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気候変動現象が引き起こす社会活動への影響

2023年7月26日

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 西日本から東北地方を中心に線状降水帯による豪雨災害が発生している今年の日本。気象庁は先日、観測データから「エルニーニョ現象が発生したとみられる」と発表しました。ここでは2019年以来4年振りに発生した「エルニーニョ現象」をはじめとする気候変動現象が社会活動へどのような影響を及ぼすのか、さらに世界や行政がどのような対応を行っているのかなどについて解説します。

日本にも影響を及ぼす「エルニーニョ現象」とは

 エルニーニョ現象とは、太平洋の赤道域、日付変更線付近から南米沿岸かけて海面水温の高い状態が1年程度続く現象のことを言います。「エルニーニョ(El Niño)」とは、スペイン語で「男の子」を意味します。古くからペルー北部の漁民の間で、クリスマス頃に現れる小規模な暖流のことをエルニーニョと呼んでいましたが、いつからか数年に一度起こる海面水温の上昇現象に使われるようになりました。エルニーニョ現象とは反対に、ペルー沖の海面水温が下降する現象を、スペイン語で「女の子」を意味する「ラニーニャ(La Niña)」を当ててラニーニャ現象と言いますが、これはエルニーニョとは逆の現象という意味で、近年定着しています。

 エルニーニョ現象が発生すると、日本は冷夏になると言われています。平年、夏の期間は西太平洋域の海水が温められることで積乱雲群の流れが活発になり、太平洋高気圧が北側に押し出されて日本付近の気温が上昇します。しかし、エルニーニョ現象が発生するとフィリピンやインドネシア近海といった西太平洋域の暖かい海水が東に移動するため、海面水温が上昇せず積乱雲の発生が不活発となります。そのため、太平洋高気圧の張り出しが弱くなり、低気圧が日本列島に停滞するため気温が上がらず、日照時間も短くなる傾向があるとされています。反対に冬の期間は、西高東低の冬型の気圧配置が弱まり、シベリア寒気団の流れ込みが抑制されるため暖冬になることが多くなります。

 気象庁のエルニーニョ監視速報(2023年7月10日発表)によれば、2023年6月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値との差が+1.3℃となっており、太平洋赤道域の海面水温は全域で平年より高く、海洋表層の水温も平年より高いことがわかりました。今後も海洋表層の暖水により、東部の海面水温が高い状態が続くことが予想され、秋にかけて90%の確率でエルニーニョ現象が続くと発表しています。

 日本においては、西日本から東北地方を中心に線状降水帯の発生による豪雨災害に見舞われている一方で、その他の地域は各地で連日35℃を超え、日本気象協会による2023年7月からの3カ月間長期予報では、「平均気温は東日本で平年並または高い確率ともに40%、西日本で高い確率50%、沖縄・奄美で高い確率60%。降水量は東・西日本で平年並または多い確率ともに40%」と発表しています。この状況が続くと、今年の夏は全国的に厳しい暑さが続き、2019年以来4年振りにエルニーニョ現象が発生しているとしても、冷夏にはならない見通しです。

今年は違う?気候変動がもたらす冷夏と猛暑の関係性

 現在、日本の気象状況からは冷夏にはならない見通しと発表されていますが、ある研究所のレポートによれば、1990年代以降、エルニーニョ現象発生に起因する景気後退は一定の確率で起きていると報告しています。冷夏になれば、国内の個人消費は低調な傾向になると言われ、夏物衣料の買い控え、清涼飲料水や酒類の消費量減少、夏休みシーズンにおけるレジャー・旅行の自粛という行動がみられるようになります。

 さらに、食料生産にも影響を与えます。先のレポートでは、冷夏による日照不足は、農作物の生育を阻害するため、農業生産額の減少と関連性がみられ、異常気象は世界的な現象であることからすれば、更なる穀物価格高騰を招くだけでなく、日本経済に思わぬダメージを与える可能性も否定できないと警告しています。

