NTTファシリティーズ
Technical paperテクニカルペーパー
No.015

カーボンニュートラル実現に向けた水素技術に対する期待と展望
~脱炭素社会における水素利用

1.通信機械室の特徴

 1.1 カーボンニュートラルと日本のエネルギー事情

 近年,カーボンニュートラルを目指す潮流が世界中に広まっています。カーボンニュートラルとは,人の活動に起因する温室効果ガスの排出量と,植林などによる吸収量を均衡させるという意味を持ちます。2015年のパリ協定において,今世紀後半のカーボンニュートラル実現が長期目標として掲げられ,その実現のために途上国を含むすべての参加国と地域が排出削減に取り組むことが採択されました。これには,努力目標として,産業革命以降すでに1℃上昇した世界の平均気温を,1.5℃までの上昇に抑えることが盛り込まれています。この実現のためには,世界の温室効果ガス排出量を2030年に2010年比で45%削減し,2050年頃までにネットゼロ(=カーボンニュートラル)の達成が必要とされています。
 日本では2019年に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定され文献1),2020年には菅前首相が所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言文献2),同年12月 には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表文献3)すると共に,「グリーンイノベーション基金」も創設されました。記憶に新しいところでは,2021年10月に第6次エネルギー基本計画が閣議決定文献4)され,同年11月に英国で開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では岸田首相が2030年に温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減することを目指し,さらに50%に向けて挑戦するとした自国の目標を説明しました。またエネルギー政策にも触れ,既存の火力発電所の燃料をアンモニアや水素などのゼロエミッションに転換すべく,1億ドル規模の先導的な事業を展開すると述べています文献5)
 電力をはじめとするエネルギーは,現代の社会活動に欠かせないものです。残念ながら日本のエネルギー自給率はOECD諸国の中でも低水準で推移してきました。国内にエネルギー資源が乏しいことが主な要因ですが, 2011年の東日本大震災以降,国内の原子力発電所が停止し,火力発電所がこれを代替することで輸入に頼る化石燃料への依存度が高まったことも挙げられます(図1-1)。実際に2010年の日本のエネルギー自給率は20%を超えていましたが,2018年には11.8%まで低下しています文献6)

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