NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル
2019年7月9日

ハイパースケールデータセンターの空調システム

空調システムに求められる「高発熱密度対応性」

 昨今のデータセンターでは高密度化により単位面積当たりの発熱量も増加しているため,高発熱密度に対応した空調システムが求められています。
 通常,空調設備はサーバールームに設置される室内機と,屋外に設置される屋外設備で構成されるため,その双方の観点での配慮が必要です。室内機はサーバールームの片側に設けられた空調機械室にできるだけ多く並べる「空調機の幅当たりの冷却能力(kW/m)」が,一方,屋上などの所定の区画に設置される屋外設備は,限られた面積の中での冷却能力である「設置面積当たりの冷房能力(kW/m2)」が求められます。
 この2つの要素が最適化されていれば,高発熱密度対応性が高いといえます。条件にもよりますが,空冷チラーを用いた中央熱源式と個別分散式の空冷パッケージ空調方式を比較した場合,中央熱源式の方が屋外設備でおよそ1.5倍程度,室内設備で3倍近く対応性が高いといえます(図1)。

高発熱密度対応性の比較

図1 高発熱密度対応性の比較

メンテナンスコストに直結する熱源設備の構築単位

 中央熱源式で課題となるのがシステムの構築単位です。初期費用低減を重視する場合,サーバールームの需要に合わせて小型の空冷モジュールチラーを逐次増設して連結し,予備機容量を小さくするアプローチが主流です。

チラー容量とメンテナンスコストの関係

図2 チラー容量とメンテナンスコストの関係

 しかしこのアプローチでは,データセンターの規模が大きくなるにつれ点検対象の台数や部品点数が増加し,保守費用が高額になってしまう傾向があります。したがって,ハイパースケールデータセンター(以下,ハイパースケールDC)で保守費用を含むTCO*削減を重視する場合には,冷却能力が1MW/台以上などの大容量のチラーを選定するアプローチが有効になります(図2)。ただし,大容量のチラーを選定する場合には,部分負荷での制御範囲や効率に注意が必要です。

*チラーの効率を左右する冷水送水温度の選択

 屋外設備であり冷水を製造するチラーは,冷水送水温度の設定によって効率(冷却能力/消費電力)が変動します。理論上は,冷水送水温度を高くするほうが高効率で運転できます。
 しかし現在国内で流通している空冷モジュールチラーは,商業ビル向けなどに開発されているので除湿負荷のために冷水温度を低くする必要があることや,圧縮機の軸受に使用する潤滑油の温度管理の観点から,冷水送水温度を15℃以上に上げても大きな効率向上が図れないことが一般的です。一方,室内機である水冷空調機の冷却能力や運転効率は,冷水送水温度の上昇により低下します。

冷水送水温度によるチラー運転効率の変化

図3 冷水送水温度によるチラー運転効率の変化

 そのため国内における設計事例では,チラーと水冷空調機の冷却能力や運転効率を総合的に考え,冷水送水温度を11~15℃程度に設定するアプローチが主流です。
 ただし,仮に冷水送水温度の上昇に応じて運転効率が大きく上昇するチラーであれば,サーバールーム内のコールドアイル(空調の冷気が供給される通路)の温度が25℃以下に維持できる最高温度である20℃程度まで冷水送水温度を高めるほうが,効率の観点で好ましい運用となります(図3)。

ハイパースケールDCで求められるアプローチ

 国内のハイパースケールDC市場への参入が目立つ外資系データセンター事業者では,前述の各要素を考慮したアプローチがとられています。
 まず,冷水送水温度を20℃程度に上昇させた際に運転効率が大きく向上するチラーを用いて,エネルギーコストの大幅な低減を図っています。またチラーと空調機の双方を大容量化して設置台数を減らし,メンテナンスコストおよび運用コストの低減を目指しています。さらに,空調機については単純な大容量化だけではなく,壁吹型とした上で高さを一般的な空冷パッケージエアコンの2倍程度とし,幅1m当たりの冷却能力を大きく高めることで高発熱密度対応性を向上させています。

ハイパースケールDCに対応する空調ソリューション

 NTTファシリティーズは,こうしたハイパースケールDCでの運用に応えるべく,2019 年5 月,カナダSMARDT社製大容量空冷チラーSMARDT TA Class™(写真1)をデータセンター空調ラインナップに加えました。SMARDT TA Class™の主力モデルは,1台当たりの冷却能力が1.0~1.6MWとなる大容量チラーです。マグネット軸受オイルフリー圧縮機の採用により,多くのチラーで故障の原因となる冷凍機油が不要となるため,メンテナンスコストの大幅低減が達成できます。また圧縮機軸受用の潤滑油の温度管理が不要となるため,冷水送水温度の上昇と共にチラーの運転効率を高めることができ,20℃など高温度送水時に高効率運転が可能となり,ハイパースケールDCの設計要件に応えます。
 今後は,すでに提供中の大容量壁吹型空調機であるCyberAir®壁吹型(ドイツStulz社製,写真2)とSMARDTTA Class™を組み合わせたパッケージ提案を通じて,大規模化・高発熱密度化というデータセンターの課題解決に貢献していきます。

  • *TCO(Total Cost of Ownership):設備投資,運用コスト,光熱費,人件費,機器の除却費用などデータセンター運営に必要となる全体の費用
大容量空冷チラーSMARDT TA Class

写真1 大容量空冷チラーSMARDT TA Class™

データセンター用水冷空調機CyberAir壁吹型

写真2 データセンター用水冷空調機CyberAir®壁吹型


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