算定して終わりじゃない。NEBs の数値を「企業価値向上」にどう活かすか?

算定して終わりじゃない。NEBs の数値を「企業価値向上」にどう活かすか?

コラム・ニュース 2026.03.31


「このビルのNEBs(ネブズ)※を算定した結果、年間〇〇円の経済価値があることが分かりました」
こんな報告を受けたら、皆さんはどう感じますか?

「すごい!私たちのオフィスにはこんなに価値があったんだ!」と、気づくことができますよね。

これは素晴らしい第一歩です。しかし、その算定レポートを見て満足してしまっては、非常にもったいないのです・・・!
なぜなら、NEBs の本当の価値は「算定した後」にこそあるからです。

今回は、NEBs で算出された「金額」を、単なる評価結果で終わらせず、企業の成長を後押しする「経営の武器」として使いこなすための具体的な方法をご紹介します。

算定して終わりじゃない。NEBs の数値を「企業価値向上」にどう活かすか?

「良いオフィス」を、どう伝えれば経営層は納得する?

「このオフィスに移転してから、社員がいきいきと働くようになった」
「フリーアドレスを導入したら、部署を超えたコミュニケーションが活発になった気がする」

多くの総務やファシリティ部門のご担当者は、自社のオフィスが社員の働きやすさや生産性に貢献していることを肌で感じているはずです。しかし、その「実感」や「定性的な良さ」を、経営層や経理部門に伝え、次の投資へとつなげることに難しさを感じていませんか?

快適なオフィス環境への投資は、どうしても「コスト(経費)」として見られがちです。「働く環境の快適性が、本当に会社の利益につながるのか?」という問いに対し、「雰囲気が良くなりました」「社員が喜んでいます」といった定性的なアピールだけでは、なかなか説得力を持たない…。そんな現場の歯がゆさに共感します。

特に、厳しい経営判断が求められる場面では、「その投資は、どれだけの収益貢献やコスト削減になるのか」という具体的な数字(ROI:投資対効果)が求められます。

「この床の張り替えに〇百万円?もっと安い素材でいいだろう」
「最新の空調システムは魅力的だが、今の設備でも問題ないのでは?」

現場の担当者が「社員のウェルビーイング(心身ともに良好な状態)のために重要だ」と信じる投資も、客観的な根拠がなければ「贅沢だ」「後回しにしよう」と判断されてしまう…。そんな歯がゆい経験をしたことがある方も、少なくないのではないでしょうか。

このジレンマを解消する鍵こそが、NEBs によって算出された「客観的な金額」なのです。

算定して終わりじゃない。NEBs の数値を「企業価値向上」にどう活かすか?

NEBs を「経営の武器」にする 3 つの活用法

NEBs は、建物の価値を測る「ものさし」であると同時に、その価値を企業経営に活かすための「翻訳機」でもあります。「快適性」や「働きやすさ」といった定性的な価値を、「〇〇円」という経営言語に翻訳してくれるからです。

ここからは、その「翻訳された言葉=金額」を、具体的なアクションにつなげる 3 つの活用法をご紹介します。



<活用法①:統合報告書や ESG レポートに記載し、投資家へのアピール材料にする>
近年、企業の価値を測る上で、売上や利益といった財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組み、すなわち「ESG 経営」が世界的に重視されています。投資家は、企業が持続的に成長できるかどうかを判断するために、非財務情報である ESG の取り組みに熱い視線を注いでいるのです。

その中でも、従業員の働きがいや健康を重視する「人的資本経営」「ウェルビーイング経営」は、企業価値を左右する重要なテーマです。 しかし、多くの企業がその価値をどう外部に伝えれば良いか悩んでいます。

そこで NEBs が活躍します。統合報告書や ESG レポートに、「NEBs の算定により、当社のオフィスは従業員の知的生産性向上や健康増進を通じて、年間〇〇円の価値を創出しています」と具体的に記載するのです。

