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ビジネスコラム

企業経営とともに進化するオフィスレイアウト

2018年2月21日

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 「対向島型」は、現在日本企業に最も多く採用されているオフィスレイアウトです。その歴史は100年以上前にさかのぼるといいます。なぜ日本ではこれほど長きにわたって採用されているのでしょうか。オフィスの歴史をたどりながらその理由を探り、これからのオフィス像について考えます。

20世紀初頭にまでさかのぼる「対向島型」の歴史

 対向島型の起源は意外に古く、アメリカの技師であるフレデリック・テイラーが20世紀初頭に提唱した「科学的管理法」に端を発します。

 科学的管理法は、経験と勘に頼っていた工場での作業を、客観的基準を作り管理するという方法論です。その中で、生産計画を現場から分離し、計画立案と管理の専任部署を作る「計画と執行の分離」という概念が生まれます。

 「計画と執行の分離」の根本にあるのは、「分業」という考え方です。これは、業務を細分化して作業者に割り振ることで効率化を図るというもので、組織にヒエラルキーを生み出し、ピラミッド型の組織形態へと繋がっていきます。

 対向島型は、そのピラミッド型の組織形態を投影したオフィスレイアウトといえます。そこでは、上司から部下へと書類によって情報を効率的に伝達し、処理していくため、役職順にデスクが並びます。

 デスクは、部や課ごとなどのグループ単位でデスクを寄せ合い1つの島を形成することで、役職者が組織の動向を把握しやすくなっています。また、ワーカー同士が向かい合って座るため会話がしやすく、グループ内での情報交換がしやすくなるという利点もあります。

欧米ではプライバシーや“ヒト”に着目

 欧米では、その後テイラー主義の導入を経て、異なる観点が広がりました。

 第2次世界大戦後、ヨーロッパは北部を中心に深刻な人手不足に見舞われます。企業は、人材獲得の競争が激しくなる中で、より良い労働環境を提供することで優位性を保とうとしました。

 そこでは、“ヒト”が働きやすいオフィス環境が求められるようになりました。例えば、オフィスの中に観葉植物を置いたり、噴水を配置したりといったエンターテインメント性のあるオフィス環境の提供や、食事やお菓子を出したりするなどアメニティの充実を図る方向に進みました。オフィスレイアウトに目をやると、集中力を保つために、グループごとに小部屋で作業するものが主流でした。

 アメリカに目をやると、1970年代以降に大部屋を壁で仕切らずに使う「オープンプランオフィス」が普及します。これは、低い仕切りやデスクに取り付けたパネルなどによって、作業者のプライバシーを尊重しながらも、コミュニケーションも促すというオフィスレイアウトです。アメリカでは、現在でもこのオープンプランオフィスが最も多く採用されています。

日本では「対向島型」が独自進化

 日本では、今でも対向島型が採用されて続けている企業が多いですが、20世紀初頭のままではなく独自の進化を遂げています。

 1980年代まで日本の産業はものづくりが中心で、製品を効率的に生産するという科学的管理法が重要視され、組織もピラミッド型のままでした。そのため、対向島型が最も適したオフィスレイアウトでした。さらに、対向島型はデスクをコンパクトに並べるため、面積効率が非常に高く、国土が狭い日本のオフィスにも適しているといえます。

 1990年代に入ると、日本の企業にも変化が見られるようになります。経営にスピード感が求められる時代になり、重層化した管理階層では対応が難しくなったこと、ICTの進化によってスムーズな情報伝達が可能になったことなどを背景に、組織の形態はピラミッド型からフラット型へと変わっていきました。

 フラット型の組織は、管理職の数を減らして個々の社員の裁量を大きくすることで、素早く意思決定が行えるようにします。こうした変化に応えるために生まれたのが、「対向島型」では固定されることが多かったマネージャー用の席を無くした「ユニバーサルプラン」というオフィスレイアウトです。

 ユニバーサルプランが誕生したのには別の理由もあります。近年、驚異的な技術の進歩やグローバル化などによって、ビジネス環境は劇的に変化しています。その中で、企業には柔軟な事業展開が求められており、新たな事業に合わせた組織変更も頻繁に発生しています。

 対向島型の場合、部や課という決まった単位でひとつの島をつくり、役職順に席の構成が決められて固定されています。そのため、組織変更、人員の増減は発生するたびに、デスクを並べ替えたり、電話線やネットワーク配線を変更したりする手間やコストが発生していました。

 一方、ユニバーサルプランは、マネージャー席を固定しないため、柔軟にデスクを使用することができます。さらに、組織変更時には、デスクや電話やネットワークを動かさずに人のみが動くので素早い対応が行えるというメリットがあるのです。

 このように対向島型は、日本の経営環境が変化するのに合わせて、進化を遂げているのです。

PDCAを回しながら未来に即したオフィスへ

 オフィスはさらなる進化が求められています。

 工業化社会から知識創造社会への転換が進む中で、オフィスではいかにコミュニケーションを活性化するかが課題になっています。個人が持つ情報や暗黙知の交換や共有を進め、迅速な意思決定を可能にするとともに、創造的なアイデアを生みだすための役割がオフィスに求められているのです。

 さらに、ICTの普及拡大にも対応していかなければいけません。近年、モバイル端末の普及により、働く場所はオフィスに限られなくなってきました。家や外出先などあらゆる場所で働くことが可能になり、そうした全ての場を「ワークプレイス」と捉え直すようになっています。

 オフィスは企業経営のあり方を映す鏡ともいえる存在で、ビジネス環境に柔軟に対応する必要があるのです。そのためには、オフィスを一度構築しただけで終わることなく、PDCAを回しながら現状あるいは未来に即したものか確認しながら、調整を図っていく必要があるのです。

 次回は、オフィスでのコミュニケーションを活性化する方法について、より詳しく紹介します。

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