

130年以上にわたる技術・ノウハウの蓄積

 逓信省(1885~1949年)による1890年の電話交換サービス開始以来,通信用建物・設備,通信用電源などの設計・維持管理に関する技術は近代国家の基盤となりました。戦後は,戦災で壊滅した通信施設の復興と整備が急がれる中,日本電信電話公社(電電公社)が1952年に発足し,国民の電話に対する需要を満たすために,電信電話拡充5カ年計画を6次にわたって実施し,技術革新と通信施設の大量建設を進めました。
 その過程において当社の先達が通信用建物や鉄塔などの大量建設にあたり,業務効率と技術水準の維持・向上のために,多くの指針や標準設計を制定してきました。また,通信用電源については,経済的で安定した電力供給を実現するために,不統一であった電電公社の電源機器の規格化・標準化を図ると共に,新しい供給方式の導入や装置の開発を進め,通信用電源の基礎を築きました。
 こうした諸施策の積み重ねは,その後の情報通信の発展に大きく寄与し,現在の当社事業の礎ともなっています。
 電電公社からNTTの時代を経て現在まで,当社は「通信を止めない」という最大の使命を全うすると共に,通信事業の発展に貢献するべく常に最先端技術に着目し,社会に先駆けた様々な取り組みを展開してきました。

1981年に通信機械室用の空調機として開発されたMACS。通信装置の発熱に合わせて室内に分散設置が可能で,逐次増設が行えるパッケージ型空調機として通信用建物等に設置され,FMACSシリーズの原型機となった

2005年から導入された,データセンター用床置型空調機FMACS-V。耐震性や電磁波漏洩防止性能に優れ,高い省エネルギー性能を誇る。ライフサイクルコストおよび環境性を重視した設計となっている

1971年に導入された2次元振動台。1968年に発生した十勝沖地震を契機に,通信装置等の耐震安全性の検証,耐震工法の開発のため導入された

2010年より稼働している3次元振動台DUAL FORCE。長周期地震動による超高層ビルや免震ビルの床上における揺れと,輸送振動のような短周期振動の再現機能を併せ持つ

50年以上も前に事業導入を開始した太陽光発電

 太陽光発電は,今や再生可能エネルギーの代名詞にもなっていますが,当社が公衆電話の自立電源として初めて導入した1962年は,まだ太陽電池開発の黎明期でした。以後,通信用の自立電源として本格的な導入を進めていた中,1997年12月のCOP3(地球温暖化防止京都会議)で京都議定書が採択され,地球環境保護の重要性が世界的に叫ばれるようになってきました。NTTグループとしても,省エネルギー対策の積極的な展開と共にクリーンエネルギーへの取り組みを強化することとなり,当社が太陽光発電の普及促進を担うことになりました。
 2005年の愛・地球博において,NEDO事業として行われた「新エネルギー等地域集中実証研究事業」や,同じくNEDO事業である2006年の「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化実証研究」への参画を機に,大規模太陽光発電施設の構築・運用を手掛けSIer(システムインテグレーター)として全国に1,426カ所,約887MW*の実績を積み上げてきました。この実績から得られた知見を生かし,脱炭素社会を実現するための活動を続けています

  • *発電事業およびシステムインテグレーター事業の実績の合計
2006〜2010年に行われたNEDO「⼤規模電⼒供給⽤太陽光発電系統安定化等実証研究」。山梨県北杜市・産業技術総合研究所・東京工業大学・⽇⽴製作所・NTTファシリティーズが連携し,北杜市に約2MWの⼤規模太陽光発電所を構築。27種類の太陽電池の発電特性評価⽐較,国内初となる66kV特別⾼圧系統への連系運⽤,環境性に優れた架台の開発,当時世界初となる複数の系統安定化機能を具備するPCSの開発など,⽇本におけるメガソーラーのデファクトスタンダードの開発を行った

未来を見据えた先進的なオフィス環境の提案

 6次にわたって実施された電信電話拡充5カ年計画により,電電公社発足時の悲願であった2大目標「積滞解消(申し込んだら,すぐつく電話)」と「全国自動即時化(かけたら,すぐつながる電話)」が1970年代後半に達成されると,電電公社は情報通信事業の大きな転換の方向性を明らかにし,世界に先駆けて高度情報通信システム(INS)の構築に取り組むことになりました。その際,INSの早期構築には1984年に米国で登場したばかりのインテリジェントビル(IB)の普及が不可欠であるとし,「日本におけるIBとは何か」について深く議論されました。そして「知的創造にふさわしい快適な環境を兼ね備えたビル」というコンセプトが掲げられ,1986年にNTT品川TWINSとして具現化しました。まだワープロの漢字変換に驚き,Appleのコンピューターがモノクロのブラウン管ディスプレイだった頃,コンピューターこそが仕事を変えるといわれ始めたこの時期に,情報通信の未来を見据えながらもハードウェアの追求だけでなく,自然光あふれる空間をつくるなど,そこで働く人にとって心地よい環境となるように工夫を凝らしていました。この思想は,情報通信技術(ICT)が急速に進化している現在においても,快適で健康的な環境を働く人に提供する,先進性と環境性能を兼ね備えたスマートビルとして受け継がれています。