 しかし、連日35℃を超える猛暑が続くように、今年の夏は全国的に厳しい暑さになると予想されています。その理由は、日本に高温をもたらす「インド洋ダイポールモード現象」が発生すると予測されているためです。

 インド洋ダイポールモード現象とは、インド洋熱帯域の東側と西側で海面水温の上昇・下降や大気の対流活動が活発・不活発化する現象が互いに起こり、エルニーニョ・ラニーニャ現象とは独立した数年に一度発生する海洋変動現象のことを言います。この現象には、「正」と「負」の符号があり、2023年は西側の海面水温が東側より高くなる「正のインド洋ダイポールモード現象」が発生すると予測され、エルニーニョ現象による冷夏傾向を打ち消し、猛暑をもたらす可能性があるとされています。つまり、今年の夏の気温はエルニーニョ現象よりも、正のインド洋ダイポールモード現象の影響を強く受ける見込みです。

 また、正のインド洋ダイポールモード現象の影響を強く受けると、台風の数が増える傾向があると言われています。したがって今年は、台風の発生数が増えるとともに、強い台風が占める割合が高くなると予想されます。過去の台風の発生数、接近数、上陸数を振り返ってみると、エルニーニョ現象と正のインド洋ダイポールモード現象が同時に発生した1997年および2015年は、いずれの年も平年より多くなっていることがわかります。併せて強い台風が占める割合も明らかに高くなっています。なお、2015年に発生した台風27個のうち「非常に強い」「猛烈な」台風は計16個に上りました。

自助・共助・公助で向き合う対応を

 こうした天候不順は、地球温暖化による気候変動が大きく関係していると言われます。地球温暖化により、世界の平均気温は2011年から2020年の間だけでも約1℃上昇しました。これにより異常気象が頻発し、世界各地で熱波による乾燥が広がり、森林火災が起きています。2021年から始まった木材価格の高騰いわゆる「ウッドショック」も、米カリフォルニア州など木材供給地域で大規模な森林火災が発生したことも起因となっています。

 日本では少子化、人口減少が問題になっていますが、世界的には人口は増え続けています。2022年に世界人口は80憶人を越え、さらに2037年には90憶人を突破すると言われています。人口が増えれば、それに応じて供給する食料もその分必要となるため、地球温暖化による異常気象の影響で農作物の収穫量が減れば、食糧危機はさらに深刻なものになると考えられています。

 エルニーニョ現象をはじめとした気候変動による被害が深刻な地域では、先進国による支援や避難計画の策定、住民への情報提供などの災害対策が必要となります。日本では2017年、一般企業が独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援事業に参加し、インドネシアでの森林火災を防ぐシステムの普及を図る事業を始めるなど、エルニーニョ現象による悪影響の緩和に貢献しています。世界に目を向けると、フィリピンでは政府が「エルニーニョ・チーム」を設立、関係するすべての政府機関に対し、エルニーニョ現象の影響に対処するための啓発キャンペーンを実施するなど、国全体として積極的に取り組んでいます。

 地球温暖化の影響による気候変動が原因と考えられる猛暑や台風など自然災害の発生に対して、私たちはどう向き合っていけばよいのでしょうか。災害から国民の生命、身体及び財産を守ることは行政の役割とも言えますが、個人や企業も平常時から災害に対する備えが重要です。つまり、住民・企業が自らを災害から守る「自助」、地域社会が互いを助け合う「共助」、国、地方公共団体・行政などによる施策「公助」との適切な役割分担に基づき、それぞれが相応しい役割を果たすことが必要となっていきます。企業活動としては、事業計画の策定や防災に対する備えなどを充実させていくとともに、災害時には人員・資材等を地域社会へ提供し、平常時と同様の企業活動を営むことにより、円滑な地域経済の復旧等の役割を果たすことが期待されています。経済を成長させながら、環境への負荷を最小限に抑え、持続可能な社会をめざすために、地球温暖化にどう取り組んでいくべきか、また災害発生時の対応は十分なものになっているのか改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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