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“人を信頼関係で結ぶ”ヒマラヤ登山のチームマネジメント

2018年2月14日

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 ヒマラヤでは、8,000メートルという極限に潜むリスクを低減し、登頂成功の確率を高めるために、人々はチームを組んで臨みます。チームの人員は多い時で百名規模にまで膨らむことがあるといいます。人員が増えればそれだけ、メンバーのスキルや目的、あるいは国籍などのバックグラウンドも異なってきます。それゆえに、目的を1つに、お互いの理解を深め、情報の共有を徹底するといったことが重要になってきます。前回はヒマラヤ登山に欠かせないセルフマネジメントについて紹介しましたが、今回は極限状態の中で、どのようなチームマネジメントが求められるのかを紹介します。

ヒマラヤ登山の成否を左右するチームワーク

 8,000メートルを越えるような高所登山には、大きく分けて「アルパインスタイル」と「極地法」という2つの登山方法があります。

 「アルパインスタイル」は、6人以内という少人数かつ重い酸素ボンベを持たずに短期間での登頂を目指す登山法で、独創的なルートの開拓を目指します。この登山法では、過酷な環境に立ち向かうための卓越した登山のスキルが必要になります。

 それに対して、「極地法」では、安全な場所に設置したベースキャンプを起点に、そこから山頂に向けて何度も荷揚げを行い、いくつかのキャンプを設置しながら少しずつ前進。これにより、安全性と成功率を高めるという登山法で、一般の人でも参加が可能な「公募隊」というスタイルが普及しています。

 公募隊とは、文字通り、一般から募集した隊員が一緒に登頂を目指すチームです。登山の際には、ベテランの登山家やシェルパ(現地の登山スタッフ)が技術的なサポートを行ってくれます。

 ただし、そうはいっても、参加には一定の条件が求められます。特に、高所登山の経験が参加条件になることが多いようです。さらに、500万円以上もの費用と、50日以上もの時間が必要になるので、誰でも簡単に参加できるわけではありません。

 公募隊のメンバーは数十人から数百人で構成され、メンバーそれぞれがキャンプの設営や荷物の運搬など、さまざまな役割を分担しながら頂上を目指します。それだけに、チームワークが登頂の成否を左右するといっても、過言ではありません。

バラバラのメンバーを信頼関係で結ぶ

 チームワークで最初の関門となるのが、相互理解です。

 特に公募隊による登山の場合は、隊員同士のスキルや目標、時には言語や国籍でさえも異なる場合があるため、なおさら相互理解が大きな課題になります。

 大切なのが、お互いのスキルや限界を確認することです。何が得意で何が不得意なのか、体力はどれぐらいあるのか、高所登山の回数など、そういったことをお互いに把握しておかなければ、上手に仕事が割り振れないどころか、生命を危機にさらすような重大なミスにつながることもありうるからです。その上で登山に対するチームの目標設定を行います。

 目指す山は1つでも、何を目指すのかは人それぞれでしょう。例えば公募隊は、山頂に行きたいと思う人もいれば、プロジェクトに参加できただけで満足という人もいるというように、モチベーションは人によって異なります。それでも登頂を成功に導くには、すべてのメンバーが同じ目標を持ってチャレンジする必要があります。目標設定には、透明性が重要になります。リーダーは、各メンバーの意向をよく聞いた上で、誰もが納得するような結論を導き出さなければいけません。

 同じ目標を持って行動することで、バックグランドがばらばらのメンバーが集まった公募隊のようなチームの中にも信頼関係が生まれます。信頼関係が生まれれば、安心して役割分担ができるようになります。例えば、岩登りが得意なメンバー、氷上が得意なメンバーなど、それぞれの得意分野を生かしながら、スムーズに役割分担ができるはずです。

 相互理解が必要なのは隊員間だけにとどまりません。エベレストの場合、毎年シェルパが頂上から登山をサポートする固定ロープを準備することで、多くの人の登頂が可能になります。さらに現地のガイドや荷揚げなどでもシェルパのサポートが欠かせません。そうしたシェルパの人々とのコミュニケーションも、ヒマラヤ登山に挑む際の大事なテーマになります。

アクシデントに備えて常に最悪の事態を想定せよ

 チームワークを発揮するのに、重要な役割を果たすのがリーダーです。リーダーは、高所登山にともなうリスクを回避するためにも、チームのコミュニケーションが円滑に進むよう気をつけなければいけません。

 ヒマラヤ登山には数多くのリスクが存在します。最も怖いのが天候の悪化です。過去の遭難事故の多くも、悪天候の時に起きています。こうしたリスクに備えて、リーダーをはじめメンバーには、リスクマネジメントの能力が求められます。

 リスクマネジメントの第一歩は正確な情報収集です。悪天候というリスクに対しては、事前にヒマラヤの天候の特徴を把握し、天気予報をしっかりとチェックして、それをもとに登山計画を立てます。もしも天候が予想以上に悪化すれば、計画を延期、あるいは中止することが賢明です。

 情報を収集したら、メンバー全員でそれを共有することが大切です。リスクの高い環境では、情報は多すぎるくらいがよいとされます。情報が多いほど、チームのメンバーは積極的に計画づくりに参加し、自ら進んで実行します。それによって、不安やストレスも軽減されることでしょう。

 ここで難しいのは、自分のネガティブな情報は、誰しもオープンに話しにくいということ。ちょっとした油断が恐ろしい事故につながる可能性があるため、些細な失敗や身体の不調などでもチーム内で共有しておくことが大切です。場合によっては、リーダーが自らの失敗談や弱みを積極的に話し、コミュニケーションを促すことも求められます。

 しかし、どんなに綿密な計画を立てても、登山には思わぬアクシデントがつきものです。したがって、常に最悪の事態を想定しておくことも忘れてはいけません。転落や滑落、ルートミス、低体温症、凍傷、雪崩などが起きたときに、どうすれば最悪の事態が避けられるのか。想像力をたくましくしてシミュレーションを重ね、リスクに備えます。このようなリスクマネジメントをメンバー全員で徹底することで、たとえ不測の事態が起きても柔軟に、現実的に対処できるようになります。

 ここまで見てきたように、ヒマラヤ登山からは多くのことを学ぶことができます。そこには、チームワークやリーダーシップ、リスクマネジメントなど、登山のみならず、ビジネスで高みを目指す上でのヒントが数々存在するのです。

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