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改正FIT法で太陽光発電のO&Mをどう変えるべきか

2017年11月29日

 日本の太陽光発電は、再生可能エネルギーの売買方法などを取り決めたFIT(固定価格買取制度)に支えられ、これまで成長してきました。

 そのFITに関する法律が、今年、再生可能エネルギーのさらなる導入を図るために改正。その中で太陽光発電のO&M (運用・保守)が義務化されました。改正FIT法によってO&Mのあり方はどのように変えるべきなのでしょうか。具体的に何をすればいいのか、注意すべき点など、改正FIT法施行後におけるO&Mのポイントを解説します。

メンテナンスフリーという誤った認識が生んだトラブルの多発

 2017年4月から「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」、いわゆる「改正FIT法」が施行され、日本の太陽光発電事業を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。特に影響があるとされるのがO&Mです。

 O&Mとは、運用(Operation)と保守(Maintenance)のことです。メガソーラー(大規模太陽光発電所)事業で、O&Mの役割は2つあります。1つめは、設備の異常を検知した場合に現場に駆けつけて対応する緊急的な業務。2つめは発電量の変化を長期的に分析しながら、定期点検やメンテナンスを実施していく長期的な業務です。

 太陽光発電設備を設置した後には、専門の業者と運用と保守に関する契約を結ぶのが一般的です。これをO&M契約といいます。O&M契約には、日々の運営業務から定期検査や保守のすべてを任せる運営・保守委託契約、定期検査と保守だけの契約、24時間遠隔監視の契約などさまざまなパターンがあります。

 一方で、FIT開始時は、太陽光発電が投資対象として注目されたためか、設置後の整備・保守への意識が置き去りになり、「メンテナンスフリー」という誤った認識が一部で根強くありました。その結果、不適切なO&Mによって、設備の故障をはじめとしたさまざまなトラブルが多発。2015年9月には、台風15号によって太陽光発電所のパネルや架台が飛ばされ、周辺地域にも被害を及ぼす事故が各地で発生し、経済産業省が注意喚起を行いました。

 このような状況を改善するために、「改正FIT法」でO&Mのあり方が見直されたのです。

改正FIT法に対応した事業計画の中身とは

 改正FIT法によって何が変わったのでしょうか。

 改正前の FIT 法では、太陽光発電に必要な条件を満たした設備に対し、経済産業省が認定を行う「設備認定」という形がとられていました。しかし、改正後は設備自体ではなく、事業性に対する「事業計画認定」に変更されました。この改正によって、設備の安全基準だけではなく、それまで事業者が各自で作っていた事業計画もチェックされるようになり、長いスパンで事業性があるかどうかが問われるようになったのです。

 今後、太陽光発電事業を行おうとする事業者は、経済産業省が公表している「事業計画策定ガイドライン」に沿った詳細な事業計画を提出しなければいけません。これはすでに稼働している既存施設にも適用されます。もしも、事業計画がガイドラインの条件を満たしていない場合には、認定が取り消される可能性もあります。

 従来の制度では、太陽光発電の事業計画に関する詳細な規定はありませんでした。しかし、改正FIT法では「企画・立案」「設計・施工」「運用・管理」「撤去および処分」といったように、太陽光発電事業すべてのプロセスに対して、詳細な計画や費用の見積もりまで盛り込むことが求められています。

 事業計画の中に「運用・管理」の項目が設けられ、O&Mが義務化されたことで、これまでO&Mを検討していなかった事業者も、対応が必須になりました。

 事業計画策定ガイドラインの中のO&Mに関する項目では、保守点検および維持管理について、その範囲や手法、スケジュールに加え、人員配置、実施体制、結果の記録方法なども具体的に定めることが求められています。

 発電設備の事故発生、運転停止、発電電力量の低下などの事態が発生した場合の対応方針も、あらかじめO&M事業者や施工事業者との間で定めて、発生時に関係者との連携が円滑に実施できる体制を整えておく必要があります。

負担増ではない!O&Mの義務化は絶好の機会

 ガイドラインに沿って事業計画を策定した後は、今度は具体的な施策を実行していきます。ただし、経済産業省が出している事業計画策定ガイドラインで、O&Mの具体的な内容が発表されているわけではありません。

 その代わり、事業計画策定ガイドラインの中で、民間団体が定めたガイドラインを参照することが推奨されています。具体的には、「太陽光発電システムの保守点検ガイドライン」「太陽光発電設備が水害によって被害を受けた場合の対処」「震災によって被害を受けた場合の太陽光発電システム取り扱い上の留意点」などが挙げられます。

 O&Mに取り組む上で、特に注意したいのが自然災害への備えです。先にも紹介したとおり台風による事故で、太陽光パネルなどが飛散して住宅や車両を損壊する被害が発生しています。

 こうした被害を防止するために、太陽光パネルや架台のねじのゆるみ、変形や破損などがないかどうか定期的なチェックを実施することが重要です。ただし、それでもトラブルを完全に防止することはできません。もしもに備えて、24時間365日の遠隔監視体制を整えておくことで、早期のトラブル対応が可能になり、安心感も増すでしょう。

 経年劣化にも注意が必要です。太陽光パネルで発電した直流電流を交流電流に変換する装置である「PCS(パワーコンディショナー)」は、経年劣化などによる電力系統異常によるPCS停止が、年間約90%の太陽光発電設備で発生しています。そのため、電力系統異常で停止したPCSを、迅速かつ安全に遠隔再起動するなどの対応が必要です。

 保険への加入も検討すべきです。発電設備にトラブルが発生して交換や修理が必要になった場合の費用はかなりのものです。交換や修理を行う間は発電ができず、売電ロスも生まれます。保険に加入しておけば、こうした損害を補填できます。

 このようなO&Mを実施することによって、太陽光発電所を襲うさまざまなリスクに対応することができます。改正FIT法によるO&Mの義務化を負担が増えたととらえることもできるでしょう。しかし、見方を変えれば、それは発電量を安定的に確保し、事業採算性を高める絶好の機会ともいえます。そうした視点から、積極的にO&Mに取り組むことが、これからの太陽光発電の運営には大切なのでしょう。

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