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ビジネスコラム

ビジネスにイノベーションをもたらす「デザイン思考」とは

2022年9月7日

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 デザイン思考とは、自社の製品やサービスに潜む本質的な課題を、ユーザー視点から見つけ出し、問題を解決する思考法のことです。省庁・行政機関やその関連団体も、デザイン思考の重要性を指摘しています。なぜ注目を集めるのか、その背景と取り組み方などを紹介します。

ユーザーが真に求めていることを見極める「デザイン思考」

 デザイン思考はもともと、デザイナーやクリエーターがデザインや物事を考える際に使用するプロセスや活動を意味するものでした。しかし昨今では、ビジネスの課題解決に役立てるための思考法として活用されはじめています。

 最大の特徴は、顧客であるユーザーの課題や要求に合わせてモノを作る「人間中心設計」という考え方が前提となる点です。人間中心設計とは、漠然と“作りたいモノ”を生み出すのではなく、多くの人が抱えている問題・課題を抽出し、実際の評価と改善を繰り返しながら、商品やサービスを作っていく設計・開発スタイルです。

 デザイン思考が重要視されるようになった背景には市場構造の変化が挙げられます。経済が発展し生活スタイルや価値観が多様化した現在、市場には細分化された消費者ニーズに応えるためのさまざまな製品やサービスがあふれています。これは、インターネットを活用したオンライン通販が一般的になったことで、これまでの販売形態や流通経路のあり方が大きく変わり、ユーザーは個々の課題やトレンドに合わせた商品やサービスを手軽に所有、または利用できるようになったことが影響しています。

 それにより、ユーザーは、モノを手に入れることよりも「手に入れた後に何ができるのか」「どのような体験を得られるのか」「ビジネスがどう変わるのか」といった点を重視するようになりました。こうした状況を踏まえ、ユーザー中心に物事を考え、ユーザーが本当に求めている製品やサービスを探るための有効なアプローチ手法として、デザイン思考が注目を集めているのです。

 ただし、「ユーザー中心に物事を考える」といっても、ユーザー自身が必ずしも明確なビジョンを描いているとは限りません。そのためデザイン思考には、「ユーザー自身ですら認識できていないニーズ」をひも解くプロセスも含まれています。

デザイン思考はDX推進においても有効

 デザイン思考が重視される別の理由として、デジタルトランスフォーメーション(DX)の存在があります。DXとは、デジタル化によって変革されたビジネスや製品・サービスを通じて、社会や企業、ユーザーの課題を解決することです。

 DXとデザイン思考の関係については、国やその関連団体もその重要性を認めています。経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、DX時代にICTサービスを提供するベンダー企業にとって必要となる人材像を、「ユーザー起点でデザイン思考を活用し、UXを設計し、要求としてまとめあげる人材」と記載されています。

 さらに、情報処理推進機構(IPA)が公開している「DX白書2021」でも、デザイン思考は「ユーザーが抱える真の問題と最適な解決方法を探索し創出する思考方法であり、DX推進において顧客に新しい価値提供をするために有効な手法」と記されています。

 DXとともに、デザイン思考と関連性が深いのが「サービスデザイン」です。これはデザイン思考の具現化やビジネスへ落とし込むための考え方で、経済産業省の「我が国におけるサービスデザインの効果的な導入及び実践の在り方に関する調査研究報告書」では、「顧客体験のみならず、顧客体験を継続的に実現するための組織と仕組みをデザインすることで新たな価値を創出するための方法論」と説明されています。

 サービスデザインにおける「サービス」とは、「商品の購入」のようなユーザーとの特定の接点だけを意味するものではありません。ここでいう「サービス」とは、商品を認知し、購入し、利用し、企業からのサポートを受けるまで、複数の接点を通じた連続的なユーザー体験です。また「デザイン」の対象は、ユーザー体験だけでなく、サービスを提供する側のオペレーションや仕組みまで含まれます。

 つまり、人間中心設計の考え方によってユーザーの課題やニーズを抽出し、アイデアを創出するのがデザイン思考で、そこで生まれたアイデアを基にビジネスモデルを構築するプロセスがサービスデザインということになります。

デザイン思考で開発する際に必要な4つのステップとは

 実際にデザイン思考を用いて、製品やサービスなどを開発する際には「観察・共感」「課題定義」「ブレインストーミング」「テスト」という4つのステップで進めていきます。

「観察・共感」は、デザイン思考を進めるうえで最も重要なプロセスです。まず、ユーザーを理解するために行動を観察、時にはヒアリングなどを行います。ここでユーザーの考え方や行動原理、共感性を理解し、問題探索にフォーカスすることで、「課題定義」として潜在している課題を顕在化させます。次の「ブレインストーミング」では、その課題を解決するアイデアをいくつか考案、実現性が高いものを見極め、試作品の制作に取り掛かります。その後、試作品を通してフィードバックを得る「テスト」を行い、さらにユーザーへの理解を深めます。これらを繰り返すことにより、ユーザーの持つ真の課題と解決方法を模索するのがデザイン思考のステップです。

 こうしたデザイン思考の手順を踏むことで、ユーザーが心から望む商品やサービスを作り出すことが可能になると考えられています。デザイン思考を実践した例としてよく挙げられるのが、米国の電気自動車メーカーです。同社は完成車の販売にとどまらず、その先にある「ユーザーの移動体験」にフォーカスして開発を行っています。過去に販売した自動車をアップデートし、自動運転できるようにするソフトウェアをサブスクリプション形式で提供する計画は、デザイン思考を経て生まれた経営戦略だと言われています。

 デザイン思考はビジネスのイノベーションに有効な手法ですが、万能ではありません。ユーザーのニーズをベースに考えていくため、そもそも既存ユーザーが存在しない新規事業の開発や、ゼロベースで製品やサービスを生み出す際には不向きだと言われています。

 しかし、既存商品や既存サービスのイノベーションや改善にあたっては、市場環境やビジネスの変化の激しい現代、企業が時代に合わせたビジネスを展開するために、有効な策と言えるでしょう。

 さまざまな種類の製品やサービスがあふれ、ユーザーの要望に沿って容易に利用や所有にできる現代では、良いモノを提供したからといって売れるわけではありません。購入や利用の先にある「どんな体験ができるのか」「生活やビジネスをどのように変えるのか」という点まで考慮する必要があります。今後、自社の商品やサービスの開発・改善を行う機会がある場合に「デザイン思考」というアプローチへも注目してみてはいかがでしょうか。

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