NTTファシリティーズ
FeatureNTTファシティーズジャーナル
2020年6月10日

「将来の銀行」像に向けた
店舗改革の最新動向

欧米の次世代型店舗への取り組みで重視される4つの“C”

 FinTechの登場やキャッシュレス化の進展など金融業界で変革が起きている中,景気後退回復後も支店閉鎖の傾向が続く欧米の銀行では,リテール部門の顧客を対象とする純利益の指標である「顧客収益性」と事業環境の変化に応じた「店舗改革」に大きな注目が集まり,特に店舗改革においては以下の4つの“C”が重視されています。

Cost-Effectiveness
(費用対効果)
店舗の建設・維持費を削減するために,狭い敷地を利用する小さな支店を構築し,スペースを有効に活用する
Convenience
(利便性)
来店する顧客の不満の1つである待ち時間を解消するために,最新のデジタル技術の活用によるセルフサービスの導入やオムニチャネル戦略の強化を図る
Customization
(サービスのカスタマイズ)
個々の顧客にとって最適なレベルのバンキングサービスを提供する
Comfort
(快適さ)
顧客の銀行体験をより快適なものにするために,行員の対面スキルの向上からコーヒーの提供に至るまで,顧客を引き付けるための様々な取り組みに一層努める

国内で今後展開される様々な店舗最適化戦略

 国内では店舗窓口の利用者は,徐々にではありますが減少しており,ネットバンキング利用時のセキュリティ強化と共に店舗利用率は低下していくことが想定されます。一方で投資信託・保険などの資産運用や各種コンサルティングなどは,窓口において対面で行いたいというニーズが根強くあります。
 社会的背景から店舗のあり方を考えるにあたって,利用者数減,省人化・無人化,競合他社との棲み分けなどの課題に直面しています(図1)。そのような状況に対応するため,従来型のフルバンキング店舗だけでなく,相談・提案型プラザラウンジや他業種との共同店舗など店舗形態は多様化しています。今後の国内潮流は「どの店舗にどこまでの機能を盛り込むか」が重要となります(図2,3)。

図1 次世代店舗を考えるトピックス

図1 次世代店舗を考えるトピックス

図2 次世代店舗のイメージ

図2 次世代店舗のイメージ
従来,お客様と行員は対面型のカウンターでゾーン分けされていたが,今後の店舗は2つのゾーンがボーダレス化し,手続等はセルフサービス化され,お客様への提案ができるようなコンサルブースが充実する

図3 次世代店舗のオムニチャネル化

図3 次世代店舗のオムニチャネル化

 例えば店舗に来店する可能性が低い顧客に狙いを定め,複合ビルの中の店舗で顧客層の拡大を目指した店舗の展開が進んでいます。複合商業ビルに入居し,カフェや本屋などのくつろぎ空間の中でボーダレスにつながり,いつでもじっくりと相談が可能な銀行も登場しています。
 また来店客数の減少に応じた店舗ネットワークの適正化のため,移転などのタイミングで従来の店舗からスペースを大幅に削減し,無人店舗に変更した事例もあります。ATMやセルフ出納機などで基本的な金融サービスを提供し,テレビ電話を備えた相談ブースで遠隔地の行員から様々なサポートを受けることができます。
 国内のこうした事例は,インターネットバンキングの進展などにより業界全体で顧客の店舗離れが進む中,顧客に対して銀行が積極的にアプローチをする時代の到来を示唆しているとも言えそうです。

  • * オムニチャネル(Omnichannel):顧客とのあらゆる接点において最適な体験を提供すること

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