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建物の"なんかいいな"を数値化する新指標「NEBs」~建物が省エネ以外にもたらす非財務価値を可視化する~

2026年03月31日

省エネ効果だけでは投資回収に時間がかかり、ZEB化が進みにくい―そんな現場の課題に対する新たな判断軸が、新指標「NEBs」です。NEBsは、建物がもたらす生産性向上・健康増進・人材確保といった非財務価値を12の指標で可視化し、金額換算まで可能にする指標です。本稿では、GX時代における建物投資の新たな評価基準としてNEBsを解説するとともに、認知から簡易算定までを一元化した「NEBsポータル」にも触れながら、新たな指標の提供を通じて、省エネの先の、人、社会を中心とした建築市場づくりを後押しする取り組みについて紹介します。

GXに向け、省エネの先の価値を評価するNEBs

2050年のカーボンニュートラル実現という政府目標のもと、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の推進は大規模ビルを中心に義務化の動きも加速しています。国土交通省も、既存の建物ストック、とりわけ中小規模ビルの省エネ改善を急務と位置づけており、設備更新やリノベーション投資への期待は高まっています。

しかし現場では、こうした取り組みになかなか踏み切れない実情があります。例えば空調改修や照明のLED化に1億円を投じたとしても、年間の水光熱費削減額だけで見ると、投資回収には長い期間を要しがちです。

このように、「投資対効果の低さゆえにZEBに対する取り組みが進まない」という状況は、自社ビルや中小規模の既存ストックの多くで発生しています。さらに企業経営においては、「人」にかかわるコストのほうが光熱水費よりもはるかに大いのが実情です。

こうした課題に対し、「省エネ効果だけではなく、建物の改修によってもたらされる非財務的な価値も含めて評価する方法はないか」という発想から生まれたのが、NTTファシリティーズとデロイト・トーマツが共同で開発した新たな指標「NEBs(Non-Energy Benefits)」です。

NEBsとは何か——定性的な「良さ」を定量的に表す仕組み

NEBsは、建物が省エネ以外にもたらすベネフィットを5つのグループと12の指標で分類・整理し、最終的に金額として可視化する指標です。その評価のベースとなっているのが、国内外の100本を超える論文や調査に基づいて構築されたロジック、算定式です。

NEBsは建物環境やワークプレイスの改善によって生まれる、働く人の健康増進や生産性向上などを金額で数値化します。これまで、定性的なメリットがあると認識されながらも数値化が難しかった価値を、定量的に可視化することで、GXに向けた取り組みを後押しします。

NEBs算定の考え方

例えば、オフィス環境と生産性の相関が挙げられます。具体的には、建物の断熱性を高めることで、窓際の冬の寒さが解消されると、働く人のストレスが軽減され、生産性の向上につながります。さらに、残業時間の削減や欠勤率の改善などにも寄与します。NEBsは、こうした建物改善がもたらす、光熱費削減以外の付加価値を定量的に評価します。

知的生産性の向上

こうした算定ロジックは、NTTファシリティーズが設計事務所として蓄積してきた建物施策に関する知見と、デロイト・トーマツが持つコンサルティング視点や論文・エビデンスの分析力とのシナジーによって開発されました。さらに、国交省、JSBC(一般社団法人日本サステナブル建築協会)から受託を受けた調査・検証や、大学の有識者による第三者レビューのもとでロジックを磨き続けていることもNEBsの信頼性を支える要素の一つです。

NEBs12項目

NEBsの2つの活用シーン

NEBsには大きく2つの利用価値があります。

まず、経営層やビルオーナーにとっては、ZEB化投資に対する新たな判断軸として機能します。水光熱費の削減の判断軸だけでなく、人的コストの削減効果や生産性向上といったESG、特にSの側面の判断軸を加えることで、投資の妥当性をトータルで判断できます。

また、統合報告書やIRレポート、環境報告書などへ非財務的な情報開示として活用できる側面もあります。公的な財務指標そのものではありませんが、「ESG領域における積極的な取り組みを行っている」ことに関する説明責任(アカウンタビリティ)を果たすための材料として活用できます。

2つ目は運用面の視点から見た価値です。ワークプレイスの環境改善やエンゲージメントの向上に取り組む総務部門・人事部門にとって、オフィス移転や改修の効果測定はこれまで課題の一つでした。NEBsは、ワークプレイスの環境整備後に生まれる効果を定量的に示せる手段として、その課題に応えます。

例えば、建物の新築や改修から2~3年が経過した後にNEBsで算定したケースでは、「1人あたり月額1万円程度の効果が出ている」という定量的な効果測定を行うことができました。省エネ以外の指標でワークプレイス改修を振り返ることができること、また改修前にベースラインを設定できる点も、NEBsの価値です。年間一人あたりの効果を金額で可視化することで、人的資本経営の推進やオフィス環境整備の投資対効果を説明する際の目安にもなります。

NEBsは、企画・設計段階では投資可否の判断材料を補強し、運用段階ではKPIとして機能させることも可能です。

事例から見えた収益不動産への効果

NEBs算定の実施事例として、「アーバンネット仙台中央ビル」があります。テナントビル(収益不動産)を対象にNEBs算定を実施したこのケースでは、Energy Benefit(EB)が年0.7億円、Non-Energy Benefits(NEBs)が年1.7億円となり、ビル全体では合計で年2.41億円の効果が算定されました。

また、この効果をビルオーナーと入居テナントの視点で見ると、オーナー側が年0.24億円、入居テナント側が年2.17億円となりました。テナントビルでは、このようにオーナーが管理する共用部と、利用者が使用するテナント専有部の効果をそれぞれ算出でき、収益不動産に関わる各ステークホルダーにとっての建物の価値と可能性を示す評価基準となります。

さらに、国土交通省 不動産・建設経済局が主催する「社会的インパクト不動産」の促進に向けた勉強会へ参加し、投資家・金融機関における説明責任のあり方についても検討しています。

算定事例

省エネの先の人・社会を見つめる新たな指標

NEBsは、建物や設備、ICTに強みを持つ当社と、高度なコンサルティング力を持つデロイト社、それぞれの強みを掛け合わせた取り組みです。今後のNEBsを用いた建物への計画提案を促進するため、NEBs設計ガイドラインを策定するとともに、NEBsポータルをリリースしました。

NEBsポータルには、NEBsの算定、結果を直感的に体感できる算定機能も備えています。将来的には、さまざまなステークホルダーが活用しやすく、多様な意見が交わされるプラットフォームとなることをめざしています。

NTTファシリティーズでは省エネや脱炭素を進めながら、そこで過ごす人々のパフォーマンスや豊かさも高めていく——そうした社会とつながる建物や市場づくりに貢献したいと考えています。NEBsはGX時代の新たな標準指標となり得る可能性を秘めています。


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