NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル
2020年6月10日

変革する金融機関の戦略的FM

金融業界を取り巻く環境

 金融緩和政策による低金利環境の長期化や少子高齢化の進展に伴う生産年齢人口の減少など金融機関を取り巻く状況は厳しく,銀行業界全体では利益の減少傾向が続いています(図1)。

図1 金融機関における当期純利益の推移と内訳

図1 金融機関における当期純利益の推移と内訳
出典:「金融システムレポート」日本銀行 2019年10月

 また, 相次ぐ激甚災害や気候変動への対応,SDGs達成への貢献など迅速な対応が求められる経営課題も山積しています。
 近年はインターネット,スマートフォンなどの普及等が進んだことから,顧客チャネルが多様化し,店舗の窓口やATMを利用しない顧客が増えています。さらにFinTech*1を活用した取り組みの重要性も増してきており,イノベーションを顧客サービスや生産性の向上などにつなげていくことが必要となっているなど店舗のあり方も変化しています。
 このような経営環境の変化に対応するため,金融機関は大きな変革の時を迎えており,経営統合や提携による業務効率化や成長戦略の動きが加速しています。多くの金融機関では店舗戦略を見直し,経営のスリム化を図りながら,次世代の金融サービスのあり方を模索しています。

経営戦略としてのFM

 金融機関では経営統合や店舗改革など今後大規模な構造改革が進み,サービスや業務,ひいては働き方にも大きな変化が生じ,自らが管理・運営するファシリティ(土地,建物,設備等)のあり方も大きく変わろうとしています。
 こうした状況をうけ,施設資産の最適化の動きが活発化しています。店舗の移転や統合など店舗網を見直すにあたり店舗内店舗*2を活用し,顧客利便性に最大限配慮しつつ店舗運営を効率化することが頻繁に行われています。またATMや勘定系システム,事務処理センターの共同利用など,他機関と連携し合理的なビジネスモデルへの変革を進めている事例も見られるようになってきました。
 一方,店舗統合や業務集約により余剰となった不動産やスペースについては地方創生や中心市街地活性化の観点に基づき有効利活用してくことが求められます。今後,規制緩和の潮流に応じながら外部賃貸などの不動産の有効利活用のためには,財務情報だけでなく土地・建物の情報,環境リスク情報等の関連情報を評価し適切に意思決定を行うことが重要です。
 また,構造改革による持続的な成長の前提となるBCP(事業継続計画)の見直しも重要です。環境変化や新たなリスクを認識し,その影響を評価,対策を講じて計画に反映していくことが求められます。自然災害等に対する体制整備においては,システムのバックアップセンターやバックアップオフィスなどの拠点強化,店舗における自家発電設備等による非常用電源の確保,止水板の設置による浸水対策などの適切なリスクへの対策が必要です。
 こうした金融業界を取り巻く環境変化に対して適切な意思決定をするためには,FMにより,保有資産のハード・ソフト両面からファシリティのデータベースを整備し常に状況を把握しておく必要があります(図2)。自社が管理・運営するファシリティそのものが突発的なコストの増大や社会的責任の追及などにより経営にインパクトを与えるため,経営手法としてのFMが欠かせません。

図2 期待されるFMの効果

図2 期待されるFMの効果

 NTTファシリティーズではこれまでお客様のファシリティに関する様々な課題解決のために,最適な仕組みを提案し導入してきました。
 当社は,FMを施設の日常的な維持・保全だけでなく,業務の中から得られた新たな発見・気づきをPDCAサイクルに反映し,お客様の経営戦略に則したFMを実践することをミッションと位置づけています。

  • *1 FinTech:金融(Finance)と技術(Technology)からなる造語。金融サービスと情報技術を結びつけた様々な革新的な動きを指す
  • *2 店舗内店舗:1つの店舗内で複数の支店が営業すること

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