これは、単に「当社は従業員を大切にしています」と宣言するよりも、はるかに説得力があります。投資家に対して、ウェルビーイングへの投資がコストではなく、将来の企業成長を支える「価値創造活動」であることを、客観的なデータに基づいて示すことができるのです。 まさに、「守りのコスト」を「攻めの投資」としてアピールする強力な武器となります。



<活用法②:採用活動で『ウェルビーイング投資の証明』として求職者に提示する>
「給与や待遇も大事だけど、自分が成長できる環境か、心身ともに健康でいられる会社かどうかが気になる」

現代の就職・転職活動では、こうした「ウェルビーイング」を重視する求職者が増えています。 企業側も、人材獲得競争が激化する中で、自社の働きやすさをいかに魅力的に伝えるかが大きな課題です。

採用サイトや説明会で、「私たちは従業員のウェルビーイングを大切にしています」と伝えるだけでは、他の企業との差別化は難しいかもしれません。しかし、そこに NEBs の数値を加えるとどうでしょうか?

例えば、「私たちの新オフィスは、NEBs 評価額が年間〇〇円。これは、社員一人ひとりの生産性向上や心と体の健康に、企業として具体的に投資している証です。」

このように伝えることで、ウェルビーイングへの取り組みが単なるスローガンではなく、具体的な経営戦略として実践されていることを証明できます。「この会社は、口先だけでなく本当の意味で社員を大切にしてくれるだろう」という信頼感を醸成し、優秀な人材を惹きつける強力なアピールポイントになるのです。



<活用法③:テナント賃料や不動産価値の妥当性を裏付けるデータにする>
NEBs は、自社ビルのオーナー企業だけでなく、テナントを抱える不動産オーナーや、オフィスを借りる側の企業にとっても有効なツールです。

ビルオーナー・不動産投資家の場合:
環境性能や快適性が高いビルは、テナントにとって生産性や従業員満足度の向上に直結します。NEBs でその価値を金額として示すことで、「この賃料には、光熱費だけでなく、皆さんのビジネスに貢献する付加価値が含まれています」と、賃料の妥当性を論理的に説明できます。結果として、テナントの満足度向上や長期入居につながり、安定した収益確保に貢献します。

テナント企業の場合:
複数の移転候補ビルを比較検討する際、賃料や立地だけで判断していませんか? NEBs を活用すれば、「A ビルは賃料が少し高いが、生産性向上効果(NEBs)を含めると、実質的なコストパフォーマンスは B ビルより高い」といった、より戦略的な意思決定が可能になります。従業員の働きやすさという重要な要素を、パフォーマンス比較の土俵に乗せて検討できるのです。


このように、NEBs は不動産に関わるあらゆるプレイヤーにとって、客観的な判断材料を提供してくれます。

算定して終わりじゃない。NEBs の数値を「企業価値向上」にどう活かすか?

NEBs はゴールではなく、企業価値向上の「スタート地点」

これまで見てきたように、NEBs の算定は、あなたの建物の現在地を評価する「ゴール」ではありません。建物の価値を、企業全体の経営戦略や IR 戦略へと直結させるための「強力なスタート地点(ツール)」なのです。

「この知的生産性向上の数値を、来期はさらに 10%高めるために、どんなオフィス改善ができるだろう?」
「採用活動で NEBs をアピールした結果、応募者の質はどう変化したか?」

NEBs をきっかけに、このような対話が社内で生まれ始めたとき、あなたの会社の建物は単なる「施設」から、企業価値を創造し続ける「経営資源」へと進化していくはずです。

さあ、あなたの会社の NEBs レポートを、もう一度開いてみませんか?そこから、未来の成長へと踏み出しましょう。



*1:省エネ建築物の新築・改修に取り組むメリットを総合評価する 12 の指標を共同開発
─「健康増進」「知的生産性向上」など、省エネ建築物の副次・間接・相乗的効果(NEBs)を定量化(2023 年12 月 11 日)