2015年12月に、ZEBの明確な基準が提示されたZEBロードマップが、経済産業省から公表されたことを受けて、本プロジェクトの事業者である藤﨑建設工業株式会社代表取締役社長の藤﨑政行様は、当初の計画から軌道修正し、ZEBの実現に舵を切りました。そこには「全国で建設されているZEBの大半は、大手建設会社が占めている」（藤﨑様）という現状に対し、「中堅建設企業の先駆けとして、自社新本社屋のZEB化を実現したい」という強い想いがありました。

　一方で、新社屋の建設にあたり、当初から掲げていた「北浦（霞ヶ浦）を前面に見渡せるロケーションを活かした、開放的で眺望の良い執務空間」という設計コンセプトの実現も欠かせません。しかし、建物・設備の総合的な工夫によって、省エネルギーとデザイン性、快適性を高い次元で両立させるには「詳しい知識がない上、エネルギーソリューションにも精通していなかった」（藤﨑様）。そこで、施設の用途に合わせた最適で総合的なプランニングをワンストップで提供できるNTTファシリティーズが、ZEB監修の点からプロジェクトに参画することになりました。

　NTTファシリティーズはZEB化技術の提案と取りまとめ、環境省へのZEB実証事業の補助金申請代行などのZEBコンサルタント、電気・制御工事（ZEBソリューションの施工）を担当。「建物の工夫」と「設備の工夫」の両面から、ZEB実現に向けた提案を行いました。
　「建物の工夫」としては、北浦を望む開口部に、高遮断熱Low-Eペアガラスと日射追従型外付ブラインドを採用。また、屋根に太陽光パネルを載せることで、創エネ効果に加え、屋根面の直射日射による冷房負荷の抑制を実現しました。
　「設備の工夫」としては、各室の運用方法を事業者と設計者からヒアリングし、外勤者が多い執務室には高効率パッケージエアコン、在室勤務者が多い執務室には地下水を熱源とした井水利用ヒートポンプを採用。高効率LED照明なども導入し、消費エネルギーの大幅な削減を実現しています。

　さらに、設備の導入効果を最大限生かすため照明制御システムを導入。昼光利用を取り入れた制御などにより、大幅な省エネ効果を生み出しています。
　こうした総合的なソリューションによるZEBコンサルティングにより、設計コンセプトを活かしながら、設計段階で108％のフルZEBを達成しました。

　「電気の使用量がとにかく減った。特に照明制御システムによる大幅な削減効果を感じている。屋上に設置された太陽光発電による創エネ効果も当初の計画より発電量が増えている」と、藤﨑様は強い手応えを感じています。これらの効果により、運用開始から1年が経過した段階での年間の1次エネルギー削減率は、平均で130～140％に達しています。「最終的には150％～200％近くはいくと思っている。」（藤﨑様）
　今後もNTTファシリティーズは、IoTやAIなどを駆使したZEBプラスアルファ、より快適な室内環境の実現と、費用対効果とのバランスなど、ZEBプランナーとしてさらなる活動の積極展開を見据えています。