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宇宙の神秘に迫る「天文台」を支えるもの

2017年11月22日

 多くの人が寝静まった深夜、天体望遠鏡で熱心に星々を観測する人々がいます。宇宙を研究する天文学者たちです。こうした研究者の活動により、「人類のルーツ」「第2の地球の存在」といった謎が徐々に解明されようとしています。

 そうした研究の拠点となっているのが「天文台」です。そんな天文台の運用を陰から支える多くの人がいます。今回は、天文台の実態や最新情報について紹介します。

6,000年前には既に始まっていた人類の天体観測

 人類は、大昔から宇宙の神秘に魅せられてきました。

 6,000年も前から、エジプトでは太陽や月の動きをもとに、季節を知る暦があり、それを農耕に役立てたり、ナイル川の洪水がいつ起きるのか予測するのに使っていました。中世の終わりごろには、ヨーロッパなどで、科学的な視点から天体の性質や運行の仕組みを調べる動きが盛んになりました。

 古くから、宇宙の神秘を解き明かす上で、重要な役割を果たしてきたのが天文台です。天文台はもともと、星や宇宙の観測を目的とした、学者や研究者のための施設でしたが、現在では一般向けに設備を開放する「公開天文台」も増えています。

 公開天文台では、一般向けの天体望遠鏡やプラネタリウムを設置して観望会などを開催し、人々に星を見る機会を広く提供しています。ちなみに、日本には400以上もの公開天文台が存在します。

世界に誇る巨大望遠鏡で「人類のルーツ」をたどる

 日本が運用している天文台には、世界に誇る高性能な望遠鏡がいくつもあります。

 その中でも、よく知られているのが「すばる望遠鏡」です。ハワイ島のマウナケア山頂に建設され、2000年12月に本格運用を開始しました。1枚の鏡で構成される望遠鏡としては世界最大級の口径で、高解像度での観測が可能です。すばる望遠鏡の観測結果を使った学術論文は、およそ3日に1 編の割合で発表されています。

 すばる望遠鏡では天体の“光”を観測しますが、“電波”を観測する電波望遠鏡もあります。その代表的なものが「アルマ望遠鏡」です。日本をはじめとする東アジア、北米、ヨーロッパの国際共同プロジェクトとして、チリの標高5,000mの高地に建設され、2011年に観測を開始しました。

 アルマ望遠鏡を使い、130億光年以上も遠くにある天体が放った電波を撮影することに成功しています。これを使うことで、惑星誕生のメカニズムを明らかにし、私たちのルーツを宇宙にたどることが可能になるのではないかと期待されています。

世界の起源、第2の地球…。天文台が明らかにするものとは

 世界では、巨大望遠鏡を使って多くの研究成果が生まれています。

 最近話題を集めたのは、米国と欧州の共同研究グループが2つの中性子星同士が合体して放出されたと考えられる「重力波」の観測に成功したことです。その後、日本の研究者チームも、重力波の源をとらえて、その明るさの時間変化を追跡することに成功しています。

 この発見がどういう意味を持つかといえば、今までよく分かっていなかった謎のひとつである「鉄よりも重い原子(重元素)は、どのように誕生したのか」の答えが、明らかになる可能性が出てきたのです。それによって、「世界を創った物質はどうやって生まれたのか?」という大きな謎の解明に期待が高まっています。

 ちなみに、今年のノーベル物理学賞は、重力波の初観測に成功したキップ・ソーン博士、レイナー・ワイス博士、バリー・バリッシュ博士が受賞しました。これは、巨大なブラックホールが誕生したときに生み出された重力波を観測したものです。

 そのほかの巨大望遠鏡を使った成果としては、日本の研究グループが、生命がいる可能性のある太陽系外惑星「K2-3d」のトランジット現象(自ら光を発する恒星の手前を惑星が通過する現象)を、地上の望遠鏡で初めてとらえることに成功しています。

 地球に近い大きさと温度環境を持つ「K2-3d」のトランジット現象を精密に観測することで、将来的に、惑星の大気中に酸素などの生命由来の分子を探ることができるのではないかと期待されています。つまり、今回の成果は、将来、生命の生存に適した条件を持つ“第2の地球”の発見につながるかもしれないのです。

進化する天文台、それを支える人たち

 惑星誕生のメカニズムも、重力波の観測も、天文学の研究者たちによる長年の努力が実ったものです。しかし、天文学者たちだけでは、宇宙の神秘を解き明かすことはできません。それには、様々な厳しい条件をクリアした高性能な天文台、そして、その建設や運用に携わる多くの人がいるのです。

 天文台を建設する際の条件の1つに「立地」が挙げられます。天体観測には、建物や街灯の明かりの少ない場所が適しています。電波望遠鏡を使う施設では、携帯電話や無線LANなどの電波による干渉も避けなければいけません。さらに、排気ガスや車から出る熱気も天体観測には天敵です。こうした理由から、天文台は標高が高く、街から離れたところに多く立地しています。

 「設備」も重要な条件です。天文台では、研究のために精密機器がたくさん設置されています。そのため、振動対策が必要になります。さらに、天体観測をする際は、室温と外気温に差があると空気がゆらぎ、正確な観測ができません。そのため、変化する外気温に合わせて、観測室の室温を調整できる空調設備も求められます。深遠な宇宙の果てをのぞき込むためには、こうした設備を整備することが欠かせません。

 近年、ICTを活用した天文台も増えています。ICTを使って望遠鏡の動きを制御したり、複数の関係拠点をつないで観測データを共有して解析するなど、天文台にもさまざまな形でICTが導入されているのです。そうやって集められた画像データを公開して教科書に活用したり遠隔授業を実施したりするなど、教育分野に貢献している天文台も増えています。

 天文台で得られた成果は、人類のルーツや地球の起源といった壮大なテーマだけではなく、教育などの非常に身近な分野にも還元されています。今もなお進化を続け、宇宙の神秘を解明するとともに、人類の進歩に貢献する天文台。そこには、天文学の研究者のほかにも、建設・運用・メンテナンスなどのさまざまな専門家も携わっています。天文台はそんな多くの人たちによって支えられているのです。

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