NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル No.325
2018年1月

電力ロス削減の取り組み

 156億kWh/年̶。これは2016年度の国内データセンターの年間総消費電力量で,東京都の年間総消費電力量の20%に相当します。この膨大な電力量の5~6割はICT装置内部のCPU・GPU,メモリー,HDDなどで消費され,2~3割はそれを冷却するための冷却設備で消費されています。残りの2~3割の電力は,実体的な仕事をすることなく「電力ロス」として消費されます。そしてこの電力ロスの過半は,実はサーバーなどのICT装置の内部で発生しています。
 図はサーバー内部の電力系統の簡略図です。UPS(交流無停電電源)等により外部から供給される電力は,まずPSU(電源ユニット)で直流12Vに変換されます。これはCPUやGPUなどのプロセッサー,メモリー,HDD,ファンなどサーバー内部のコンポーネントに給電する基となる電圧で,バス電圧と呼ばれます。バス電圧は1~2回の電圧変換を経て,各コンポーネントの入力電圧(CPUの場合は1V程度)に降圧され,電力が供給されます。
 サーバー内部の電力ロスの正体は,主に「配線ロス」と「スイッチングロス」です。
 配線ロスは,配線ケーブルに電流が流れる際に電流の二乗に比例して生じます。そのため,バス電圧の格上げによって根本的に電流量を抑えることで,配線ロスを削減することができます。
 スイッチングロスは,電圧を変換する際に電気回路の開閉によって生じるため,電圧変換回数を減らすことにより電力ロスを削減できます。
 Google社は,2016年にOpen Compute Project*において,バス電圧を直流48V,電圧変換回数を1回としたサーバーを開発したと公表しました。また大手ICT装置ベンダーも同様に,バス電圧を直流48V,電圧変換回数を削減したサーバーとルーターを提唱しています。両社とも従来のバス電圧12Vのサーバーと比較して,大幅な電力ロス削減が可能であるとしています。
 このようなICT装置の変革に追従してファシリティからの給電も見直すことで,「ICT装置内部の電力ロス」は,さらに削減することが可能です。
 従来のサーバーのPSUは交流電圧(100Vまたは200V)を入力としていますが,入力電圧を直流380V(高電圧直流,略称HVDC)とすることで,バス電圧を直流48Vへ変換する際の変換効率を向上させることが可能となり,電力ロスを低減できます。
 ICT装置の消費電力増大が予見される中,電力ロスの低減を実現するためには,ICT装置とファシリティが一体となった給電システムの最適化が重要であるとNTTファシリティーズは考えています。

電力ロス削減アプローチの例

■電力ロス削減アプローチの例

  • *Open Compute Project(OCP): 2011年にFacebook社が提唱したエンジニアコミュニティ。最も効率の良いサーバー/ストレージ/データセンターなどのハードウェアを設計し提供していくために,業界の標準化と高効率大規模データセンターの容易な構築を可能にすることを目的に設立された

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