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ビジネスコラム

持続的な企業価値向上に欠かせない「人的資本経営」とは

2022年10月5日

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近年、「人的資本経営」という言葉に注目が集まっています。人的資本経営とは、従業員やスタッフなどの人材に係わる費用を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで企業価値の向上を図る経営手法です。なぜ今、企業に人的資本経営が求められるのか、その背景と意義を解説します。

人材を「企業価値の源泉」として捉える

 人的資本経営とは、「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、持続的な企業価値向上につなげる経営のあり方」です。人的資本経営では、人事に関する戦略を人事部に任せるのではなく、経営陣が積極的に関与し、経営戦略と紐づける点が特徴となります。発展のために人材に投資し、企業価値の源泉として活躍してもらう、というのが基本的な考え方です

 人的資本経営が注目されるようになった背景には、いくつかの理由が考えられます。そのひとつが、近年一般的になった「ESG投資」の存在です。

 ESG投資では、投資家が投資先を選定する際に、企業の財務に関する情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)といった要素を考慮します。人的投資は、「ESG」の「S」(社会)に該当するため、企業は、「どんな人材がいるか」「その人材に、この先どのように価値を発揮してもらうか」という情報を積極的に公開・発信する必要があります。これらの情報は、投資家がその企業を、投資先としてふさわしいかどうか判断する基準になるため、重要視されているのです。

必要な「人材ポートフォリオ」を構築する

 日本企業における人的資本経営への取り組み状況は、まだ始まったばかりです。経済産業省が上場企業に行ったアンケート「人的資本経営に関する調査」では、「重要性の理解は進んでいる」とする一方で、「取組を具体化していく段階で足踏みをしている企業が多い」と報告されています。

人的資本経営に取り組むために、まず押さえておきたいポイントが、「人材ポートフォリオの構築」です。

 人材ポートフォリオとは、事業計画達成のために、どんな分野にどのくらい人材が必要なのか、部門・役職、スキル・能力、人数や体制を整理するものです。

 これは「専門職・総合職」「個人で仕事を進める・組織で仕事を進める」「創造(新しい企画や商品開発が得意)・運用(すでにあるものの販売や管理が得意)」などから2軸を設定し、縦軸と横軸に展開し、人材像を描き出す方法が一般的に用いられています。

 自社の事業内容と目標達成に、どのような人材がどれくらい必要なのか、それぞれの人材が現在どれだけ在籍しているのか、不足しているのか、などが人材ポートフォリオによって可視化され、「今後どのように企業価値向上のために活躍してもらうか」という人材配置や採用計画に生かすことができます。

「人的資本経営」実現に向けた4つのアプローチ

 人材ポートフォリオを構築するだけでは、人的資本経営が実現するわけではありません。人材への投資をどのように価値向上へつなげていくかは、それぞれの企業の事業内容や目標によって異なりますが、「ダイバーシティ&インクルージョン」「リスキル・学び直し」「従業員エンゲージメント」「時間や場所にとらわれない働き方の実現」、この4つのアプローチが有効だとされています。

「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、性別や年齢、障がい、学歴・職歴、国籍、価値観、ライフスタイルといった多様な“個”を受容し、尊重する考え方です。従業員の多様性を受け入れることにより、イノベーションの創出や働きやすい職場作りにつながります。「リスキル・学び直し」は、「リスキリング」という言葉でも説明される、新たなスキルや技術の習得です。人材ポートフォリオの構築で可視化された人材の偏りをリスキリングによって調整できれば、新たな分野でのイノベーションを生み出すことが期待できます。

「従業員エンゲージメント」は「会社に貢献したい」という従業員の自発的な意欲のことで、いわゆる「帰属意識」です。少子高齢化に伴う人手不足もあり、近年多くの企業が従業員の離職防止に力を入れていますが、従業エンゲージメント向上によって、離職率を低下させることができます。従業員エンゲージメントを高めるためには、「企業や事業の成長と、個人の成長の方向性を一致させる」「画一的なキャリアパスではなく、多様な就業経験や機会の提供を行う」などを実践することが効果的です。

 そして、「時間や場所にとらわれない働き方の実現」は、新型コロナウイルス感染症拡大によってリモートワークが一般化し、最も身近で実感できる取り組みです。Afterコロナで主流になると思われる「リモートワークとオフィスワークを組み合わせた働き方」を実現するためには、コミュニケーションツールや社内決裁のデジタル化、サテライトオフィスの整備、リモート環境を前提としたマネジメント体制づくりなどが必要項目として考えられています。

 ここで挙げた多様性の受容や新しいスキルの習得機会の提供、従業員エンゲージメントの向上、多様な働き方への対応を通じて、人的資本経営の「自社の人材に、企業価値向上の源泉として活躍してもらう」という取り組みを実践することができます。

 このほかに人的資本経営へ取り組む指針としては、経済産業省が公開している「人材版伊藤レポート2.0」が参考になるでしょう。この資料は、同省が設置した「人的資本経営の実現に向けた検討会」での報告書に実践事例集を追加したもので、人的資本経営の重要性やポイントがまとめられています。

 また、政府も人的資本経営については重要視しており、2022年10月現在、有価証券報告での人的資本に関する情報開示の必要性が検討されています。人的資本経営についての情報公開・発信は、日本企業に対する海外からの投資を促すきっかけとしても期待されているので、近い将来、上場企業に対して自社の人的資本についての情報を公開することが義務化される見込みです。持続可能な企業価値の向上につなげるために、自社の人材配置の見直しや採用計画と言った身近なところから「人的資本経営」の実践に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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