1.地震観測の成り立ちと意義
日本の地震観測は,1872(明治5)年,政府によって招聘されていたオランダ人,Verveck(フルベッキ)らによって始められました。1873年には函館測候所が気象官署として最初の地震観測を開始。全国的な地震観測・調査は,東京気象台が1884(明治17)年12月に「地震報告心得」を制定したことにより始まりました。
この調査の目的は地震の基礎資料を収集することにあり,その内容は全国の測候所,県庁・郡役所,灯台等を対象とした地震動の時刻,地震動の性質,震度等の報告(地震報告)の集約です。これによって日本全土の地震発生状況と震度分布を把握することが可能となりました文献1)。現在ではK-NET*1(全国強震観測網)やKiK-net*2(基盤強震観測網)が整備され,K-NETの観測施設は約20km間隔,その数は1,000カ所にも上っています文献2)。
上記は公的な地震観測網ですが,NTTグループは「通信を途絶させない」という命題を果たすために,全国70カ所あまりのグループの建物を観測点とする地震観測網を有し,長年にわたり地震観測データの蓄積を行ってきました。この地震観測網の最大の特徴は,他の地震観測網が主に地表面の揺れを観測しているのに対し,建物や鉄塔に地震計を設置して揺れを計測している点にあります。これらの観測データは,地震動によって建物が
どのような挙動を示すのかを把握する上で貴重なデータとなります。
本稿では建物における地震観測データの応用である「構造ヘルスモニタリング」について解説します。
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