1.通信機械室の特徴
近年,通信ネットワークのデータ流通量の増加は目覚ましく,通信インフラの重要性は一層高まっています。この高速・広帯域なネットワークを支えるため,通信装置は高密度化し,高発熱化が進行しています。
通信装置は適切に冷却しなければ,装置動作温度範囲を逸脱し,強制停止や故障の発生により,通信ネットワークに重大な影響を与えます。そのため通信装置を設置する通信機械室は,空調設備により適切に冷却できるよう気流をコントロールする必要があります。通信装置をただ冷却するだけであれば,通信装置どうしの距離を取り,多数の空調機を設置すればよいのかもしれません。しかし限られた大きさの通信機械室で,通信装置の発熱量を大幅に上回る能力の空調装置を設置し運用することは,省エネルギーとライフサイクルコストの面からも好ましくありません。一方でスペース効率を優先し,高発熱な通信装置を密集して設置した場合には,特定の箇所に発熱が集中し,熱だまりが発生して通信装置の運用に支障が生じます。
そのため通信装置を適切に冷却できる環境の構築には,通信装置の適正な冷却とスペース効率,双方の条件を満たすことが大切です。
通信機械室と類似の施設にデータセンター文献1)があります。データセンターにおいても,発熱源であるサーバーなどのICT装置は飛躍的な性能向上に伴う高発熱化が著しく,正常な動作のためには一定の温度に冷却することが常に求められます。ただし,一般的にデータセンターは冷却に関する仕様があらかじめ定められており,これに則って構築・運用がなされています。他方,通信機械室は導入された時代によって様々な通信装置
が併存し,発熱量という観点でみても低発熱の装置と高発熱の装置が同じ空間に並んでいることが珍しくありません。すべてを旧型の低発熱な通信装置に合わせた冷却環境とすると,新型の通信装置を適正に冷却することができず,すべてを新型の高発熱な通信装置に合わせた冷却環境とすると,必要以上に空調設備やスペースを要します。
そのため,発熱量が大きく異なる新旧の通信装置を混在させないことが望ましい姿となりますが,「通信を絶対に止めない」こと文献1)を使命とする通信機械室では,新旧の通信装置を即時にきれいに分けることができず,併存する新旧の通信装置への対応が必要です。
本稿では,時代によって変わりゆく通信装置を内包する通信機械室に対して,気流方式の観点から目指すべき姿に向けた,通信装置,空調設備の担当分野で連携した取り組みについて紹介します。
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