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ビジネスコラム

伊藤佳子プロに聞く①「女子プロゴルフ人気と新人育成の関係性」

2019年6月5日

 抜群の安定した人気を誇る女子プロゴルフ。その秘密は、マナーといったビジネスにも通じる基本的な部分にあるといいます。プロゴルファーの伊藤佳子さんは、学生プロとしてデビューした当時から注目を集め、ツアー引退後は日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の役員として、選手やジュニア世代の育成に携わってきました。女子プロゴルフを表と裏から支えてきた伊藤さんに、ビジネスパーソンにもきっと役立つ女子プロゴルフの人気の秘密について伺いました。

【プロフィール】
伊藤 佳子(いとう よしこ)
プロゴルファー、元LPGA 副会長。14歳でゴルフをはじめ、大学在学中に日本女子オープンゴルフ選手権のベストアマを獲得。その後、米国へ留学し、そこで優れた学生アスリートに贈られる「オールアメリカン」「アカデミックオールアメリカン」に選出されるなど、ゴルフ留学の先鞭をつける。1986年にプロ入りし、その後LPGAの理事や副会長として選手やジュニア世代の育成に関わるなど、選手として裏方として女子ゴルフの人気を両面から支えてきた。

女子プロゴルフの人気は「新人育成」にあった

―― 女子プロゴルフは長期間にわたり、安定した人気を保ち続けています。どのような秘密が隠されているのでしょうか

 女子ツアーの人気について質問された時には、よく「新人研修を徹底している」と答えています。新人研修は大きく2つあります。まず1つ目は「ルーキーキャンプ」です。

 プロテストに合格、もしくはLPGAティーチングA級資格を取得して日本女子プロゴルフ協会へ入会した新人会員は、9月に開催される日本女子プロゴルフ選手権というメジャーの試合会場で「ルーキーキャンプ」に参加することになっています。

 ルーキーキャンプでは、球探しやフォアキャディであったり、各組のキャリングボードを持つ係など、大会を支える裏方の仕事を新人会員に体験してもらいます。そうした経験を通し、プロのツアー競技がどのような仕組みで運営されているのか、トップ選手の振る舞い、お客さまの反応などを間近で覚えてもらうのが狙いです。

 もうひとつは「新人セミナー」です。毎年12月、4日間にわたって開催する新人セミナーは、1回受講して終わるのではなく、2年続けて参加するところがユニークな点ですね。1年目の研修で覚えたことを、1年間プロとして戦った後にもう一度学ぶ。そうすることで実感を持ち、よりしっかりと知識を身に付けることができたという女子プロの感想もあります。

 そこでは、トーナメントの成り立ち、トレーニング方法、LPGAの歴史、選手として必要なメンタルや税金の知識など、協会会員として必要な知識を学ぶことができます。さらに、プロとしてのメディア対応、メイクや紫外線対策など、ファンを意識した講習も大事なメニューとなっています。

LPGAが新人育成に注力する理由とは

―― 新人セミナーでは、プロアマ大会での立ち居振る舞いについても講習があるそうですが

 ツアー競技では、大会前にアマチュアのゲストとプロゴルファーが一緒にラウンドする「プロアマ大会」もあります。そうした場で、ゲストの方とどのような会話をしたらいいのか、分からないという若い選手も多いんです。そこで、マナーに関する講習も実施しています。具体的には、身だしなみや立ち居振る舞い、会話を広げ楽しく過ごすノウハウなどを専門家からアドバイスいただきます。

 皆さまにツアー競技を応援、支援し続けてもらうためには、それぞれがプロ選手にふさわしい振る舞いが求められます。でも、私がプロになった時には、現在のような研修は全くありませんでした。当時は、目上の方と何を話せばいいんだろうと随分困りましたね。今は、研修できちんと学べるようになっているため、うらやましく思います。

 こうしたLPGAの育成や研修に関する取り組みは、樋口久子会長・清元登子副会長の時代、今から20年以上前にスタートしました。私がLPGAの理事だった時代に関わった部分でもあります。

―― LPGAの運営に関わるようになったきっかけはなんですか

 選手時代に、慢性的な故障を抱えていた首の状態がツアー競技に出られなくなるほど悪化したのがきっかけです。その時は、競技から離れていても女子ゴルフのため、何か役に立ちたいという強い想いがありました。

 当時、LPGAは立候補制ではなく、会員同士が推薦し合うという形で投票する方式を採っていたんです。「LPGAで裏方の仕事に携わりたい」という気持ちが雰囲気として表に出ていたのかな、1997~1998年シーズンに理事として選んでいただきました。2011~2017年シーズンにも3期6年間理事を務め、その内の2013~2017年にはLPGAの副会長として活動しました。

日本ゴルフ界の底上げに今必要なもの

―― 2019年はLPGAツアーが39試合、レギュラーツアーへの登竜門であるステップアップツアーも20試合と女子ツアーは高い人気を維持しています

 プロになった人たちには、ツアー競技も多くチャンスもたくさんあるので頑張ってもらいたいですね。ただLPGAでジュニア世代の育成に携わっていた経験から話すと、将来、海外でも活躍する選手が育つためには、日本のゴルフ環境を変える必要があるとも考えています。

 小さい頃からゴルフに触れる機会をつくることが、ゴルファーとしての成長を大きく左右します。私は、夫(藤重貞慶氏)が日本卓球協会の会長を務めている関係で、世界各国で卓球の国際大会に行く機会があるのですが、卓球は7歳以下の少年少女もナショナルチームのメンバーとしてトレーニングに励み、世界で戦っています。
※ビジネスコラム:卓球ニッポン復活へ!若手を世界へと送り出す人材育成

 ゴルフも小さい頃からはじめれば、アプローチやパッティングが自然と体に入り込んでくるんです。今は小さな子どもでも振れるゴルフクラブが開発されていますし、もっと子どもがプレーできる環境を作らなければいけない、という危機感があります。

 LPGAにはジュニアゴルフコーチというスペシャリストがおり、子どもたちの発育や発達に合わせた専門的なトレーニングを実施。さらに、子どもを対象とした大会や体験イベントも開催しています。こうした取り組みがさらに大きくなり、例えばオリンピックでのメダル獲得などにつながればと考えています。

―― 来年はいよいよ東京2020オリンピック・パラリンピックです。ゴルフも正式競技ですが期待の程はいかがでしょうか

 東京オリンピックの女子ゴルフ代表が決まるのはまだ先ですが、誰が代表になってもタフに戦って上位に入ってもらいたい。自国開催だからメダルも期待し応援します。

 自分が米国で競技に出ていた経験からすると、今の日本の女子プロも先輩たちのように海外ツアーに参戦して強い選手になってほしいと思います。さらに期待しているのは、日本のツアーが世界で一番のツアーになって、世界から強いプロが集まってくることですね。

 

【第2回】では、伊藤さんのゴルファー人生についてお話を伺います。

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