NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル
2019年11月14日

再生可能エネルギーの利用拡大に向けて

必然となった企業の脱炭素化への取り組み

 2015年9月に開催された国連サミットでの“持続可能な社会の実現を目指した「持続可能な開発目標(SDGs)」”の採択,2016年11月のパリ協定の発効等を背景に,企業にとって脱炭素化はCSRにとどまらず,事業を継続・発展させる上で必要な取り組みとなってきています。
 例えば,機関投資家は企業の積極的な脱炭素化の取り組みに注目しており,SBT,RE100,CDPなどの国際イニシアチブ(図1)による認定(または加盟)や評価を,株式等の「投資」あるいは「撤退」の判断要素として重視しています。
 また2017年6月には,世界主要国の中央銀行や金融規制当局により構成された金融安定理事会(FSB)が,気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を設置し,財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨する報告書を公表しました。現在,日本をはじめ世界中の金融機関や企業,政府などがTCFDに賛同しています。このように,企業にとって脱炭素化への取り組みの遅れは事業リスクとなりつつあります。

図1 脱炭素・省エネ関連の代表的な国際イニシアチブの概要

気候変動による影響

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は,「気温が1.5℃上昇すれば,人類にとって大きな危険が生じる。早ければ2030年に1.5℃の気温上昇が起きる」とする特別報告書を2018年10月に発表しました。1.5℃の気温上昇によって,海抜の低い太平洋の島々は水没し,海岸線が侵食され,干ばつや貧困が深刻化するとされています。
 2019年7月,アメリカ大陸北部のアラスカ州では31.6℃を記録。6月の平均気温は観測史上最高の15.8℃,平年を5.3℃上回りました。記録的な乾燥にも見舞われ,雨量は平年のわずか6%にとどまったため山火事が相次いでいます。
 ヨーロッパ北部も記録的な熱波に包み込まれ,その影響はグリーンランドの気温を例年より約14~17℃も上昇させました。
 インドのニューデリーでは6月に48℃,首都西部のラジャスタン州チュルでは50.6℃が観測され,この熱波により水不足や熱中症など生活に影響する深刻な被害が出ています。

種々の再エネ調達方法と進展するグリッドパリティ

 こうした背景もあり,日本でも脱炭素化の手段として,再生可能エネルギー(以下,再エネ)の利用が促進されています。調達方法は3種類(図2),そのうちの1つである再エネ電力証書は3種類(図3)あります。これらを組み合わせ,自社の環境施策に沿った最良の再エネ調達方法を選択することになります。
 RE100が定める技術基準への適合を検討している場合は,「追加性」にも注意が必要です。
 「追加性」とは新設された再エネか,再エネの導入拡大につながる新たな投資を促す効果があるのかを問われるものです。取り組みが先行する海外では重視されており,北米で自然エネルギーの電力を認証するラベルとして定着している「Green-e」では要件の1つとして規定されています。
 日本においては,RE100に適合し,かつ安価な電力コストを実現する再エネとして,自家消費用のオンサイト設備も含め,持続的な増加が見込まれる太陽光発電に期待が寄せられています。太陽光発電の発電コストは,これまで導入が急速に進展したこともあり,企業が購入している電力コストと遜色ない水準になってきています。
 再エネと既存の電力コストが同等になることを「グリッドパリティの実現」と表現しますが,グリッドパリティの進展によって新たな市場が形成されれば,需要側と供給側がWin-Winの関係となり,再エネビジネスの裾野が広がると期待されています。

図2 日本における再エネの調達方法
図3 再エネ電力証書と環境価値の概要

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