1986年に竣工したNTT品川TWINSは,日本における本格的なインテリジェントビルの第1号として評価され,テレコミュニケーションシステム,オフィスオートメーションシステム,ビルディングオートメーションシステム,環境プランニング,建築システムの5つのシステムを統合した「知的創造にふさわしい快適な環境を兼ね備えたビル」として情報通信時代の始まりを象徴していた

通信用建物からデータセンターへ

 1990年代後半になると,インターネットの急速な普及に伴ってICTを活用したビジネスが急拡大し始めます。その結果,社会やビジネスがICTを中心に展開され,サーバーやルーターなどの情報通信装置の必要数が大きく増加することとなり,自前の施設での情報通信装置の保有が次第に困難になりました。情報通信装置の設置環境を提供するデータセンターという概念は,この頃大きく脚光を浴びることになります。当社が「データセンター環境構築本部」という専担組織を設置したのもこの頃です。ビジネスの中枢機能が集中することになったデータセンターは,社会の新たなインフラとなったわけですが,それと同じようにインフラとして社会を支え続けてきた建物があります。NTTの通信用建物です。そもそも通信装置を収容する建物という意味において,日本で最初のデータセンターは千代田区丸の内に1890(明治23)年に建設された,逓信省の通信用建物ともいわれています。
 当社は前身の逓信省・電電公社の時代から,通信用建物の設計,構築,保守を生業としてきました。停電発生時にも稼働可能な電力設備設計,巨大地震にも耐える構造設計,設備故障発生時の駆付け対応,無停電での設備更改。その全てがデータセンターにつながる技術です。データセンターが国内で本格的に広まり始めた2000年代よりも遥か以前から「止めない」「つなぎ続ける」ことを使命とし,DNAに刻んできた技術。その技術は,今日のICTを支えるデータセンターでも生き続けています。

国内初のデータセンター総合検証ラボとして2001年に開設されたiDCシステムラボ。当時としては国内最大級となるデータセンターの総合検証施設。実環境下における電源,空調,電磁妨害,セキュリティなどに関するデータの測定と検証が可能であり,iDCに関する様々な技術的問題点の解決を図った
1989年に導入された,電力保守総合管理システム(ALICE)。保守業務の効率化促進のため,1982年に24時間遠隔監視可能な電力遠隔集中監視システム(PECSS)が開発・導入された。その後継であるALICEは,監視システムの機能に加え,警報監視・計測,試験・制御,予防保全機能等を備えた,電力保守業務を総合的に管理できるシステムとして開発された。様々な改良が加えられながら運用され,2006年に設備運用統合管理システム(MaRIA)に統合された

災害対策まで含めてICT社会を支える総合力

 地震や台風などの災害が多い日本では,安全性・信頼性を確保することが重要です。当社では常に新たな被災事例を教訓として,対策と検討を繰り返しています。特に1995年1月に発生した阪神・淡路大震災や,2011年3月の東日本大震災からの教訓を今後の災害対策に反映させることを使命として取り組みを続けています。
 企業の経営課題が多様化し未来予測も困難になる中,働き方改革に象徴されるように,企業だけでなく個人でさえも常に変革と直面せざるを得ない状況となり,当社が培ってきた総合力をいかんなく発揮できる時代が到来しています。「今以上」を求めて創造的に,ひたむきに意欲あふれる活動を続けてきた当社の動きに,時代がようやく追い付いてきたといえるかもしれません。
 NTTファシリティーズは,優れた伝統を引き継ぎ,社会と共に成長する企業として,未来に向けた新たな歩みを始めています。

2012年9月より運用を開始したファシリティーズオペレーションセンタ(FOC)。1982年より始まった遠隔監視は,県域単位,地域ブロック単位,東日本と西日本の2拠点と,監視体制の集約を重ね,2012年に全国を1拠点で監視する体制となった。FOCは全国180カ所のサービスセンタとの連携のもと,24時間365日体制で監視・保守サービスを行っている。現場から得られる監視・点検・設備データなどの情報を分析し,設備マネジメントサイクルと連携した更改・改善提案につなげていくという,ファシリティマネジメントのプロフェッショナルである当社ならではの取り組みも実施している

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