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ビジネスコラム

売電価格とともに変化の時をむかえた太陽光発電

2018年6月13日

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 太陽光発電は、これまでの普及拡大を支えてきた売電価格が変化する中で、新たなステップへと踏み出そうとしています。いま太陽光発電に何が求められているのでしょうか。これまでの道筋、解決すべき課題や潮流から考察します。

企業の脱炭素化で重要なものとは

 各国で脱炭素化の動きが進むとともに、消費者の意識も確実に変化しています。さらに、敏感な金融市場にはいち早く変化が表れています。脱炭素化関連の金融市場が活発になる一方で、CO2を多量に排出する企業は以前より資金を集めにくくなっているのです。

 その中で、脱炭素化に取り組む企業も増加しています。そうした取り組みの1つとして、近年注目を集めているのが「RE100」です。RE100は、自社の事業を再生可能エネルギー100%で運営していくために具体的な目標を設定し、目標達成へ向けた活動を毎年報告しなければいけません。

 再生可能エネルギー100%というのは、一見ハードルが高いように感じられるかもしれませんが、RE100のような取り組みに参加するということは企業イメージにとってプラスになります。再生可能エネルギーは年々発電コストが低下しているため、長い目で見れば経費削減につなげることも可能です。

 日本企業が脱炭素化を考える場合、再生可能エネルギーの中でも、ここ十年で最も急激に普及した太陽光発電をどのように活用するかが重要です。しかし、その太陽光発電に変化のときが訪れようとしています。

FITとともにはじまった太陽光発電の普及拡大

 日本における太陽光発電の変化を読み解くために、どのように普及拡大してきたのか、その道筋をたどってみましょう。

 2009年に、日本で住宅・家庭に設置された太陽光発電の余剰電力の買い取りが、電力会社に義務付けられるようになりました。

 これに続いて、2012年からは、「固定価格買取制度(FIT)」がスタート。この制度は、産業・事業用の太陽光発電をはじめ風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定の期間、一定の価格で買い取ることを国が約束する制度です。日本のFITでは、再生可能エネルギーの中でも特に太陽光発電の普及に力を入れてきました。

 FITの開始によって、電気を高単価で買い取ってもらえるようになったため、太陽光発電の分野では「売電型」のビジネスモデルが拡大。そうした影響もあり、2012年以前の太陽光発電は住宅用システムが中心でしたが、FIT開始後に売電の事業性が高まったため、メガソーラーなど大規模発電設備の設置が増え、発電事業の新しい市場を生まれました。

 FIT開始前の太陽光発電の累積導入量は約5GWでしたが、開始後の2017年3月末には約39GWにまで拡大しました。この数字を見ただけで、日本の太陽光発電がFITによって急速に拡大したことが理解できるでしょう。

売電価格の変化がビジネスモデルの見直しを問う

 2017年4月には、再生可能エネルギーの自立や効率化を促進するために、改正FIT法が施行されました。ここに変化の兆しが見て取れます。

 改正FIT法では、再生可能エネルギーのさらなる普及に向けた様々な改革が行われています。例えば、FITの認定にあたって、従来の設備を確認する方法から事業計画を確認する方法に変えることで、事業者には計画にもとづいた保守点検や維持管理などが求められるようになりました。

 売電価格の見直しも行われました。出力10kWを超える太陽光発電の売電価格を例に出すと、2017年度は「21円」と、FITがはじまった2012年度の「40円」と比べて約半額にまで引き下げられました。

 ちなみに、この引き下げはFITにもともと織り込まれているものです。FITでは、太陽光発電の普及に合わせて売電価格を引き下げるように計画されています。2017年度の売電価格も、いきなり売電価格が当初の半額になったわけではなく、この計画にもとづいて年々引き下げを行った結果です。

 2018年度には、売電価格は「18円」とさらに下がりました。太陽光発電の普及が順調に進む一方で、それに合わせて売電価格も下がり続けているのです。その中で、従来の売電型のビジネスモデルが成り立ちにくくなっているという現実があります。

発電コストの低減が普及拡大の鍵に

 今後、太陽光発電の普及を図るためには、発電コストの低減が欠かせません。発電コストが、火力などの既存電力よりも下がれば、発電した電気を自らが使う自家消費といったビジネスモデルもより魅力を持ってきます。

 世界では発電コストの低減化が進んでいます。例えば、2016年のアラブ首長国連邦(UAE)における太陽光発電の入札では、入札価格は2.42セント/kWh、日本円で1kWhあたり3円ほどでした。

 UAEのこのケースでは、資材の大量調達や安い労働力の活用が可能だったことに加え、日照時間が長いため設備利用率が日本の1.5倍以上であることなどが、低コストにつながったといわれます。しかし、それを割り引いてもかなりの安さだといえます。

 諸外国では、こうしたコストの低下がさらなる再生エネルギーの拡大につながる好循環が生まれています。日本でも発電コストは年々低くなっていますが、今後は他の電力と比較して競争力のある水準まで下げる必要があります。

 コスト削減には技術開発も重要になります。より変換効率のすぐれた太陽電池の開発などが進められていますが、こうした取り組みを今後はさらに加速させなければいけません。

 コスト以外にも課題はあります。例えば電力系統の問題です。発電、送電、変電、配電など電力の生産から消費までを行う設備全体を電力系統といいます。この系統で重要な問題のひとつが、需要と供給のバランスをうまくとることです。

 太陽光発電や風力発電は、天候に左右されるため発電量が不安定になりがちです。そのため、発電量と電力消費の予測にもとづいた需給調整や、蓄電池などを利用した電力調整機能が必要になります。そうした技術開発の進展は、今後、太陽光発電がさらなる普及拡大を図る上で欠かせないものとなのです。

 こうした脱炭素化に向けた世界的潮流を背景に、新たな太陽光発電のビジネスモデルも誕生しています。それはいったいどのようなものなのでしょうか。次回で詳しく紹介します。

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