NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル
2020年6月10日

こう変わった!戦略的FMの取り組み
(横浜銀行における5年間のFMの実践)

経営課題の解決手法としてFMを導入

 FMを実践するためにはファシリティの現状を綿密に把握し,適切なFM施策を立案・実行し,資産価値向上に向けた長期的な目線でPDCAサイクルを回していく必要があります。
 NTTファシリティーズでは,「Ⅰ ファシリティの見える化(現状の正確な把握)」「Ⅱ FMスタンダードの設定」「Ⅲ アクションプランの策定」という3つのステップと継続的にFM施策を実行し,統括的なマネジメントを行う「Ⅳ FMオペレーション体制の構築」をサポートし,お客様施設のコスト削減を進めると共に,ファシリティの効果を高め経営に貢献しています(図)。

図 NTTファシリティーズのFMの概略

図 NTTファシリティーズのFMの概略

 当社は,2014年4月より横浜銀行においてファシリティマネジメントアウトソーシングサービス〈FM-BPO®〉を展開しています。
 FM導入以前の横浜銀行では,竣工後30年以上を経過した店舗が半数を占め,老朽化によるリスク増加が課題となっていました。同時に,修繕・改修費用の増加が見込まれる状況下で,変化する市場環境・財務状況等への柔軟な対応が求められていました。
 このような経営課題の解決手法として戦略的FMが必要と判断されました。導入にあたっては,管財組織を長期的に維持するための人的課題の解決や専門性・技術力を積極的に活用することを目的にアウトソーシングが選択され,数多くの施設のFMを実施してきた実績がある当社がパートナーとして選定されました。
 導入初期においては,当社の知見を活かしたコンサルティングサービスとして劣化診断と中長期整備計画の策定,FMデータベースとFMシステムの構築によるファシリティの見える化に取り組むと共に,FMスタンダードの設定を行いました。
 また,FMを推進するための体制として,横浜銀行本店内にFMセンターを設置しています。統括マネジメント,建築,動産,不動産の4つのグループの緊密な連携のもとにFMオペレーションを実施しており,業務水準を高度化させながら発展させてきています。
 こうした横浜銀行における一連の取り組みが高い評価を受け,2018年12月には,日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)最優秀ファシリティマネジメント賞を受賞しました。金融機関の最優秀FM賞の受賞は今回が初めてです。

明確な根拠に基づいた情報によるリスク・コストの低減

 ファシリティの見える化による効果は大きく,財務的側面では,OHRの改善に寄与するためコストコントロールを実現しました。店舗群・大型建物の整備計画策定の過程で部位別の重みづけと劣化対応マトリクスによる優先順位付け,リスク分析による工法見直しを行い,投資コストを抑制しました。さらに,減価償却費の積上げ額の適正値を見極めてコストコントロールを行いました。これにより建物の機能は維持しつつ,財務面での改善に貢献しました。
 危機管理的側面では,中長期整備計画に基づく大規模改修の実施により建物性能の向上を実現しました。部位・設備共に建物劣化評価点は大幅に改善し,評価点の改善に伴い不具合件数は減少,特に大雨時等の外壁の漏水についてはFM導入前に比べ大幅に減少しました。
 また,行内におけるFM定着に向け「営業店FMカルテ」を支店に配布し,FM意識向上を図っています。建物情報や有形資産リスク情報などの基本情報と共に電気使用量,ファシリティコスト,劣化評価などは,他店との比較が可能です。
 FMオペレーションの取り組みによって蓄積されたデータベースや知見は,将来予測が難しい状況においての意思決定に大きな力を発揮し,経営判断に要する時間に大きな違いをもたらします。
 横浜銀行では,整備計画による将来コストの適正化に加え,賃借店舗の賃料や維持管理コストの見直し,省エネ改修を含めた環境施策の導入などトータルでのファシリティコストの削減に取り組みながら,SDGs(持続可能な開発目標)に対応した環境活動や地域に密着した活動を通して厳しい経営環境と社会ニーズへの対応に取り組んでいます。
 当社はこうした取り組みをサポートできるようFM業務の高度化を追求し,今後も経営に資する情報やサービスを提供していきます。

  • *OHR(Over Head Ratio 経費率):経費の利益に対する比率。銀行業務の効率性を示す指標の1つで,比率が低いほど少ない経費で粗利益をあげていることになる

最新のコラムや導入事例をメールマガジンで配信いたします。

Page Top