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売電から自家発電へ、太陽光発電の過去・現在・未来

2017年7月5日

 太陽光発電のトレンドは今、発電した電気を売る「売電」から、発電した電気を自分たちで消費する「自家発電」へ変わろうとしています。そして、社会全体で消費しようとする「スマートコミュニティ」へと広がりつつあります。

 なぜトレンドがこのように変わっているのかというと、この今年4月1日に、「改正FIT法」という法律が施行されたことが影響しています。新たな局面を迎えつつある太陽光発電の「今」を解説します。

売電の価格が落ちている理由

 冒頭で挙げた「改正FIT法」とは、2012年に誕生した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」の一部を改正したものです。この法律はその名の通り、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの普及を狙ったものですが、施行当時と現在の社会情勢の変化を受け、いくつかキーとなる部分が変更されました。

 特に大きな変更点が、売電価格の見直しです。同法の施行当初の売電単価は、1kW当たり「40円」でした(2012年度、事業用10kW規模以上)。しかし、今回の改正では「21円」と、約半額にまで落ちています(2017年度、事業用10kW規模以上)。つまり、せっかく太陽光発電所を作ったとしても、売電価格は5年前の半分にしかならないのです。

 とはいえこの売電価格の下落は、もともと決まっていたものでした。同法施行時の売電価格が現在よりも高かったのは、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーを普及させるために、政府があえて高く設定したもの。普及とともに年々売電価格が下がることも、同法には織り込まれています。つまり、売電価格の下落は、太陽光発電が順調に普及していることを意味しているのです。

 「売電」の価値が落ちていますが、その一方で、発電した電気を自ら使う「自家発電」の価値が高まりつつあります。

「自家発電」のメリットとは何か?

 太陽光発電における「自家発電」とは、太陽光パネルで発電した電気を売電せず、その電気を自分たちで使うことを指します。電力会社から購入する電気の量を抑えることで、結果的に電気代の節約につながります。

 自家発電した電気は、蓄えておき、後で使うことも可能です。太陽光発電自体に電気を溜める機能はありませんが、蓄電池を発電システムに組み込むことで、日中に発電した電気が充電できます。ここで溜めた電気は、太陽光発電ができない夜間の電源として、あるいは災害が起きて電気が供給されなくなった際の緊急電源として活用できます。

 このような自家発電型の発電システムのことは、業界では「分散型電源」と呼ばれています。分散型は、火力発電所のような大規模な発電所で発電する「集中型電源」と比べ、いくつかのメリットがあります。

 たとえば集中型では、街から遠く離れた場所に大規模な発電所を設置するため、長い送電線を通し、電力を供給する必要があります。また、送電線は長ければ長いほど、電気のロスが発生するため、せっかく発電した電気が無駄になってしまうことになります。さらに、発電所や送電線が災害で機能しなくなった場合、電気の供給は止まってしまいます。

 一方で分散型では、建物の近辺に太陽光などの発電施設が設置されていれば、送電線も短くて済みます。電気のロスも抑えられるため、効率の良い発電が可能になります。また、災害時で大規模な発電所が止まっても、地域の電力を利用することで、電力を安定して供給することが可能となります。

「分散型電源」が社会を変える

 こうした分散型の電源を組み合わせることで、地域社会が単にエネルギーを消費するだけでなく、電気を作り、効率良く管理しながら使う「スマートコミュニティ」が可能になります。

 スマートコミュニティを一言で表現すると、「賢くエネルギーを使う」社会のことです。自家発電や蓄電といった再生可能なエネルギーを最大限に活用し、ITも駆使することで、電気の需要量・供給量を管理する社会のことを指します。「環境配慮型都市」「持続可能な都市(サスティナブルシティ)」といった呼び方をされることもあります。

 スマートコミュニティの具体的な例としてはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)がドイツで行っている、太陽光で発電した電力を地産地消する「自己消費モデル」の確立を目指したシステムの実証実験があります。
参照:ドイツでスマートコミュニティ実証に向けた事前調査を開始
 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

 この実験では、ドイツのシュバイヤー市にある16世帯のアパート2棟で、太陽光で発電した電力を最大限活用できるよう、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)と蓄電池、そして熱エネルギーを溜めるヒートポンプを制御する情報通信技術を導入しています。このシステムでは、クラウド上で太陽光発電量、電力・熱消費量のデータを収集し、管理することで、最適な制御計画や機器制御を行います。

 また日本では、「浜松新電力」という電気の“地産地消”を行う電力会社があります。同企業では浜松市内に設置された太陽光発電所・バイオマス発電所で作った電気を買い取り、市内の公共施設や事業者に対し、比較的安い料金で販売しています。さらに、CEMS(地域エネルギー管理システム)で電力の需要と供給を調整する「浜松版スマートシティ」の実現に取り組んでいるといいます。
参照:株式会社浜松新電力への参画について

 

 「売電」により日本で普及してきた太陽光発電は、いま「自家発電」の時代を迎え、そして「スマートシティ」へと発展しつつあります。売電価格が下がった今だからこそ、自家発電の価値を見直してみてはいかがでしょうか。

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