NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル No.325
2018年1月

今後のデータセンターの姿
「ゼロダウンタイム」の実現を目指す

データセンターの停止要因は人為的なものが過半数

 DX時代には,データセンターの重要性が一層高まってきます。特定のユーザー企業のシステムだけでなく,社会全体を支える使命を果たすようになるからです。データセンターの信頼性は,直接的であれ間接的であれ,これまで以上に社会から強く求められるようになると考えられます。
 データセンターのシステムやサービスが停止している時間のことを,ダウンタイムといいます。ダウンタイムが生じる主な原因は,「ICT装置やファシリティの故障」「停電などインフラ障害」「自然災害」「人為的なミスや犯罪・テロ」などとされています。日本データセンター協会でも,「JDCCデータセンターファシリティスタンダード」でデータセンターの標準的な評価項目のガイドラインを示しています。これは前述したような障害要因に対応していくためのデータセンターの構成を整える指針を示したものです。

図1:データセンター障害の原因

図1:データセンター障害の原因
出典: IDC# JPJ43160517(October 2017)
IDC's Japan Datacenter Manager Survey, 2017(事業者DC,企業内DCの合計)

 それでは,実際のデータセンターの障害はどのように発生しているのでしょうか。図1は,IDC Japan株式会社がデータセンターの障害について調査を行ったものです。興味深いのはその障害の要因で,自然災害やインフラ障害といった項目よりも,人為的なミスが原因となっている項目の多さが目を引きます。「ICTシステムの能力不足」「電源供給の能力不足」「空調/冷却能力の不足」といった項目は,表面的には装置の故障などに起因しているように見えますが,設計もしくは企画段階での人為的なミスが,間接的に故障などの原因になった面もあります。これに「ICTシステムの運用ミス」「ファシリティの運用ミス」といった人為的なミスが直接的原因となっている項目と合わせると,実に全体の6割を超える障害は人為的なミスが要因になっていることになります。

 さらに今後DXの進展は,データセンターの大規模化,ICT装置の多様化,そして提供するサービスの品質を保証する「SLA(Service Level Agreement)」の厳格化を加速させると考えられます。
 それに伴いデータセンターの保守運用者の業務が増加,高度化,複雑化し,その労働環境が厳しくなることは想像に難くありません。このような環境の中で,データセンターはより一層の安定稼働を達成しなければならないのです。

ミス・エラーを防止する仕組みづくり

 人間はミスをする生き物ですから,ヒューマンエラー自体をなくすことはできません。
 一方で,ミスやエラーを起こしにくい仕組みやシステムを構築することは,ミスの要因を減らし,エラーを取り除くための有効な対処になると考えられます。
 NTTファシリティーズでは,独自のDCIM(Data Center Infrastructure Management)を開発し,設備管理のミスやエラーの抑止に活用しています。
 データセンターは,ダウンタイムを生じさせないよう,設備故障を想定して冗長性を考慮した設備設計となっています。しかし,運用する上では設備の点検や更改時に当該設備を停止することがあり,一時的に冗長性が損なわれます。つまり,設備の点検や更改のための計画策定,実施時の管理・監視は非常に重要であり,抜けや漏れのないよう広く目を光らせておく必要があります。

図2:NTTファシリティーズが開発したDCIMの概念図

図2:NTTファシリティーズが開発したDCIMの概念図

 当社のDCIMは,設備の維持管理の中期計画書,日々の作業計画,対象装置の作業手順書,実施結果,報告書などが各設備に紐づけられ,一元管理されています(図2)。DCIMを活用し,設備の維持管理が計画通りに問題なく実施できているかを管理し,保守運用の品質向上を達成します。
 また,当社はデータセンターの新築プロジェクトにおいて,設計段階で保守運用面の評価を実施し,データセンター事業者,建築事業者,保守運用者が課題を解決するためのツールとして,BIM (Building Information Modeling)を活用しています。

 BIMとは,3次元の建物のデジタルモデルに,管理情報や設備などの属性データを追加した建築物のデータベースです。
 企画や設計の段階で保守運用が考慮されていない建物を建設してしまうと,その後の運用でミスを生じる可能性が高まります。そこで設計段階でBIMにおける「仮想竣工」を実施することで,使い勝手やミスの誘発要因を事前に保守運用者が検証し,その結果を設計者にフィードバックしてミスの起こりにくいデータセンターを実現します。

図3:BIM活用モデルを用いた仮想竣工による検証

図3:BIM活用モデルを用いた仮想竣工による検証
指摘事項:動線において,配管高さが1.4mのため屈む必要がある(〇部分)
検討事項:配管の立上り位置を南側(上図では左側)にして通行しやすいように改善する

 図3は,実際の新築プロジェクトで仮想竣工を行った際のBIM活用モデルです。動線上に配管がはり出していて保守経路が確保されていないとの指摘を受け,設計者は配管位置の調整を行いました。
 こうした手法を組み合わせて,当社では今後のデータセンターの設計,施工,管理,運用までを含めた「ゼロダウンタイム運用」を目指します。故障や事故に対する抵抗力をつけ,万が一の際の復元力を高める「データセンターのレジリエンシー向上」に貢献していきます。

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